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戦略記事

岩SHOWの「デイリー・デッキ」

今週のCool Deck:緑単ペインター(レガシー)

岩SHOW

 やあ、クールにやってるかい!? 今週も心にグッときてビビッと痺れる、クールなデッキを紹介しよう! クールデッカーを公言している君も、隠れてクールを探求しているあなたも、みんな仲間だ! 万国共通語、クールを共有して仲良くやろうぜ。

 今回紹介するのはちょっとしたストーリー込みのお話。僕は当コラムで紹介するデッキや環境の常識を知るため、あるマジックのオンライン大会をチェックし続けている。熱意のある主催者が、コロナ禍で大会が減って嘆くレガシープレイヤーのために、家に居ながら参加できるリモート対戦会を定期的に開催している。その様子を覗きに行って、ついでに主催者と実況という名の駄弁りを……というのがすっかりルーティーンになっている。楽しくも勉強になる、クールな時間だ。

 この定期大会、毎週観ていると参加者やその使用デッキも段々と覚えてくるってなもんで。面白いもので、ローカルのカードショップで見られる光景と同じなんだよな。ずっと同じデッキを使い続けている、こだわりの人がいるっていうね。

 そういう顔なじみが増えてコミュニティが出来上がると、毎週マジックをするのがただゲームをするだけではないクールな楽しさを帯びてくる。あの人のデッキ、今週もまたアレなんだろうか? 今週はどんな進化を遂げているだろう? 自分も負けてられないな、◯◯デッキといえば自分と思ってもらえるように頑張ろう! みたいなね。競技マジックとはまた別の競い方、ライバル関係。そんな居心地の良さにクールさを感じるね。

 で、先日のこと。「毎週あのデッキを使っているあの人」がついにイベントにて全勝という結果を残した。全勝と言っても3回戦、プロツアー参加権利をかけて戦うような舞台での戦果とは数字や実績の面では比べものにならないかもしれないが……自分で考案したデッキを使い続け、練り上げ、研ぎ澄ました末の結果と考えれば……その情熱は勝るとも劣らないクールなものだと、僕はそう思うね。

 では、魂のこもったデッキを見てみよう!

Yanagi Toya - 「緑単ペインター」
第44回 マッサンのなんでも放送局 おうちでレガシー / The 44th Legacy at Home 3勝0敗 / レガシー (2022年8月13日)[MO] [ARENA]
3 《
4 《成長の揺り篭、ヤヴィマヤ
1 《耐え抜くもの、母聖樹
1 《地平線の梢
4 《古えの墳墓
1 《不毛の大地
1 《セジーリのステップ
1 《カラカス
1 《ボジューカの沼
4 《ウルザの物語
4 《演劇の舞台
4 《暗黒の深部

-土地(29)-

4 《エルフの開墾者
3 《絵描きの召使い

-クリーチャー(7)-
3 《モックス・ダイアモンド
4 《輪作
4 《踏査
1 《探検の地図
1 《丸砥石
1 《真髄の針
4 《壌土からの生命
3 《森の知恵
1 《影槍
2 《大いなる創造者、カーン

-呪文(24)-
1 《Glacial Chasm
1 《絵描きの召使い
1 《イス卿の迷路
3 《夏の帳
1 《丸砥石
1 《液鋼の塗膜
1 《倦怠の宝珠
4 《虚空の力線
2 《Helm of Obedience

-サイドボード(15)-
Melee より)

 

このクールなデッキは?

 こだわりにこだわりぬかれた珠玉のリスト、これが「緑単ペインター」だ!

 ペインター、いったい何度このコンボについて説明したかはわからないが、改めて。ペインターこと《絵描きの召使い》ですべての、戦場のみならず文字通りあらゆる領域のカードに指定した色を与えるという、マジックのルールをひとつぶっ壊してしまうクールなクリーチャーだ。

 今一度考えてみると……こいつって召使い、しかもカカシときたもんだ。『シャドウムーア』版のフレイバー・テキストを見ると主の命令に従って霧の中から色を集めてきて、主はそれを使って世界を染めるのだとか。なんと壮大でクールな物語! ていうか主って誰なんだ? いつかローウィン次元に再訪することがあればこの設定が回収されることもあるのだろうか。

 夢が膨らむが話はカードに戻って……すべてが同じ色になることで、《丸砥石》を起動すると、対象のプレイヤーのライブラリーがすべて切削される。

 そのプレイヤーにターンが回ると? アンタップ、アップキープ、ドローはできません、負け! シンプル極まりないカード2枚の必殺コンボだ。

 このコンボは副産物として驚異のコントロール性能をデッキにもたらす。色がすべて同じになることで、プロテクションや各種色対策があらゆるカードに対して機能するようになるのだ。《水流破》などで何でも打ち消せて何でも破壊できるようになるという具合にね。

 この特性を活かしつつ、最も効果的にデッキを運用できるのは赤。《紅蓮破》《赤霊破》でのコントロールに加え、赤はアーティファクトに関するカードが多くクールな恩恵を受けやすい。

 結果、赤単かそれに準ずるものがペインターの主流なのだが……このデッキは緑単ときたもんだ。長くレガシーをウォッチし続けているが、この構成は初めて目にするもの。初見の時には大きなインパクトがあった……が、まだまだリストは粗削りというか、手探り感が強いものだった。ここでもクールなデッキとして取り上げようとも思ったが、まだまだ伸びるなと堪えていたのだ。

 そしてここに、作成者本人も納得のいくリストが完成したってわけだ!

