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岩SHOWの「デイリー・デッキ」
ゴルガリ・フード:2色の安定感、悪魔の代役もバッチリ(ヒストリック)
足すことでたどり着く境地もあれば、引くことで新発見に至ることもある。
マジックは各色ごとにできること、得意なことがある。単色のデッキよりは、そこに色を足したデッキの方がやれることは拡がる。さらに2色から3色となると、それぞれの色ができないことは大方カバーし、得意なことをさらに伸ばしたデッキに仕上がるだろう。
たとえばヒストリック。この環境の3色デッキと言えば……ジャンド。黒赤緑、マジックにおける攻撃性が凝縮されたカラーリングだ。
ジャンドの最大手は「ジャンド・サクリファイス」、その名の通り生け贄系デッキで、その中でも主たる形は「ジャンド・フード」。食物をさまざまな方法で生け贄に捧げ《パンくずの道標》で絶え間なくアドバンテージを取るのを得意とする。
パンくずや《金のガチョウ》の緑、《大釜の使い魔》の黒で食物エンジンを形成しており、第3の色・赤は《波乱の悪魔》《フェイに呪われた王、コルヴォルド》のためのものである。
特に《波乱の悪魔》は使い魔と食物がグルグル回ること1点ダメージを何度もばら撒く、マシンガンのような役目を果たす。これで対戦相手のクリーチャーやプレインズウォーカーを除去したり、対戦相手のライフを詰めていくのである。ジャンドならではの1枚で、象徴とも言えるだろう。
このジャンド=《波乱の悪魔》に別れを告げるというアプローチがここ最近見られるようになった。引き算の時間である。ジャンドの弱点として、いかにヒストリックの土地が優れていようともマナのトラブルは発生する点が無視できない。特に赤マナが得にくく、悪魔を持っているのに出すターンが遅れてしまうことがある。強力な武器が弱点になってしまっているというのは皮肉なものである。まあきちんと土地を引ければ問題はないのだが……と。
そういった若干の不安定さを排除するために、赤を抜いて黒緑2色=ゴルガリにするというのは理にかなった選択である。ただ、《波乱の悪魔》ほどパワフルなカードをデッキから除外するのももったいないというか、「ゴルガリ・フード」になってただ安定するだけでデッキパワーが下がってはそれはそれで……というね。
ただ、これは杞憂なようだ。悪魔がいなくても除去力・そしてダメージを刻む力は黒緑2色で十分まかなえる。それでは流行りだしたリストを見てみよう!
2 《沼》 4 《草むした墓》 2 《花盛りの湿地》 4 《闇孔の小道》 4 《荒廃踏みの小道》 4 《カルニの庭》 2 《ファイレクシアの塔》 -土地(22)- 4 《大釜の使い魔》 4 《金のガチョウ》 4 《貪欲なるリス》 2 《よろめく怪異》 1 《嘘の神、ヴァルキー》 -クリーチャー(15)- |
4 《魔女のかまど》 3 《致命的な一押し》 3 《村の儀式》 1 《骨の破片》 4 《命取りの論争》 4 《パンくずの道標》 4 《食肉鉤虐殺事件》 -呪文(23)- |
1 《夢の巣のルールス》
-相棒(1)- 2 《魂標ランタン》 3 《思考囲い》 1 《致命的な一押し》 2 《大群への給餌》 2 《魔女の復讐》 1 《大渦の脈動》 2 《定命の槍》 1 《一族の暴行》 -サイドボード(14)- |
《波乱の悪魔》を使わないことでまず得られる恩恵がリストを見て一目でわかる。《夢の巣のルールス》という相棒だ。
これを用いるのであればマナ総量が3以上のパーマネントは使えないので、そうしたカードが使いたいから赤を足しているジャンドとは無縁のカードってわけだ。
ルールスによって序盤に除去されたガチョウや生け贄に捧げたクリーチャーを使いまわせるのはもちろん、デッキの核とも言える《魔女のかまど》が破壊されたり捨てさせられたりしても回収できるという点はかなり安心感がある。
ルールスがいる以外はデッキの基本的な動きはジャンドに準ずる。ガチョウでマナを伸ばしながら《魔女のかまど》《大釜の使い魔》のセットを揃えて、対戦相手の攻撃をブロックしつつ生け贄に捧げ、食物を生け贄に使い魔を戻すという工程を繰り返し、のらりくらりと攻勢を受け流していく。
その際に《パンくずの道標》があれば手札を補充し、《貪欲なるリス》がいればこれのサイズを大きくしていって徐々に優勢に転じていく。
肝心の除去能力を担っていた《波乱の悪魔》の代わりは……このデッキのキーカード《食肉鉤虐殺事件》だ。
1点ずつ与えてコツコツ潰していく悪魔と異なり、ドバッと一気に戦場を掃除する全体除去である。これの{X}にはガチョウや《よろめく怪異》《命取りの論争》で得た宝物、そして《ファイレクシアの塔》とマナ加速が豊富なので十分な値を支払うことが可能になっている。対戦相手のクリーチャーが死亡するとライフを得られるので、流してもライフがほとんど残ってなくてダメ押しで負けるという事態も回避できるのが強みだ。
そしてこの虐殺事件、何が凄いかってこちらのクリーチャーが死亡した際には対戦相手のライフを1点失わせるところ。これが悪魔の代わりに相手のライフを削り落とすフィニッシャーとなるのだ。使い魔かまどコンボを1回転させれば、相手は2点のライフを失ってこちらは1点回復することになる。これを毎ターン積み重ねたら、そしてかまどが複数枚並んでしまったら……恐るべき速度でライフの差が開いていくことだろう。
実際にプレイしていて、アグロデッキ相手にどれだけ押されていても虐殺事件でリセットして使い魔をかまどで戻しているだけで、あっという間に逆転してしまうのだからその強さに怖くなってくる。クリーチャーをあまり展開してこないデッキ相手には虐殺事件をX=0で置いてダメージ源としてのみ用いるという使い方があることを忘れずに。
もちろんわざと自分のクリーチャーを流し去って相手のライフを0にするというフィニッシュも度々起こる。《カルニの庭》が入っているのはこういうフィニッシュを演出しつつ、《村の儀式》《命取りの論争》の餌にするためだ。
しつこいアグロにはルールスで虐殺事件を唱えなおしてとどめを刺そう。伝説というデメリットも、2枚目が勝手に墓地に落ちるので工夫せずにルールスで使い回せるというメリットに捉えることができるね。
ジャンドの《波乱の悪魔》の強さ、ゴルガリの《食肉鉤虐殺事件》の強さ、それぞれに良さがある。ずっとジャンドでフード・デッキをプレイしていた、あるいは土地が揃えられない理由で諦めていた、そんなプレイヤーにはゴルガリを試してみてほしい。シンプルにまとまっていて、それでいて引き出しも多く、気が付けば逆転している粘り強さ。そして2色の安定感。これ、なかなかヤミツキになってしまうデッキだな。
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