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戦略記事

岩SHOWの「デイリー・デッキ」

今週のCool Deck:ハイブマインド(レガシー)

岩SHOW

 同じ勝利でもクールな勝ち方がしたい。こう思うのはゲーマーとして、マジックプレイヤーとして自然な欲求だ。

 マジックのルール的には、(1対1の対戦であれば)「対戦相手のライフが0以下になる」「対戦相手がライブラリーに残っているよりも多いカードを引くことを求められる」というのが主な勝利条件であり、あらゆるデッキがあの手この手でこれを達成しようと工夫を凝らしている。

 そんな中、イレギュラーというか通常の勝利条件では満足しない反骨精神というか、上記2つに当てはまらない方法で勝ちに行くデッキというのも存在している。特殊な勝利条件を持つカード、あるいは対戦相手を直接的に敗北させるというカードの数々。それらを用いて勝つのは、このゲームに華を添えるクール要素。つまりは特殊な勝ち、あるいは敗北させることを狙うのはクールデッキである!

 そんなわけで毎週金曜日、僕が独断でチョイスした「これはクールだ」と思えるデッキを紹介する「今週のCool Deck」のコーナー。今日はもちろん特殊勝利を目指すデッキになるわけだが……マジックには上述の「こちらが勝利する」「対戦相手を敗北させる」カードに加えてもうひとつ、「こちらが敗北する」カードが存在する。カードの持つデメリットとして、特定の状況下でプレイヤーを敗北させるというカードもまたマジック史では決して珍しいものではない。これらを使って敗北するというのはクール……ではないのだが、これは真のクールに繋がる扉でもある。

 どういうことかって? 君の敗北を、相手にそっくりくれてやるのさ。

Andrew Maag - 「ハイブマインド」
ELD's Open @ Bellingham (MA) / レガシー (2021年11月6日)[MO] [ARENA]
7 《
1 《溢れかえる岸辺
3 《汚染された三角州
1 《沸騰する小湖
3 《霧深い雨林
4 《古えの墳墓
1 《裏切り者の都

-土地(20)-


-クリーチャー(0)-
4 《否定の契約
4 《タイタンの契約
1 《殺戮の契約
4 《渦まく知識
4 《思案
3 《定業
3 《もみ消し
2 《厳かなモノリス
4 《実物提示教育
4 《突然の置換
4 《意志の力
4 《集団意識

-呪文(41)-
2 《禁忌の果樹園
4 《激しい叱責
2 《残響する真実
4 《神聖の力線
3 《虚空の力線

-サイドボード(15)-
mtgtop8 より引用)
このクールなデッキは?

 見慣れないプレイヤーもいるかもしれないが、レガシーにおいては歴史あるコンボデッキ。その名は「ハイブマインド」、キーカード《集団意識》がその由来。

 この6マナというヘビー級のエンチャント、戦場に出すために《実物提示教育》や《古えの墳墓》《厳かなモノリス》を用いる。

 肝心の能力はプレイヤーがインスタントかソーサリーを唱えるたびに、他のプレイヤーにもその呪文をコピーさせるという、他のカードでは目にしたことのないクールなテキストを持っている。つまり、対戦相手がドロー呪文を唱えたらこっちもドロー、除去呪文を唱えたらこっちも除去、打ち消しを唱えたらそれをコピーして打ち消し返し……と、設置できればかなりクールな働きが期待できる。

 ただこのエンチャントの本領は……もっともっとクールに用いることで発揮される。驚きのコンボをご覧あれ!

どこがどうクールなのか?

クールポイントその1:集団契約、支払いは君から

 《集団意識》のテキストをもう一度見返してみよう。そこには「プレイヤーが」と書かれていることに気付くだろう。そう、このエンチャントは置いたこちらがインスタントかソーサリーを唱えた場合にも誘発するのだ。

 え、青ってインスタントとソーサリーが要で、それを相手にコピーさせてどうするの?と、一見デメリットにさえ見えるこの効果範囲。対戦相手だけなら使えたのになぁと思うのはちょっと待った。こちらの呪文を対戦相手がコピーする、それが良いのだ。

