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戦略記事

岩SHOWの「デイリー・デッキ」

アブザン・パルヘリオン(パイオニア&エクスプローラー)

岩SHOW

 勝負事の世界、どんなジャンルであっても強きものは対策されるのが世のさだめである。エースピッチャーが打たれたり、優勝候補がマークされて前に出られなかったり……強い存在は徹底して対策されてその力を満足に発揮できずに沈んでいく様はたびたび目にするもの。

 マジックでも、例えばプロツアー開催直前は「○○コンボが強すぎる!」と騒がれていたものの、世界トップクラスのプレイヤーやチームがそのデッキへの対策をしっかり行った結果、優勝はまったく別のデッキだった、なんてことはよくある話。強いデッキ≠勝てるデッキ、というのは奥が深いよね。

 特に特定のシステムに頼ったコンボデッキは対策されやすく、それゆえにサイド後はもとよりメインからも過剰な対策をされて思ったように勝てない、という事態に陥りがち。MTGアリーナのランク戦や権利のかかったトーナメントだと、一番マッチするデッキを狩るのに特化したデッキが現れるのは必然。そうした厳しい風当たりの中で、コンボデッキはどのように生き延びるのか? この課題に挑むのがコンボスキーの日常だ。

 たとえばパイオニアおよびエクスプローラー、これらのフォーマットでは《大牙勢団の総長、脂牙》を主役とした機体をリアニメイトするデッキが大流行。

 これまでスポットが当たることのなかった《パルヘリオンⅡ》がマナ・コストを踏み倒した上に速攻を持つという脂牙の能力でついに表舞台に!

 3ターン目に空から13点ダメージを叩き込みつつ4/4の天使2体が戦場に残るという、大半のデッキにとって致命傷となるコンボは、これらの環境を悠々と闊歩していた……

 ……のだが、このデッキにも上述の法則が適用され、目の敵にされるようになってきた。脂牙の白黒に加えて青を採用、《策謀の予見者、ラフィーン》《帳簿裂き》などでパルヘリオンを墓地に落とすのを狙ったエスパー型……3色目に赤をチョイス、屈指のパワーカードである《鏡割りの寓話》や《死の飢えのタイタン、クロクサ》なども併用できるマルドゥ型……といった脂牙デッキの初期型は《未認可霊柩車》などの墓地対策の前に沈んだのか、その数は減ってきたし以前ほど絶対的な強さも発揮できていないように見える。

 しかしながら「○○パルヘリオン」デッキは終わってはいなかった。コンボが決めにくくなっても戦えるし、決められる時は非常にスムーズにコンボを完遂して勝つ、そんな理想形が……。

PlayingPioneer - 「アブザン・パルヘリオン」
エクスプローラー (2022年8月4日)[MO] [ARENA]
2 《神無き祭殿
4 《秘密の中庭
4 《花盛りの湿地
4 《闇孔の小道
1 《死天狗茸の林間地
3 《枝重なる小道
2 《草茂る農地
1 《見捨てられたぬかるみ、竹沼
-土地(21)-

4 《縫い師への供給者
4 《光胞子のシャーマン
4 《ラフィーンの密通者
4 《大牙勢団の総長、脂牙
-クリーチャー(16)-
4 《思考囲い
4 《未練残り
4 《忌まわしい回収
3 《ウィザーブルームの命令
4 《エシカの戦車
4 《パルヘリオンⅡ
-呪文(23)-
2 《辺境地の罠外し
2 《墓地の侵入者
4 《致命的な一押し
3 《強迫
1 《ポータブル・ホール
1 《忘却の儀式
1 《未認可霊柩車
1 《領事の旗艦、スカイソブリン
-サイドボード(15)-
aetherhub より引用)

 

 3色目に緑を据えたエクスプローラーの「アブザン・パルヘリオン」。他のパルヘリオン・デッキの下降と呼応するように隆盛してきた第3の脂牙デッキだ。現在最も安定したパルヘリオン・コンボがなぜ緑なのか? その理由を確認していこう。

 まずはパルヘリオンの基本を。《縫い師への供給者》などで切削、あるいは手札からカードを捨てることで《パルヘリオンⅡ》などの機体を墓地に送る→《大牙勢団の総長、脂牙》を戦場に出し、戦闘を迎える→脂牙の能力で機体を墓地から戦場に戻す。ターン終了時にこれは手札に戻るが、速攻を持っているので脂牙などで搭乗して即攻撃!

 この一連のムーブの中で、パルヘリオンや《領事の旗艦、スカイソブリン》のような攻撃したり戦場に出すことでアドバンテージを得られる機体を用いることで、ただ単にダメージを与えるだけではなく盤面を優位にしていく。それを《思考囲い》や各種除去などでサポートしていくというわけだ。

 この機体のバリエーションに、緑を足すことで《エシカの戦車》が加わる。

 墓地から出て速攻で攻撃することで、2/2の猫が計3体も戦場に並ぶことに。この動きも強いが、そもそもこの戦車は4マナと現実的なコストを持っている。無理せずとも普通に唱えて殴るだけでも強いのは、スタンダードの緑系アグロなどでとっくに証明済みだね。そう、これが対策されても勝てるコンボデッキを成立させているというわけだ。

 対戦相手が血眼になって墓地を対策するカードを並べているのを、風切るようにスルーして殴る戦車の頼もしいことよ。これが除去されたら脂牙で拾って、という運用もナチュラルに強いぜ。そんなわけでアブザン型が現在流行中だ。

 このデッキが重要としているライブラリ切削の過程。黒だけでなく緑が加わることでその選択肢は大幅に増える。特に強力なのは《忌まわしい回収》。

 重要な脂牙を手札に加えながら墓地に機体を落とせる、噛み合い過ぎている素晴らしいインスタントだ。そしてこのカードは土地を手に入れる手段として用いることができる点も素晴らしい。脂牙が手札に、機体が墓地にあってもコンボを成立させるための土地がない、となってはお話しにならないからね。3色デッキというのもあって、脂牙を唱えるための白マナを確実に得ることは非常に重要なことだからね。

 《ウィザーブルームの命令》《光胞子のシャーマン》などでしっかりとマナ基盤を整えながらコンボの下準備をしよう。

 他にも《根囲い》や、パイオニアであれば《サテュロスの道探し》なども選択肢として見逃せない。

 それらでの切削により墓地に脂牙が落ちることもある。その場合は《未練残り》で蘇らせよう。

 これ自体もフラッシュバックを持つのが強く、除去や打ち消しなどでコンボを防ごうとする相手に対する対抗手段としても一級品だ。脂牙と色も同じなので、このデッキにおける必須パーツと言っても良いね。

 他にも《ラフィーンの密通者》などのクリーチャーを状況に合わせてリアニメイトし、ゲームを優位に進めよう。

 対策されてもそれを跳ね返す、これが強力デッキに課せられる宿命。それを乗り越えた時、天下無敵のデッキが誕生する……脂牙とパルヘリオンの行く末を見届けよう。さあ、パイオニアとエクスプローラーでバチバチに火花を散らそうぜ。

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