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岩SHOWの「デイリー・デッキ」
タイタン・シフト:おすすめのフォーマットとは(モダン)
最近当コラムではパイオニアのデッキを取り上げる頻度が上昇している。それはMTGアリーナにてこれに繋がるフォーマットとしてエクスプローラーが制定されたことや、大型イベントを終えてスタンダード環境が一息ついているタイミングというのが大きな理由になる。
そしてもうひとつ、かつて「マジックをやりたいプレイヤーにどのフォーマットを勧めるのか?」という議論において、「モダン」が適しているという意見を目にすることが多くあった。
スタンダードはとっつきやすいが、参入タイミングによってはローテーションにより、せっかくのカードがすぐさま使用できなくなってしまうということがなきにしもあらず。
ただローテーションのないフォーマットでも、レガシーやヴィンテージなどのエターナル環境は使用可能なセットが多い分入手が難しいカードが多く、また膨大なカードの知識が求められてしまう。
モダンはそれに比べればカードプールは抑え目であり、デッキを組むのも相手が使ってくるカードを覚えるのもまだハードルが低めである、という考えによるものだ。
しかしながら時が経過して、そのモダンが今はかつてのレガシーのような様相を呈している。『モダンホライゾン』系の専用セットがリリースされたこともあって、非常に多くのカード・デッキが覇権をめぐってひしめき合っている一種の魔境ってところだな。
そんなわけで僕の考えとしては、かつて初心者にモダンを勧めたのと同じ空気感でパイオニアを勧めるというのもアリだなと、そう考えているってわけだ。
ただ、モダンもモダンで独自の魅力を放っている環境であることは間違いがなく、このフォーマットをプレイする人もまた1人でも多く増えて盛り上がってくれたらなぁと考えているのも事実だ。モダンには個人的に好きなデッキもあるからね。それは……「ヴァラクート」!
その名の通りキーカードは《溶鉄の尖峰、ヴァラクート》。山タイプを持った土地を並べて、6枚目以降が戦場に出れば3点ダメージを任意の対象に飛ばすという、なかなか激しい攻めの土地だ。
これを用いるデッキは、もちろんのこと土地を多数並べることでの勝利を目指す。そのためにデッキ内の土地の枚数は一般的なデッキよりも多くなり、つまりは土地が引けない、マナスクリューと呼ばれる状況に陥りにくくなる。
そして同時に、土地がダメージ源になるので土地ばかり引いて攻め手に欠ける、マナフラッドという状況でも勝利に向かうことができる。
土地を引かないことも引きすぎることも得意な体質の僕にとっては、「ヴァラクート」とは己にマッチしたデッキとして重宝していた。オカルト的なことを言っているようだが、結構マジ。
ここ数年のモダンでは、ヴァラクートはカード自体は使われるものの、デッキとしては純正のものは他のデッキに押され気味だった。《死者の原野》などの他の土地で勝つコンボデッキにヴァラクートを潜ませ、《イリーシア木立のドライアド》で全部山にしてどの土地でも噴火する、という使われ方だな。
これは強力でありコンボとしての絵面も面白いが、個人的には真面目に山タイプを持った土地を並べる昔ながらのヴァラクートが好きでね……と、時代に取り残された頑固爺さんのような考えを持ち続けていたら……久しぶりにその純正と呼べるヴァラクートデッキが文字通り爆発を起こしていた。
5 《山》 2 《ドワーフの鉱山》 1 《森》 3 《踏み鳴らされる地》 2 《隠れた茂み》 1 《燃えがらの林間地》 4 《樹木茂る山麓》 2 《乾燥台地》 2 《沸騰する小湖》 2 《血染めのぬかるみ》 3 《溶鉄の尖峰、ヴァラクート》 1 《耐え抜くもの、母聖樹》 -土地(28)- 4 《桜族の長老》 4 《イリーシア木立のドライアド》 4 《原始のタイタン》 -クリーチャー(12)- |
4 《稲妻》 4 《探検》 4 《レンと六番》 4 《明日への探索》 4 《願い》 -呪文(20)- |
1 《溶鉄の尖峰、ヴァラクート》 1 《忍耐》 1 《トーモッドの墓所》 3 《夏の帳》 2 《大祖始の遺産》 1 《炎の斬りつけ》 1 《自然の要求》 2 《風景の変容》 3 《虚空の杯》 -サイドボード(15)- |
このリストを見てどう感じたかって? 思わず笑顔になっちゃったよ。
これは先日開催された「2022 Magic Online Champions Showcase Season 1」にて勝利したリストである。ここまでピュアなヴァラクートがタイトル獲得って、いつ以来のことだろうか?
人は自分が生まれ育った風景を忘れることはなく、僕の中にも《踏み鳴らされる地》などを並べてヴァラクートの怒りを呼び覚ます光景がいつまでも残っていた。日々静かに溜まっていったそんな思いが噴火したようで、ただただ嬉しかったね。デッキリストだけでも人間は感動できるのである。
《桜族の長老》《探検》《明日への探索》などで土地を伸ばしてヴァラクートがダメージを与えられる状況を作っていくのがデッキの基本的な動き。
大技として《原始のタイタン》を搭載。
これによりヴァラクートや山を戦場に出し、爆発的なダメージを弾き出す。単体のクリーチャーとしても優秀なのがたまらない。皆タイタンを使いたくてヴァラクートを使っていると言っても過言ではないね。
他には《レンと六番》で《樹木茂る山麓》などを使いまわして山タイプの土地を途切れなく展開するというのも地味ながら確実に勝利に近づく道だ。
さて、ヴァラクートデッキは「タイタン・シフト」とも呼ばれる。タイタンは説明不要として、シフトとは。これは《風景の変容》のこと。
土地が7枚ある状況でこのソーサリーを唱え、ヴァラクート1枚と山6枚をライブラリーから戦場に出す。するとそれらの山はすべてヴァラクートの能力を誘発させ、計18点のダメージを叩き込んでくれる。
土地を並べてこれを唱えるだけで勝てるというのもあって、1枚コンボのようなものとして定番のフィニッシュなのだが……このデッキのメインには《風景の変容》は不採用。サイドボードには2枚あるので、サイド後にこれを用いるのか?と思ったが、メインデッキをよく見ると《願い》が4枚。
なるほど、これでサーチするわけだ。《風景の変容》は実際に使ってみると強いは強いが、手札でお荷物にもなりがちなカードでもある。そこで《忍耐》《自然の要求》などゲーム展開次第で輝くカードとともにサイドに並べて《願い》でサーチするという戦術を用いるわけだ。スマート!
ヴァラクートの4枚目も控えているのがテクくてニクいね。《屍呆症》のようなカードで勝ち手段をごっそり抜かれるのを防ぐって考えだな。
このリストは同大会にて2名が持ち込んだものであり、大一番を勝つための調整がチームで施されたというのが伝わってくる。その上でバッチリ結果を残しているのが、最高にカッコイイね。
ちょっと懐かしいデッキが再度スポットライトを浴びる……そんな懐の深さがモダンの最大の魅力なのかもしれない。デッキを組んでカードを覚えるハードルは決して低くないが、新規参入するプレイヤーにはその過程も楽しみながらやってほしいね!
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