 もうお分かりの通り、冒頭で述べた、自身を敗北させる呪文を唱えてこれを対戦相手にコピーさせ、強引に負けさせるという逆転の発想だ。そのために用いるのが…『未来予知』に収録された契約サイクルだ。

 契約サイクルは各色に存在し、そのコストは{0}。それで4/4のトークンを得たりクリーチャー破壊したり打ち消したりできるのだが、それで終わるわけはもちろんなく、次の自分のアップキープに所定のマナの支払いを求められる。これを支払わなければゲームに敗北となるわけで……《集団意識》設置からすかさず契約を{0}で唱え、対戦相手にこれをコピーさせる。そのままターン終了すれば、相手のアップキープに契約の代償を求められてジ・エンドという算段だ。

 大体《タイタンの契約》を唱えればそのコストが支払えなくて敗北する相手がほとんどなのだが、これを支払える状況であればタイタンを連打したり、《殺戮の契約》を重ねたり、《否定の契約》を無理やり使わせるなどして敗北をもたらしてやろう。

 《否定の契約》は《集団意識》やそれを出す《実物提示教育》を巡る打ち消し合戦においても役立つ。《集団意識》からの契約で勝ってしまうので、次の自分のターンの到来を恐れずに脅威の{0}コストノーリスクの打ち消しとして叩きつけていこう。

 また、《集団意識》設置後に契約を対戦相手が打ち消そうとしても、こちらにその打ち消しのコピーが発生するので全くの無駄でもある。つまり、青いデッキに対して強く戦えるクールなコンボデッキなんだな。

クールポイントその2:もうひとつの集団意識

 《集団意識》と契約のクールなコンボは、それらが出そろった頃からコンボデッキとして誕生し、もうかれこれ10年以上の歴史がある。

 レガシーにおいてもこのオンリーワンの勝ち味を好むプレイヤーにより永らく使われているが、ちょっとした弱点というか……デッキの安定感が落ちるポイントとして《集団意識》への依存度の高さが挙げられる。

 一応、このエンチャントを引けなかったり捨てさせられたりした時のために《もみ消し》を採用。

 契約の支払いをこれで打ち消してなかったことにしつつ、巨人・トークンで殴るという勝ちパターンもあるが……結構厳しいよね。

 デッキ内には同様の役目を果たすカードがあればあるほどクールというのがコンボデッキの鉄則だが、《集団意識》のようなあまりにもエッジの効いたクールなデザインは他で替えがきかない……と、考えていた時期が僕にもありました。

 いや~クールなプレイヤーたちは気付いているんだね。僕はその存在を全く知らなかったカード、《突然の置換》の登場だ。

 『統率者(2019年版)』にのみ収録されているカードで、唱えられて解決されていない呪文と、戦場にいるクリーチャーのコントロールを交換するという他に類を見ないインスタントだ。刹那がついているので打ち消しなどで対処されることもなく、唱えたら確定で交換を行えるのが強い。

 そう、このカードを用いて相手のクリーチャーとこちらの契約のコントロールを交換し、無理やりに契約を押し付けて勝利する、これが第2の《集団意識》だ!

 いやー、クールすぎる。2マナ土地を用いれば3ターン目に決められる、唱えれば契約確定な鬼のコンボ。こうなってくるとある意味こちらの方が《集団意識》よりも主役かもしれないね。

クールテクニック!

 サイドボードの《禁忌の果樹園》、何に使うのかというとノンクリーチャーデッキに対して《突然の置換》を機能させるために無理やりクリーチャーを提供するという……なんともクールなチョイスじゃないか。ヴィンテージの《ドルイドの誓い》みたいだな。

 同じくサイド、クリーチャーコンボなどへの対策としての《激しい叱責》もターン終了時に生け贄に捧げられるという能力を《もみ消し》することで延命させられるので、いざという時には狙ってみよう。

クールなまとめ

 自身が敗北するという、マジックにおいて最も受けたくない効果を押し付ける《集団意識》《突然の置換》と契約とのコンボ。マジックにはこんなクールなコンボがまだまだ存在する。

 未だ見ぬカード、未だ見ぬデッキ、未だ体験していないクール。それを求めて、今日もマジック活動開始だ。それじゃあ今週はここまで。Stay cool! Free your mind!!

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