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岩SHOWの「デイリー・デッキ」
今週のCool Deck:赤単窯の悪鬼(パウパー)
一寸の虫にも五分の魂、一寸の光陰軽んずべからず、一寸先は闇……いずれもほんの少しの些細なことでも侮ってはいけないという昔の人の教えだ。
一寸とは長さの単位で、約3cm。ちっぽけなものとしてわかりやすいサイズ感だな。昔のクールな人々はその3cmに人生が左右されることを、身をもって体験していたのだろう。僕らも気を付けないとな……マジックで言うなればコモンを笑う者はコモンに泣く、とかそんなところか?
というわけで、私岩SHOWが個人的にこれはクールだと感じたデッキを紹介する毎週金曜日更新の当コーナー、今回はもちろんコモンのお話だ。
コモンというものはまず、その名の通りプレイヤーにとって最もありふれたカードである。パックを剥けばたくさんのコモンが飛び出してくる。
ここで大事なことは、ありふれたもの=弱いという定説は必ずしも当てはまらないということ。もちろん、コモンよりもパックに封入されている数が少ないアンコモンやレア、神話レアの方が強力なカードは多いものではある。リミテッドのことを考えれば、数が多いコモンがレア並みのパワーを持っていては大変なことになってしまうしね。
レアや神話レアは、各セットのメカニズムのより複雑な部分を扱っており、そうなると自ずと強いカードとなってくるものである。対してコモンは、プレイヤーが最も触れるカードとしてメカニズムの入口的な役割を果たす。総じてシンプルなものとなり、つまりは複雑なものよりはカードパワーが落ちてしまう、と。
ただ、それですべてのコモンを構築環境から取り除いて考えていいのかというと決してそんなことはない。シンプルでありながら、だからこそ強いコモンというものもまた、強いレアに負けないくらい多く存在しているのだ。あの最強火力《稲妻》だってコモンなんだぜ。コモンの強さを引き出してこそ、クールなプレイヤーと言えるかもしれない。
そして今回紹介するのは、コモン限定構築である「パウパー」のデッキ! レアよりも強いと言える歴代の強力コモンがひしめく環境で、なんと『イニストラード:真夜中の狩り』『イニストラード:真紅の契り』のコモンが多く使われているという。最新のコモンって、実はかなりやり手なのか?
パウパーのリストから現行スタンダードのコモンの強さを学ぼう、さあCool Deckの始まりだ!
19 《山》
-土地(19)- 4 《窯の悪鬼》 4 《祭り壊し》 4 《火付け射手》 4 《ケッシグの炎吹き》 -クリーチャー(16)- |
4 《変異原性の成長》 4 《稲妻》 4 《溶岩の投げ矢》 4 《祖先の怒り》 1 《信仰無き物あさり》 2 《使徒の祝福》 4 《無謀なる衝動》 1 《ティムールの激闘》 1 《火炎破》 -呪文(25)- |
2 《電謀》 2 《紅蓮破》 4 《粉々》 2 《使徒の祝福》 2 《浄化の野火》 1 《ティムールの激闘》 1 《焦熱の連続砲撃》 1 《火炎破》 -サイドボード(15)- |
このクールなデッキは?
その昔、マジックで最も強いカードは?という質問に対して「《島》あるいは《山》」というアンサーが格言のように根付いていた時期があった。その最強カード候補《山》のみで構成されたクールなマナ基盤、そうこれはこじゃれた非基本土地など不要なパウパーの赤単デッキだ。
先ほども挙げた《稲妻》はまさしく最強コモンと言えるだろう、1マナで3点ダメージ! これがプレイヤーに飛ぶのだからクール極まる。
これはそんなプレイヤーにダメージを与える火力にあふれたバーンデッキ!……とは一味違う。最近の火力のデザインはクリーチャーやプレインズウォーカーにダメージを与える、いわゆる除去に限定されたもので、プレイヤーにダメージを与えられるものはかなり数を減らしている傾向にある。この秋リリースされた二大イニストラードに収録されたコモンでも、プレイヤーのライフを減らすのに優れた火力というものは見当たらなかった。
だがしかし、これらのセットの赤には「インスタントとソーサリーの手数で戦う」というテーマが割り振られており、コモンにはそのメカニズムの入口となるカードが多く見られた。そしてそれらのコモンが優秀であったがゆえに、このリストが誕生したのだ。このデッキの名は「赤単窯の悪鬼」!
どこがどうクールなのか?
