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戦略記事

岩SHOWの「デイリー・デッキ」

戦乱の日本選手権、駆け抜けたるは白単&ボロス・アグロ!(スタンダード)

岩SHOW

 日本国内における久方ぶりのオフラインでの競技イベント、「日本選手権2021 FINAL」がこの2月末に開催された。ここまで来るのに長かった……が、まだまだ戦いはこれからだ。

 今回は招待制トーナメントで参加者は36名。かつて開催されていたグランプリは、誰でも参加可能で3000人ものプレイヤーが一堂に会していたものだ。この規模のイベントが帰ってくる日まで……やれることをやるだけだ。対策を怠らず、健康に生きる! それを続けていれば、あの楽しかったマジックフェストなどの日々が戻ってくると信じて。

 喜ばしいトーナメントの帰還となった日本選手権、そこに集ったデッキもまた喜びを与えてくれた。その喜びとは、スタンダードの豊かさである。36名参加のトーナメントで使用者数最多となったデッキの使用者は……6名。トーナメント全体のわずか6分の1である。分母が少ないのは承知の上だが、このような競技レベルの場でこれだけ被りが少ないスタンダードというのは久しぶりのことである。ざっとアーキタイプで分けられた分布表では、実に17種類ものデッキが確認されている。なんとバラエティ豊かな環境だろう。神河スタンダード、本当に楽しいもんなぁ。

 この豊かな環境において、勝ち組となったアーキタイプは……白いアグロデッキである。前環境の白単の延長線上であり、綺麗に回った時の手の付けられなさは依然としてトップクラスのものだ。

 《スレイベンの守護者、サリア》と《精鋭呪文縛り》のコスト増加コンビで、対戦相手の手を遅れさせて一気に畳みかけるという戦術は、理論上あらゆるデッキに勝ち得るものだ。

 これが長い予選ラウンドを挟んで、決勝ラウンドも長丁場となると、必ずやムラが出てガクッと調子を崩してしまいがち。36名での短期決戦であれば、その悪いムラと遭遇せずにブン回った白いアグロが勝つ。今日の主役が自分なら、デッキが応えてくれるはず!とこのアーキタイプを選択し、集中しながら一手一手をミスなく選択するプレイヤーたちの手腕に、デッキも良い返事をしてくれたようである。

 そんなわけで日本選手権で活躍した白いアグロを紹介だ!

中道 大輔 - 「白単アグロ」
日本選手権2021 FINAL 優勝 / スタンダード (2022年2月26日)[MO] [ARENA]
16 《平地
3 《フロスト・ドラゴンの洞窟
2 《皇国の地、永岩城
3 《這い回るやせ地
-土地(24)-

4 《有望な信徒
4 《堕ちたる者の案内者
4 《剛胆な敵対者
4 《光輝王の野心家
4 《スレイベンの守護者、サリア
4 《精鋭呪文縛り
3 《輝かしい聖戦士、エーデリン
2 《傑士の神、レーデイン
1 《軍団の天使
-クリーチャー(30)-
2 《勇敢な姿勢
4 《放浪皇
-呪文(6)-
4 《粗暴な聖戦士
3 《ガーディアン・オヴ・フェイス
3 《スカイクレイブの亡霊
3 《軍団の天使
1 《冥途灯りの行進
1 《勇敢な姿勢
-サイドボード(15)-

 

 まずは優勝した純正「白単アグロ」から。

 白単は、ことクリーチャーに関しては前環境から顔ぶれは変わらない。サリア&呪文縛りのコスト増加コンビによって相手の足を止めて殴り倒す、複雑なカードはほとんど入っていないシンプルさが売りである。

 《有望な信徒》《堕ちたる者の案内者》と優秀な1マナクリーチャー8枚体制で、1ターン目からノンストップでクリーチャーを展開して最短距離を駆け抜けることを狙っている。

 スタンダードにおいては相変わらず最強クラスの2マナクリーチャー《光輝王の野心家》も環境が変わってもその強さが曇ることはなく、《剛胆な敵対者》とともに小粒なクリーチャーを強化したり《有望な信徒》の能力起動を後押ししたり。

 英雄譚や機体など、信徒で対処可能な強力パーマネントが増えたことで野心家の重要性はより高まったとすら言えるね。

 頭数を増やして自身は高パワーになる《輝かしい聖戦士、エーデリン》、コスト増加組の追加枠であり第2面もシブい仕事をする《傑士の神、レーデイン》、そして白単の抱える手札が切れやすいというシリアス・プロブレムへのアンサー《軍団の天使》……

