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戦略記事

岩SHOWの「デイリー・デッキ」

ラクドス「碑出告」ミッドレンジ:3マナ域という新たな可能性(モダン)

岩SHOW

 モダンにおいて、春の大改革。《夢の巣のルールス》が使用不可となった。

 相棒という能力のルール変更がなされてからも、ルールスの使用率は大きく衰えることはなかった。ゲーム終盤、{3}を支払ってでも手札に加えることでリカバリーが図れるこの猫・ナイトメアの存在は長きに渡って支配的なものとなっていた。

 相棒特有のデッキ構築の縛りも、元々コストが軽いカードであふれているモダンというフォーマットにおいては苦でもなんでもなく。つまり、3マナ以上のパーマネントを用いることが「ルールスが使えない」という逆ハンデの状態となっていた。

 制限の中でこそ力を発揮するカードという狙いとは違うベクトルに突き進んでいたのもあって、この度の禁止はやむを得ないものだったのではないかな。

 ただ何もこれは悲観するだけのイベントではない。確かに1枚のカードが使えなくなったことは残念ではあるが、これにより近年鳴りを潜めていた3マナ以上のパーマネントが息を吹き返すのであれば、それは非常に喜ばしいことではないか。

 たとえば、こんなリストが出てくるようになったぞ。

Przemysław Krok - 「ラクドス『碑出告』ミッドレンジ」
3City League(NEO) #5 @ SideQuest (Gdańsk, Poland) 優勝 / モダン (2022年3月22日)[MO] [ARENA]
4 《
2 《
3 《血の墓所
4 《血染めのぬかるみ
3 《新緑の地下墓地
1 《湿地の干潟
4 《黒割れの崖
1 《竜髑髏の山頂

-土地(22)-

4 《敏捷なこそ泥、ラガバン
4 《ダウスィーの虚空歩き
2 《死の飢えのタイタン、クロクサ
2 《戦慄の朗詠者、トーラック
3 《歴戦の紅蓮術士

-クリーチャー(15)-
4 《コジレックの審問
4 《稲妻
3 《致命的な一押し
2 《思考囲い
2 《戦慄掘り
3 《血染めの月
2 《碑出告が全てを貪る
3 《ヴェールのリリアナ

-呪文(23)-
1 《月の大魔術師
2 《虚無の呪文爆弾
2 《黄鉄の呪文爆弾
2 《集団的蛮行
1 《碑出告が全てを貪る
1 《コラガンの命令
2 《仕組まれた爆薬
2 《虚空の杯
2 《夢を引き裂く者、アショク

-サイドボード(15)-
mtgtop8 より引用)

 

 《敏捷なこそ泥、ラガバン》登場以来、この手のリストが増えたなという感じのラクドス(黒赤)デッキ。

 ただ今までと違うのは先述のようにそこにルールスがおらず、そして3マナのパーマネントが複数採用されていること。《ヴェールのリリアナ》なんて本当に久しぶりに見たよなぁ。

 これはポーランドのショップイベントで優勝したデッキリストだ。今後、リリアナなどの逆襲が始まりこのようなリストがあふれかえるのかもしれないなぁ。失われつつあった可能性がこうやって再浮上することは、マジックファンとして喜ばしいことだよ。

 《敏捷なこそ泥、ラガバン》でスタートし、宝物生成によるマナ加速と対戦相手から奪ったカードで手数で攻める。そのプランを推し進めるために《コジレックの審問》《思考囲い》など手札破壊と、《稲妻》《致命的な一押し》などのクリーチャー除去でサポートする。

 《ダウスィーの虚空歩き》もまた相手のカードからアドバンテージに繋げるもので、これら軽量クリーチャーで序盤から強襲をかけていくというスタイルのデッキだ。

 《戦慄の朗詠者、トーラック》《死の飢えのタイタン、クロクサ》と手札を捨てさせるクリーチャーもまた、ルールス時代から引き続き登板。

 ハマったら対戦相手から何もかも奪い去る、血も涙もない構成は「これぞラクドス」って感じで良いよね。

 デッキ名は「ラクドス『碑出告』ミッドレンジ」と記載されていた。碑出告、すなわち《碑出告が全てを貪る》。

回転

 ラガバンや《ドラゴンの怒りの媒介者》などなど、1マナ以下のパーマネントが強いモダンにおいては、簡単に1枚で2枚以上のカードを対処可能な除去として重宝することだろう。《ウルザの物語》で生成された構築物と、そのⅢ章能力で持ってきた《影槍》などをまとめて押しつぶすパワフルさも素敵だ。

 墓地追放もモダンという墓地利用デッキが潜むフォーマットではメインから機能するアンチカードになり得るものであり、そして《全てを貪る者の器》となれば勝利手段も兼ねるという、てんこ盛りな英雄譚だ。この春からモダンに鮮烈デビューを果たしたこの1枚、どんなリストでその姿を見ることになるか今後が非常に楽しみ!

 そしてこの碑出告と同じ3マナのエンチャントである《血染めの月》も存在感があるね。

 この手の赤いミッドレンジ(中速デッキ)では、自身の土地構成は基本土地を多めにして相手のマナ基盤だけをこの月でグズグズにするという戦術がよく見られたものだ。ラクドスが月を置いてくるという状況もすっかりご無沙汰になったことで慣れていないプレイヤーも増えていたことだろう、このプランが上手くハマったマッチアップもあったことだろうね。

 つまりは今後モダンを遊ぶプレイヤーは、この基本でない土地を無力化させるエンチャントを意識しながらデッキ構築およびプレイするマッチアップが増えるってことだね。土地周り、今まで以上に注意すべし。

 あるカードの支配的活躍は、他のカードを抑え込んでしまうことがある。そのカードが去ることで、多くのカードの可能性が拡がることにもなる。モダンはまた新しい局面を迎えることになりそうで、そしてそこに『ニューカペナの街角』のカードが加わると……混沌が訪れそうだ。今から楽しみだねぇ、変化こそマジックの醍醐味だもんな!

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