クールポイントその1:自分自身が火種になれ
《窯の悪鬼》は歴史ある1枚で、その初出時から高い人気を誇っていた。2マナ1/2と一寸のクリーチャーが、インスタント or ソーサリーを唱えるとパワーが3上昇。この上昇値は無視できないもので、軽量のインスタント&ソーサリーをバンバン連打して大ダメージを狙う、オールイン系デッキの主役として一部のプレイヤーからこの上なく愛されているクールなエレメンタルだ。
最近のセットで登場したのが、これの後継機というか調整版である《祭り壊し》。
パワーの上昇値は2で抑えられているが、それでも十分と言えば十分。タフネスが3に上昇している点はプラスと見ることもできる。《窯の悪鬼》がこれで実質8枚体制になったことで、パウパーにおいてより完成度の高いデッキへと昇華したというわけである。
そう、このデッキは悪鬼&壊しを展開した後に《稲妻》などをありったけ撃ち込んで、パワーの大きく上昇した二大アタッカーで対戦相手のライフを瞬く間に削り切る、大胆極まるクールなデッキなのである。
そしてこれらパワー上昇する悪鬼組と別のアプローチで、インスタントとソーサリーの連打を肯定するのが《火付け射手》。
それら非クリーチャー呪文を唱えることで、対戦相手に1点のダメージを与える。ダメージが低い火力も、これで威力を底上げすれば十分に使いものになるってわけ。
で、この射手のポジションにも同等の役割を担う《ケッシグの炎吹き》が新入りとしてやってきた。タフネスが3あってブロック役もできる頼もしいやつなのだ。
というわけでこれら4種16枚、以前よりも分厚いクリーチャー陣で組めるようになったことで、《窯の悪鬼》デッキは今、暴れ出そうとしているッ! コモン火力が足りなくとも、その穴を埋めるコモンクリーチャーは超優秀だ!
クールポイントその2:連打に懸けた呪文構成
《窯の悪鬼》デッキでは昔から重要視されているのが、とにかく非クリーチャー呪文を連打できる構成にすること。毎ターン1回ずつ動いて誘発させて、というのでも悪くはないが…可能な限り早く決着したいデッキなので、1ターンの行動回数をいかに増やすか、連打こそが勝利の鍵なのである。
その点最強と言える呪文候補がファイレクシア・マナを使うもの。《変異原性の成長》はライフを2点支払えばマナなしで唱えられて、クリーチャーを強化して戦闘ダメージを2点引き上げる。同時に上記のクリーチャーの能力が誘発すると考えると、マナなしでこの呪文がどれだけのダメージを叩き出すか恐ろしくなる。
《使徒の祝福》はライフを支払ってもなお1マナ必要だが、これでプロテクションをつけて悪鬼たちの攻撃をブロック不可にすることで確実な決着を実現する。もちろん、オールインした際に除去されると脆いという悪鬼デッキの弱点もしっかりカバー。
《稲妻》以外の火力にも注目。《溶岩の投げ矢》はダメージこそ1点と一寸ではあるが、このカードのフラッシュバックコストはマナが要らない。山を生け贄に捧げて、クリーチャーの能力をクールに誘発させよう。
《火炎破》も山2枚を切って投げつけ、瞬殺を演出だ。
これら非クリーチャー呪文群にも、新しいセットのカードが採用されて活躍している。《祖先の怒り》は1マナでトランプルを付与、悪鬼にはこれがかなり嬉しい。
そしてパワーを1上昇させ、墓地の同名カード分さらにプラスの修整が加わる。これ自身を連打しても良いし、複数手札にあるなら《信仰無き物あさり》で捨てても良いね。何より肝心なのが、この呪文にはオマケで1枚ドローがついてくるということ! 悪鬼デッキにとって、動いても手札が減らないということは何よりもクールなこと。それのコストが1マナなら、もう何も言うことはない。
さらに手数を増やすカードとして、疑似ドローの《無謀なる衝動》の参入も熱い。
手札1枚が2回の行動に繋がり、しかも唱えたターンとその次のターンまでそれらが使えると、使用期限も長めだ。2マナで実質2枚ドローと考えれば、これはコモンの《表現の反復》であると言っても決して過言ではないのだ。
これらの呪文で1ターンの行動回数で大きな差をつけて、その手数でクリーチャーたちの火種に着火して一気に押し切ろう!
さらなるクールのために
《窯の悪鬼》は実は『ヒストリック・アンソロジー1』に収録されている。つまり、このデッキの中核を担うクリーチャーはすべてヒストリックで使用可能だ。
非クリーチャー呪文の大半は同フォーマットにはないのだが、逆に考えればコモンに限らずレアやアンコモンも使えるので、同じ精神性でよりできることが複雑化したデッキを組もうと思えば組める。ぜひともヒストリック好きなプレイヤーの手で、それをクールに実現させてほしいね。
クールなまとめ
最新セットの赤いコモンは、強力なコモンがひしめくパウパーでも存在感を発揮し、名カード《窯の悪鬼》に再びスポットライトを当てることに成功した。これらのコモンがいまスタンダードにいるという事実。カードを見直せば、まだ組まれていない環境の新しいデッキを形にできるかもしれない。
一寸のコモンから、輝ける明日へ。それでは今週はここまで。Stay cool! Let's burn with commons!
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