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岩SHOWの「デイリー・デッキ」
緑単アグロ:キーカードは新たな蛇たち!(アルケミー)
ただ強い! ただただ強い! というカードパワーあふれる1枚を振り回して気分が良くなるマジックも健康的なものである。制限などなくのびのびとした構築でスッキリするべし、だ。
その一方で、特定の状況下・特殊な構築でのみ力を発揮するカードも存在する。ただ強カードと比べるといつ何時も気持ちよくなれるというわけではないが、そういった癖のあるカードならではの高揚感というものもまた良いものである。
工夫が実り、ゲーム上でカードがイキイキとするあの感覚……個人的にはそれこそがマジックに求める喜びであったりする。これどうやって使うんだろう? 真価を発揮させるにはどんなデッキで? そういうことに頭を悩ませる時こそ至福の時間だ。
『アルケミー:神河』においても、ちょっと普通の構築では活かしきれないような調整が施されたカードが。手札に○○がない時にコストが{2}軽くなるという神話レアのサイクルだ。
中でも緑が担当する《強引な養成者》はその軽減の難易度が高めというか……土地が手札にないことで2マナになり、そしてこのクリーチャーは戦場に出た際にライブラリーから基本土地を戦場に出せるというマナ加速を行えるというもの。
2ターン目に出せればめちゃ強い! のだが、そうも簡単に2ターン目に手札に土地が1枚もないという状況は作れるだろうか? 意図的に土地の枚数を絞れば、それは単純に土地が全く引けないというリスクが増すことになる。そもそも3ターン目に土地が置けなかった場合、普通のデッキで3ターン目を迎えたのと何も変わらないという事態に。
2ターン目に手札に土地はなく、しかし3ターン目も平然と土地を置くことで対戦相手よりも1ターン先に進んだ展開を味わう……これって決して簡単なことではない。だからこそ挑みたくなるというものだ。
そんなチャレンジ精神に満ちたリストを発見したので、今回はそれを取り上げさせていただこう。
10 《森》 3 《ハイドラの巣》 2 《耐え抜くもの、母聖樹》 -土地(15)- 4 《隆盛な群れ率い》 4 《群れ率いの人狼》 4 《カザンドゥのマンモス》 4 《老樹林のトロール》 4 《ウルヴェンワルドの奇異》 4 《執拗な仔狼》 4 《強引な養成者》 3 《樹海の解放者》 -クリーチャー(31)- |
1 《蛇皮のヴェール》 1 《タミヨウの保管》 1 《豊穣の碑文》 3 《レンジャー・クラス》 1 《カルニの待ち伏せ》 3 《古霊招来》 4 《変わり樹の共生》 -呪文(14)- |
3 《タジュールの荒廃刃》 2 《辺境地の罠外し》 2 《墓所のうろつくもの》 3 《万物の姿、オルヴァール》 1 《タミヨウの保管》 3 《達人の咎め》 1 《レンジャー・クラス》 -サイドボード(15)- |
180名ものプレイヤーが参加した2日制のトーナメント、「Crokeyz Alchemy: Kamigawa Tournament」にてトップ8という結果を残した「緑単アグロ」だ。
《カザンドゥのマンモス》《老樹林のトロール》《古霊招来》と立派な体躯を誇るクリーチャーが揃っている緑のアグロ、その展開を《強引な養成者》でサポートするのを目指した形だ。
上手くハマれば3ターン目に《ウルヴェンワルドの奇異》が走り、また同一ターンに土地を2枚戦場に出して《カザンドゥのマンモス》の上陸を2回誘発したりとパワフルさを底上げできるのは魅力的だ。
またライブラリーから土地をサーチするということは、微小な差でこそあれライブラリーを圧縮できるということである。アグロデッキにおいて5~6枚目以降の土地というものはあまり使い道がなく、無駄なドローになりがちだ。それを少しでも回避するための圧縮というのは、決して無意味な行いではない。養成者、こいつはやりおるぜ。
さあそんな養成者をしっかり2マナで唱えるための工夫、このリストで行われていることは……土地がたったの15枚!
