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岩SHOWの「デイリー・デッキ」
グリクシス・キキジキ:あるゴブリンの物語(アルケミー)
《むかしむかし》……神河という次元のあるところに、キキジキという名のゴブリンがおったそうな。
彼は家族の4人目の子として生まれ、岩投げの練習で誤って妹を投げ捨てたり、自分よりも愚かな兄に鬼をからかう遊びを教えたりとデンジャラスな生き方をした結果、一族を追放の身となった。
飢えた彼はひょんなことから、強大な力を持った龍と出逢った。魚を授けられて飢えをしのいだキキジキは、この龍の願いをかなえるためにひと働き。龍の背に乗って空を舞い、空民たちが住まう宮殿へと忍び込んだ。そこでキキジキはもともと龍のものであるという真珠を取り返すために盗みに入ることになった。
無事に真珠を見つけたキキジキであるが、鏡に映った自らの姿に違和感を覚える。そこにいた自分は、真珠を手にしていなかった。この鏡を叩き割った結果、鏡よりその分身が飛び出し、キキジキは二人となった……龍が云うには、これはキキジキが身に着けた分身の魔法であるそうな……。
というのが、《鏡割りのキキジキ》の物語である。
神河の本筋には関係はないものの、なかなかに面白いストーリーではないか。
キキジキのアートは2種類ともに、甲羅に覆われたキキジキの姿の背後にドラゴンが描かれているのはこのような設定があるからなのだ。
この物語をカード化したのが《鏡割りの寓話》だ。どうやら現・神河ではこの出来事は遥か昔のおとぎ話として親しまれているようだね。
この英雄譚のⅠ章能力で生成されるゴブリン・シャーマンはもちろんキキジキのことであり、これで攻撃すると宝物が得られるのは真珠を盗み出したことを表現してのもの。イラストでも嬉しそうにそれを手にした姿が確認できる。
Ⅲ章能力で《キキジキの鏡像》としてクリーチャー化。《鏡割りのキキジキ》と似た、クリーチャーをコピーする能力を持っている。元祖キキジキはトリプルシンボルの5マナと重めではあるが速攻を持ち、能力の起動にはタップのみ。これで《詐欺師の総督》をコピーしてはキキジキをアンタップし続けたり、《修復の天使》をコピーしてはタップ状態のキキジキを出し入れしてアンタップで戻したり……と、簡単に無限コンボを決めることができた名カードであった。
対して鏡像は、速攻は持たず能力の起動にマナも必要で、そう簡単には無限にトークンを生みだせるカードではない。とはいえ、クリーチャーのコピーを作り出す能力は十分に強力なものだ。コピー・トークンは速攻を持つためすぐさまに攻撃したりタップ能力が使える。このトークンは次のターン終了時には生け贄となってしまうのだが、戦場に出た際や死亡時に誘発する能力を持ったクリーチャーをコピーすることで美味しくアドバンテージを得られる。
楽しいエピソードを持つキキジキを蘇らせた《鏡割りの寓話》で楽しいことをするデッキ、組みたいなと考えていたプレイヤーも少なくなかったのではないかな。今日はまさにうってつけなデッキを紹介しよう!