回転

 サイドボードの《粗暴な聖戦士》や《スカイクレイブの亡霊》といい、前環境のクリーチャーをそのまま使った構成はやっぱり強いなぁと、リストを眺めて改めて。

回転

 そしてこれらクリーチャーでの勝利を後押しするのが、神河からやって来た《放浪皇》である。

 4マナでクリーチャー強化・トークン生成・クリーチャー除去と攻守にわたって活躍するこの1枚。プレインズウォーカーとして見た場合、どの能力も初期忠誠度も、4マナのプレインズウォーカーとして考えた場合は基本的なものかなというところ。

 ただ、起動型能力以外の部分がこのプレインズウォーカーの強さをグイッと引き上げている。瞬速と、それを活かして唱えられた際にインスタントのタイミングで能力を起動できるという、プレインズウォーカーの中でも稀有なトリッキーな性能だ。

 やることは派手ではなく堅実型だが、相手のターンや戦闘中にプレインズウォーカーが飛び出てくるという事実には、毎度プレイされる度にアッと言わされる。4マナを構えてターンを終了してきたら、返しに不用意に攻撃すると彼女によって追放されたり侍によって返り討ちに。あるいは+1/+1カウンターと先制攻撃を得たクリーチャーに計算を狂わされるのもたまったもんじゃない。

 相手が攻撃してきた時に「なんだこの雑な攻撃は」とこちらも適当にブロックしようもんなら、放浪の旅から帰還した彼女の狙いにまんまとハマることになる。

 インスタント・タイミングでのこういった働きをするカードが《勇敢な姿勢》に追加して増えて、しかもシュッと出た後にすぐ対処できなければ他のプレインズウォーカー同様に戦場に居座り続けて確実にゲームを詰めにかかってくる。

 《放浪皇》とクリーチャー化する土地で、白単は長期戦においてもなかなかに強くしぶとくなったのである。

井川 良彦 - 「ボロス・アグロ」
日本選手権2021 FINAL 3位 / スタンダード (2022年2月26日)[MO] [ARENA]
8 《平地
3 《
4 《怒静の交錯
4 《針縁の小道
1 《フロスト・ドラゴンの洞窟
2 《バグベアの居住地
-土地(22)-

4 《有望な信徒
3 《兎電池
4 《光輝王の野心家
4 《スレイベンの守護者、サリア
2 《日金の歩哨
4 《精鋭呪文縛り
3 《輝かしい聖戦士、エーデリン
2 《粗暴な聖戦士
2 《傑士の神、レーデイン
2 《軍団の天使
-クリーチャー(30)-
4 《熊野と渇苛斬の対峙
2 《運命的不在
1 《勇敢な姿勢
1 《髑髏砕きの一撃
-呪文(8)-
4 《スカイクレイブの亡霊
1 《粗暴な聖戦士
1 《傑士の神、レーデイン
2 《軍団の天使
3 《ポータブル・ホール
2 《勇敢な姿勢
2 《スカルドの決戦
-サイドボード(15)-

 

 マジック・プロリーグ(MPL)所属選手・井川良彦の「ボロス・アグロ」は白単をベースに、赤いカードというスパイスで他のデッキと差をつけるオリジナルな逸品。

 「赤単アグロ」などで大車輪の活躍を見せる《熊野と渇苛斬の対峙》を搭載し、1ターン目熊野で1点→2ターン目3/2のサリアが降臨→3ターン目熊野とサリアで攻撃、というパンチの効いた展開を見せつける。

回転

 熊野によりこちらの攻撃を《ひきつり目》《よろめく怪異》でブロックしてしのぎつつ得をしようというプランを防げる点も魅力的だ。

 そして同じく赤の1マナから《兎電池》も採用。

 最序盤はこれ自身が攻撃し、終盤にはエーデリンなどに換装で装備させて速攻で押しまくる。《軍団の天使》とのコンビネーションは対戦相手にとっての悪夢となるだろう。装備品として非クリーチャー化させておくことで《食肉鉤虐殺事件》のような全体除去に巻き込まれずに戦場に残ってくれるのがとても頼もしい。兎さえいれば、コントロールに形勢逆転される前に押し切れる希望が残り続ける。白単の良いところをよりアグレッシブに伸ばしたチューニングは強さと楽しさを兼ね備えている。

 というわけで日本選手権で活躍した白いアグロデッキを紹介させていただいた。これらのデッキが勝ち組になりはしたが、しかしながらスタンダードがこれで攻略されてしまったかというとそんなことはない。

 同トーナメントのデッキ分布のように、このフォーマットはまさに群雄割拠。白単に有利な構成のデッキもあるし、そういったデッキに強いデッキもあったり……しばらくは天下を巡って激しい戦いが続く戦国時代になるに違いない。さあ、君もスタンダードの天下人を目指すべし!

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