ぎりっぎりまで切り詰めた枚数でありながら、《カザンドゥのマンモス》と《変わり樹の共生》、そして《カルニの待ち伏せ》と採用することで実質的な土地の枚数は24枚という、養成者のポテンシャルを引き出すのにまさしくうってつけの構成となっている。
このような特殊な形にするか、あるいは普通に20数枚の土地を用意し《絡みつく花面晶体》《冬を彫る者》とクリーチャーによるマナ加速を行うかは……どちらも一長一短、好み次第というところか。
《炎恵みの稲妻》などで即座に撃ち落とされてマナが伸びない、というクリーチャーをタップしてマナを得るプランの弱点を養成者作戦は克服しているという点は評価されるべきポイントだと思うね。
また、養成者を早いターンに唱えるメリットがもうひとつ、《隆盛な群れ率い》とのシナジーだ。
1ターン目群れ率い、2ターン目養成者と動けば、なんと群れ率いに+1/+1カウンターが置かれてパワー3で攻撃しつつ、次のターンにはさらに上のマナ域の怪物を呼び出せるチャンスが拡がるという……開幕からクライマックスを演出だ。後から出てくる群れ率いも3/2になるなど、本来4マナのカードを早いターンに唱えられるということは無視できない恩恵をもたらすのである。
さて、さんざん養成者について取り上げてきたが、ここでもう1体の新しい蛇を紹介しよう。《樹海の解放者》!
蛇にして忍者という時点ではしゃぎたくなるカッコ良さだが、能力もたまらない。攻撃を通せば土地かそれ以外かを選んで、ランダムに手札が1枚手に入るというアドバンテージ獲得能力の持ち主だ。
忍術が2マナと非常に軽いので、2ターン目に滑り込ませてダメージと手札と両面で優位に立ちたいところだ。それを促す1マナクリーチャーとしては《執拗な仔狼》がベストパートナーとなる。
忍術で出てくるクリーチャーはこの仔狼の能力の恩恵を受けられないが、次のターンに出てくるマンモスなんかが警戒とトランプルを持ってサイズアップ、さらにそれをもう1回行えるときたものだからたまらないね。
ライフ1点を得る能力も単体だとスルーしがちだが、戻してもう1回となるとゲームを分けるには十分、五臓六腑に染みわたる回復役として立派に機能してくれることだろう。
また、養成者を忍術のタネにするのもすこぶる強い。解放者が飛び出てダメージを与え、土地を指定。第2メインでその土地を戦場に出し、手札の土地が0枚になったので再度コストが軽減された養成者を出して土地を得て……という動きで、切り詰めたマナベースでも《古霊招来》を運用できてしまうという寸法だ。
このデッキはトーナメントで勝つために練られたリストであり、ゆえにカードの採用枚数などにはトーナメントならではの特徴が窺える。
《蛇皮のヴェール》《タミヨウの保管》《豊穣の碑文》などのインスタントが散らして採用してあることで、リスト公開制のゲームにおいてあらゆる選択肢をちらつかせて対戦相手を惑わせる。
また、黒赤系のデッキが増えて《街追いの鑑定人》《地底街の略取》を唱えられる可能性がかなり高いと踏んでの《万物の姿、オルヴァール》3枚採用も良い牽制になるだろう。
これがサイドに見えることで対戦相手はそれらのカードを唱えることを躊躇し、サイド後のゲームでは枚数を減らしてくれる可能性もある。実際にサイドからメインデッキに入れ替えなくとも、そこにあるだけでこのような仕事を十分に果たしてくれるというわけだ。
なのでランク戦で使う場合、このまま丸ごとコピーしても一部のカードが思った通りに機能しない可能性もある。そこは各自で、どのカードが何を狙ったものかを考えながら自分に合った枚数にしたり他のカードと入れ替えたり、調整するべきポイントだな。
実際にプレイしてみて、黒赤系のデッキ相手にもガシガシと攻めていけるパワフルさがあり、かつ《強引な養成者》をはじめとしたテクニカルなマジックも楽しめる、素敵なデッキだなと感じた「緑単アグロ」。アルケミーならではのマジック、その妙味を堪能してくれると嬉しいね。
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