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岩SHOWの「デイリー・デッキ」
ジャンド・ウルヴズ(パイオニア)
各種配信などでマジックのゲームを見ている時、プレイヤーや実況解説、あるいは視聴者から「○○の隠された能力が……!」といった類のコメントが飛び出すことがある。
実際問題、カードには能力がきちんと書かれているので隠れた能力などというものはない。まあ当たり前だわな(笑)。
ただ、なぜこんなことを皆が口にするのかというと……まず、マジックのカードには能力が豊富に与えられているものがある。カードテキスト一杯に文字がギッシリ、《探索する獣》なんかはその典型だね。
この獣、能力が多すぎて「戦闘ダメージが軽減できなくなる」という能力が忘れられがちである。そもそもダメージが軽減されるシチュエーションが今日のマジックでは少ないので、この能力を体験する瞬間が稀有だ。
なのそういった能力を持っていることを忘れて、というかそもそもほぼ知らずプロテクション(緑)を持っているクリーチャーでこれをブロックして討ち取られる、という事態が起こったりする。こういう時こそがまさしく隠されし能力が火を噴いた瞬間だ。きちんとカードテキストを読んでいれば起きないことなので、しっかりケアすれば避けられるミスではある。
ただ、個人的にはこういったミスや驚きもまたマジックの楽しい瞬間であると考えている。対戦相手が見慣れたカードを出してきた時、あ~はいはい、と思っていたら想定していない事態になってえっ!? というあの瞬間。うわこんな能力も持ってたなぁそういえばという感動。マジック歴がある程度伸びたプレイヤーならではのものかもしれないね。
つい先日もそういった感動というか、ずっと活きなかった能力が輝いたカードを見つけた。パイオニアのデッキリストを交えて紹介しよう。
3 《森》 3 《山》 4 《踏み鳴らされる地》 3 《岩山被りの小道》 4 《草むした墓》 3 《森林の墓地》 3 《屍花の交錯》 -土地(23)- 4 《ラノワールのエルフ》 3 《エルフの神秘家》 3 《群れ率いの人狼》 4 《無謀な嵐探し》 3 《不吉な首領、トヴォラー》 2 《墓地の侵入者》 2 《残忍な騎士》 4 《夜群れの伏兵》 -クリーチャー(25)- |
4 《血の長の渇き》 3 《レンジャー・クラス》 3 《群れの希望、アーリン》 1 《呪われた狩人、ガラク》 1 《秘宝探究者、ヴラスカ》 -呪文(12)- |
3 《強迫》 1 《致命的な一押し》 3 《丸焼き》 2 《自然への回帰》 3 《真っ白》 3 《影の評決》 -サイドボード(15)- |
ジャンド(黒赤緑)カラーのクリーチャー主体デッキ、25枚のクリーチャーカードのうち半数の12枚が狼男。狼男の攻撃が通ると1枚ドローの《不吉な首領、トヴォラー》がいるのも見ると狼男がこのデッキの主役なのがよくわかる。
で、一体何が隠された能力かというと……《夜群れの伏兵》だ。
このカード、スタンダードにて使えた時には瞬速なのを活かし、対戦相手のターンにシュッと戦場に出したら以降はインスタントと瞬速を構えて自分のターンには動かず、伏兵の能力で3/3の狼を得続けて盤面を支配。伏兵への除去などは打ち消す、という青緑の「シミック・フラッシュ」というデッキで一時代を築いた。ヒストリックでも同デッキを組めるので今日でも目にすることはあるだろう。
で、この強力な名カード《夜群れの伏兵》。一体何が隠されているのかというと……その能力で+1/+1修整を受けるのは、狼だけでなく狼男も含むという点だ。
これ、初見の人は「そう書いてあるからそうでしょう」と思うのだろうけども、スタンダード現役当時には同環境に狼男カードが1枚もなかった。なのでこれで狼が強化されるのは経験しているが、狼男も強化されているという状況を体験したプレイヤーというのは圧倒的に少ないのだ。
そんなわけで狼男デッキでも強力なシナジーを形成する《夜群れの伏兵》と各種狼男が合わさったのが「ジャンド・ウルヴズ」だ。
伏兵はただ狼男を強化するだけでなく、瞬速という能力も噛み合っている。狼男たちが持つ日暮能力で戦場が昼になった後、この伏兵を構えて自ターンを終えて夜を迎える。そうしながらも浮かせたマナを無駄にせず強力なクリーチャーを出せるという完璧な噛み合いを見せてくれるのだ。
狼・トークンもまた《不吉な首領、トヴォラー》のドローを加速させると、なんともまあ綺麗なシナジーだこと。
速攻で詰めていく《無謀な嵐探し》、変身はしないが素のサイズとドローが優秀な《群れ率いの人狼》と狼男陣は精鋭揃い。
そこに黒を足して《墓地の侵入者》も採用しているのがぬかりない。
この黒の狼男は墓地対策として非常に優秀、相手が自分の墓地を利用しないデッキであってもとりあえずクリーチャー・カードを追放すればライフ差を広げられるので見た目よりもずっと早く相手のライフを削ってくれることだろう。護法もまたシビアな条件で相手が苦い顔をするタイプの仕事人だ。
さらに狼シナジーとして《呪われた狩人、ガラク》も使えるのはマニアとしては嬉しいところ。
《レンジャー・クラス》《群れの希望、アーリン》と併せて狼・トークンをばら撒き、伏兵でまとめて強化する横並び戦術も強烈だ。
もちろん、黒を足したことで除去やサイドボードも赤緑2色よりも強いものが扱える。2色土地が揃っているパイオニアならではの3色構成だね。
《夜群れの伏兵》は狼だけでなく狼男も強化する。これを経験したことがない人はここで覚えて今後に活かしてくれれば幸いだ。これから先の狼に関するカードは狼男にも影響する、また逆も然りというデザインになりそうなので、そこを意識しておけばうっかりテキスト勘違いは未然に防げるだろう。
こんな具合に、実は今輝きうる能力を持っているのに誰も気づかずにスルーされているカードというのはありそうだ。各環境のカードプール、今こそ振り返ってみる時なのかもしれないなぁ。
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