どこがどうクールなのか?

クールポイントその1:Why Green?

 では、最大の疑問から解消していこう。なぜ緑単色でペインターをやるのか? その答えは……最初に組まれた時とこのリストでは異なっているかもしれない。

 僕が最初に目にした時には、メインからペインターの能力を活かす《夏の帳》が入っていたり、《古きものの活性》でコンボパーツを探しに行くという動きをしていた。

 活性自体はかなり高性能なカードではあるが、ただ召使いで全てのカードに色が与えられると、手札に何も加えられなくなるという弱点も有していた。こうした調整過程で抜けていったカードについて考察するのもクールな時間だよな。

 現在では緑の特色である、土地まわりに関して最も優れているという点を高く評価したリストになっている。

 《ウルザの物語》は《丸砥石》をサーチできるため、ペインターコンボを強く後押しする。同時にこれ自身が構築物を生成することで勝ち手段にもなるスーパーカードだ。

 この土地をクールに運用するために、《踏査》を採用。

 これにより序盤から土地を大量展開して《ウルザの物語》の能力をいち早く進めていくことが可能になっており、また《壌土からの生命》で拾って出し直しも可能だ。

 この緑の誇る土地関係のコンビネーションを備えることで、「ペインター・コンボ」と共存可能になったのが「デプス・コンボ」。こちらはデプスこと《暗黒の深部》を対象に《演劇の舞台》を起動することで氷カウンターが置かれていない深部のコピーを作りだし、マリット・レイジを即時召喚するという必殺性の高いコンボだ。

 ペインターが効かない相手にはこちらの力で押し切るコンボで殴り勝つルートを用いる。というか、初見だとペインター要素に気付かずにこのデプスに押しつぶされ、サイド後にデプス対策をあざ笑うペインター炸裂!というクールすぎる勝ち方ができそうだ。

 《絵描きの召使い》もマリット・レイジも、《剣を鍬に》や《厚かましい借り手》などの除去から護ってやるために《輪作》《エルフの開墾者》から《セジーリのステップ》を持ってくるテクニックが光る。

 他にも《カラカス》《ボジューカの沼》などユーティリティ土地が揃っているし、シンプルに深部か部隊を持ってきてコンボを完遂しても良い。

 こうした構築ができるのも緑単の特権だ。

クールポイントその2:勝ち筋はなんぼあってもいい

 このリストのクールなところは、とにかく勝ちに貪欲なところ。どんなデッキでも勝つために組まれているものだが、この「緑単ペインター」は執念のようなものを感じるレベルだ。

 《大いなる創造者、カーン》はサイドボードからアーティファクトを持ってこれるので、召使いや《丸砥石》を忍ばせておくコンボサーチの役を担っている。

 それと同時にサイド後は別のコンボも支える。別のコンボ? そう、驚きの第3の爆弾、「ヘルム・コンボ」だ。

 サイドの《虚空の力線》は対戦相手の墓地にカードが落ちなくなる状況を作る。単純に強力な墓地対策であるのだが、その状況下でヘルムこと《Helm of Obedience》を対戦相手を対象に起動すると……このアーティファクトは相手のライブラリーからクリーチャーが墓地に落ちるまで切削し続ける。力線で墓地にカードは落ちないので、すべてが無くなるまでノンストップで削り続ける!

 ペインターとは別のベクトルでのライブラリーアウト勝ちを狙うのだ。サイド後は2枚あるヘルムの1枚をメインに、もう1枚はサイドに残したままにしてカーンのサーチ候補とする。なんという勝利への執念、コンボへの執着! それはクールとしか表現のできないものだ。

 このデッキの勝ち筋をまとめればこんなところか。ビートダウンとマナロックは《壌土からの生命》により何度でも仕掛けられるという、コントロール系相手に持久力での勝負ができるのも頼もしさにあふれている。

クールなまとめ

 良いデッキ、クールなデッキというものはなかなかにすぐには作りだせないものだ。何週間、何か月、何年かかかって、ようやく納得のいく品に巡り合えたらそれはクールな奇跡と言っても良いんじゃないか。

 皆もこの「緑単ペインター」のように、自分にとってどこまでも追いかけたいデッキが見つかると良いね。それじゃあ今週はここまで。Stay cool! Sharpen your deck!!

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