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戦略記事

岩SHOWの「デイリー・デッキ」

緑単信心:龍神と大釜(パイオニア)

岩SHOW

 デッキは可能な限り単色が良い。

 なぜか? 確かに5色に近づくほど、デッキは良いとこ取りができる。されど同時に……デッキは脆くなっていく。マナ基盤の問題でね。

 2色、3色、5色と生み出せる土地がいくらあろうとも、それらには基本的にデメリットが付与されている。ライフを失ったり、タップ状態で戦場に出るため展開が遅れたり……手札に青いカードがあるのにマナは赤と黒しかない、みたいな色事故(カラースクリュー)も起きかねない。単色に近いデッキはそれらのトラブルが起こらないのでオススメってことだ。

 ただ、色を足すのはシンプルにデッキパワーを高めることができるので、狙っていきたいというのもプレイヤー心理としてある。つまり単色デッキで、なおかつ多色のカードが使えるデッキが理論上最強ってことか?

 どんなデッキかは……例えばこんなものはどうだろう?

Jakob Heckert - 「緑単信心」
Magic Online Pioneer Challenge ベスト8 / パイオニア (2022年8月)[MO] [ARENA]
15 《
2 《ハイドラの巣
4 《ニクスの祭殿、ニクソス
-土地(21)-

4 《エルフの神秘家
4 《ラノワールのエルフ
1 《森の女人像
4 《老樹林のトロール
4 《茨の騎兵
-クリーチャー(17)-
4 《ニッサの誓い
4 《狼柳の安息所
4 《収穫祭の襲撃
4 《ビヒモスを招く者、キオーラ
4 《大いなる創造者、カーン
2 《龍神、ニコル・ボーラス
-呪文(22)-
1 《宝物庫
2 《空殴り
1 《隕石ゴーレム
1 《大食のハイドラ
1 《トーモッドの墓所
1 《墓掘りの檻
1 《真髄の針
1 《減衰球
1 《死に至る大釜
1 《鎖のヴェール
1 《王神の立像
1 《影槍
1 《キランの真意号
1 《領事の旗艦、スカイソブリン
-サイドボード(15)-
Jakob Heckert氏のTwitter より引用)

 

 パイオニアの「緑単信心」デッキだ。《老樹林のトロール》《茨の騎兵》などマナシンボルの濃いパーマネントを並べ、《ニクスの祭殿、ニクソス》から大量のマナを得る、このフォーマットを代表するデッキだ。

 この単色の代表格とも言えるデッキに……多色のカードを足す! しかも3色! さらに緑は含まないッ! 無茶苦茶だ。

 そのカードの名は《龍神、ニコル・ボーラス》。

 これを緑単のデッキに入れるって……《世界樹》でも使っているのかと思うが、そんなことはなく土地はニクソスと《ハイドラの巣》以外全部《》! その構成が取れるから単色信心デッキは強いのだけども、そこにボーラスって大丈夫か?

 そう思ってしまうのも無理はないが……これが意外と何とかなってしまうからマジックは恐ろしい。まず、ライブラリーから直に出すという方法。

 《収穫祭の襲撃》はマナ総量が5以下のパーマネント・カードを2枚も戦場に出せるので、これでめくれるのに期待する。対戦相手も驚くなんてもんじゃないよな、緑単色のデッキから飛び出すボーラスって。お茶とか飲んでたら噴いてしまうよ。

 そして、そんな運任せの収穫祭のみではなく、きちんと手札に来たボーラスを唱える術も用意してあるぞ。《ニッサの誓い》だ。

 このエンチャントがあれば、プレインズウォーカーを唱える色マナは何色でも任意の色マナとして用いることが可能になる。ニクソスから捻りだしたマナで素知らぬ顔してボーラスを呼び出そう。本人も違和感満点で困惑顔をしてそうだな。

 信心デッキのもうひとつの側面はプレインズウォーカー・デッキであること。たっぷりのマナから唱える《収穫祭の襲撃》もプレインズウォーカーが並ぶことを狙ってのものだ。

 《ビヒモスを招く者、キオーラ》は騎兵やトロールなどが戦場に出るとドローできるアドバンテージ源であり、かつニクソスをアンタップすることで桁違いのマナが得られるようになる、マナエンジンでもある。

 爆発的なマナは《大いなる創造者、カーン》が受け取り、サイドボードから持ってきたアーティファクトへと繋げる。

 《王神の立像》で減速させながらじわじわとライフを削る、《鎖のヴェール》でキオーラたちの能力を1ターンに2回使うなどなど。

 そして《龍神、ニコル・ボーラス》。これ自身もアドバンテージを稼ぎ、除去にもなり、ゲームを終わらせる能力も持つが……キオーラとカーンの能力を得て使えるというのもかなり重要。キオーラおかわりからさらに膨大なマナを得るのだ。

 この信心デッキに隠されたフィニッシュは《死に至る大釜》。

回転

 その名に偽りなし。十分な信心が揃い、ニクソスからマナを得られる状況下でキオーラでニクソスをアンタップ。カーンでこの大釜をサイドから手札に加えつつ……《収穫祭の襲撃》などでカーンとキオーラをもう1セット戦場に出す。レジェンド・ルールにより、先に能力を使ったキオーラ&カーンは墓地へ。

 キオーラでニクソスをまたアンタップしてマナを得たら……大釜の第2面《修復の噴出》を唱える。これで墓地のキオーラとカーンを手札に戻しつつライフ4点を得て、《修復の噴出》は《死に至る大釜》として追放領域へ。

 2枚目のカーンの能力で、追放されている大釜を回収、噴出として唱えて戻したキオーラとカーンを出してまたニクソス起こして噴出唱えて、大釜戻して……

 ループを形成し、好きなだけライフを得ることが可能だ。そして最後は《森の女人像》かカーンから持ってきた《宝物庫》で宝物を生成するかで黒マナを得て、大釜として唱える。

 「あなたがこのターンに得たライフの点数に等しい」枚数のカードを対戦相手は切削し、ライブラリーが消し飛んでフィニッシュ!

 一体何マナ使うんだという、一見オーバーキルなコンボではあるが、こういう勝ち方ができるということが重要。コンボ抜きでもボーラスやクリーチャーで圧倒できればそれでよし、隙あらば決めて気持ち良い勝利を。それこそが強いデッキの地力ってやつだ。

 一見ハチャメチャなロマンデッキに見えて、単色であることの利を最大限に生かしたスマートなデッキである「緑単信心」。圧倒的なパワフルさに酔いしれる、これぞマジックという体験を、今こそパイオニアで!

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