1 《沼》 1 《山》 4 《憑依された峰》 4 《荒廃踏みの小道》 2 《難破船の湿地》 4 《清水の小道》 3 《嵐削りの海岸》 4 《河川滑りの小道》 2 《目玉の暴君の住処》 1 《バグベアの居住地》 -土地(26)- 4 《税血の収穫者》 2 《墓地の侵入者》 4 《街追いの鑑定人》 3 《指名手配の殺し屋、ラヒルダ》 2 《街裂きの暴君》 -クリーチャー(15)- |
2 《強迫》 2 《炎恵みの稲妻》 2 《電圧のうねり》 2 《削剥》 2 《パワー・ワード・キル》 4 《鏡割りの寓話》 4 《漆月魁渡》 1 《不笑のソリン》 -呪文(19)- |
2 《夜鷲のあさり屋》 2 《マインド・フレイヤー》 2 《無効》 2 《強迫》 2 《軽蔑的な一撃》 1 《魂転移》 3 《食肉鉤虐殺事件》 1 《不笑のソリン》 -サイドボード(15)- |
先日開催された「神河チャンピオンシップ」。決勝ラウンドに進出したジム・デイヴィス/Jim Davisが、アルケミー・ラウンドにて使用したのがこの「グリクシス(青黒赤)キキジキ」だ。初出時は単に「グリクシス・ミッドレンジ」と呼ばれていたが、特徴的な英雄譚が主役であることを伝えるためにも当コラムではキキジキ・デッキとして分類させてもらおう。
スタンダードと共通のカードプールをベースに、能力が調整されたカードとそれに伴う禁止カードの差異、そしてデジタルならではの挙動を誇る専用カードが使用可能とあって、一味違うフォーマットとなっているアルケミー。
そこにキキジキの素晴らしき友と呼べるクリーチャーたちがいる。まずはそのコピーして嬉しいカードから紹介しよう。《街追いの鑑定人》だ!
アルケミー発表当初は他の派手過ぎるカードに埋もれがちで存在感は薄かったものの、実際にプレイしてみてその強さにうならされるタイプの味わい深い1枚だ。
4マナ3/3とサイズは普通ではあるが、接死をちらつかせて相手の攻撃に牽制するナイスブロック役となる。
さらに戦場に出た際に手札を1枚捨てさせるのだが、そのカードは手札を公開せずにデジタルの方で処理される。手札から最もマナ総量が高い1枚を選んで捨てることになるという形だ。こちらがこれを捨てろと指定することはできないが、土地などのマナ総量の低いカードを身代わりに捨てるということを許さずに強いカードを狙い撃ちできるのは素晴らしい。
そしてオマケで血・トークンを生成と、シブい能力がたっぷり詰め合わせだ。
これを《キキジキの鏡像》でコピーして、相手の強い手札を撃ち落としながら血・トークンを並べていく。そうやって相手の手札を削ぎ、こちらはその質を高めるという一方的なゲーム展開こそ、この中速デッキの勝ちパターンだ。
そしてこのコピーを相手ターンに行うということも重要だ。対戦相手が自ターンでドローし、メインに入る前。ドロー・ステップにて引いてきたばかりのカードを、それがインスタントや瞬速持ちでない限り唱えさせる隙を与えずに捨てさせるという魂胆だ。また相手のターンに接死の壁が出てくることも意味合いが大きいね。盤面を喰い止めつつ後続をシャットアウト、鏡砕き殺法を炸裂させよう。
他にも《街裂きの暴君》をコピーし、4/4飛行で空から攻めつつ相手の土地に火をつけて回ったり、《墓地の侵入者》で墓地をむしゃむしゃ喰い尽くしたり、《税血の収穫者》を除去として投げつけ続けたり……《キキジキの鏡像》の対象には困らない。
サイド後は《マインド・フレイヤー》をコピーすることで相手のブロック役をどかし続けたり攻撃をキャンセルし続けたり……あらゆる完封ルートが存在する。
そこに至るまでの時間を稼ぐため、仮想敵はクリーチャー・デッキであるとして各種除去でコントロール。相手の思い通りの盤面づくりをさせずに、こちらはキキジキとコピー元を揃えるのを目指す。
プレインズウォーカーのもたらすアドバンテージはこれを実現してくれる強力な後押しだ。《不笑のソリン》もそうだが、青を足していることで3マナの《漆月魁渡》が使えるのが大きいね。
彼の[+1]で手札入れ替えではなくドローができる、そういう状況を作ることを心がけていれば勝利は自ずと近づいてくるはずだ。
《鏡割りの寓話》はストーリー的にも素晴らしいデザインであり、カードとしてもチャンピオンシップ級のトーナメントで暴れ回るほどのパワフルなものだ。語り継がれたキキジキの物語、時代へと紡ぐのはあなたかもしれないッ!
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