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岩SHOWの「デイリー・デッキ」
天啓こそスタンダードの中心。世界選手権・決勝ラウンド青赤デッキの振り返り(スタンダード)
世界選手権でチェコ勢が使用を検討していたデッキをオンドレイ・ストラスキー/Ondřej Stráskýが公開したことで世に知られることになった「ディミーア・デミリッチ」の紹介から始まった流れで、今回もデミ……ではなく。今回は実際にチェコ勢が使用したデッキを紹介しよう。
ストラスキーは予選ラウンドを無敗という圧巻の成績で駆け抜け決勝ラウンドに駒を進めた。その躍動を支えたデッキがこれだ。
(以下、デッキリストは 第27回マジック世界選手権 トップ4プレイヤーとデッキリスト より)
7 《山》 5 《島》 3 《凍沸の交錯》 4 《河川滑りの小道》 2 《ストーム・ジャイアントの聖堂》 2 《廃墟の地》 -土地(23)- -クリーチャー(0)- |
3 《消えゆく希望》 1 《棘平原の危険》 4 《感電の反復》 3 《表現の反復》 3 《ジュワー島の撹乱》 2 《才能の試験》 4 《ゼロ除算》 2 《悪魔の稲妻》 4 《予想外の授かり物》 2 《記憶の氾濫》 3 《家の焼き払い》 4 《アールンドの天啓》 2 《髑髏砕きの一撃》 -呪文(37)- |
3 《くすぶる卵》 2 《心悪しき隠遁者》 2 《黄金架のドラゴン》 1 《棘平原の危険》 3 《バーニング・ハンズ》 1 《環境科学》 1 《才能の試験》 1 《アルカイックの教え》 1 《マスコット展示会》 -サイドボード(15)- |
「イゼット(青赤)天啓」。このデッキのゴールはデッキ名にもある《アールンドの天啓》。
クリーチャーを出しつつ追加ターンを得る、抜群のカードパワーを誇るソーサリーだ。これを連打できれば飛行持ちを並べつつそれで攻撃し続けられる――対戦相手に自由を許さずに。
この一方的なゲーム展開は普通にカードを引いていても起こり得るが、4枚しかないカードを毎度複数枚引くことができるかというと確実性は薄い。
そこで用いるのが《感電の反復》。
これの後に唱えたインスタントかソーサリーをコピーする、この2マナインスタントの力を借りて天啓を連打。追加ターンの中でドロー呪文で掘り進めてさらなる天啓に繋げる……そんな絶対的な勝利を追求したデッキである。
天啓+反復で合計9マナ、予顕経由でも8マナとそこそこのマナが必要になってくる。そこに至るまでの時間はコントロールデッキとして立ち回り下準備することになる。
《ジュワー島の撹乱》《才能の試験》《ゼロ除算》で対戦相手に自由に呪文を唱えさせず、《消えゆく希望》《悪魔の稲妻》などでクリーチャー除去することで時間稼ぎ。
まああんまりのんびりやっていると攻め切られてしまうというのもあるので、地道にコントロールするだけでなく近道も狙っていく。そのために用いるのが天啓とのコンボパーツである《感電の反復》である。デッキ内のカードは何でもコピーできるので、除去や打ち消しを増やしてコントロール力を高めるのも良いが……《予想外の授かり物》をコピーするととんでもないことに。
手札を1枚捨てて2枚ドローと宝物2個生成、そしてコピーの分は手札を捨てなくてよいので純粋に2枚ドローとさらに宝物2個。使えるマナも手札もたっぷり増える。
そして《感電の反復》はフラッシュバック持ちなので、墓地に落ちている状態で天啓を引いてきたらそのままコンボで追加ターン祭りの始まりに持っていけるというわけだ。
全体除去カードである《家の焼き払い》もコピーする価値がある。
除去だけでなく速攻のデビル・トークンを生成するモードを選んで、一気に相手のライフを削りに行く。追加ターン内で勝負を決めるためにこのモードを選択し、コピーしてめちゃくちゃにしてやるのがこのデッキの流儀。
1 《島》 2 《山》 4 《河川滑りの小道》 3 《難破船の湿地》 3 《清水の小道》 4 《憑依された峰》 4 《荒廃踏みの小道》 2 《ストーム・ジャイアントの聖堂》 -土地(23)- 1 《くすぶる卵》 3 《溺神の信奉者、リーア》 -クリーチャー(4)- |
4 《消えゆく希望》 2 《強迫》 2 《棘平原の危険》 1 《血の長の渇き》 4 《表現の反復》 2 《感電の反復》 2 《ジュワー島の撹乱》 1 《安堵の火葬》 1 《燃えがら地獄》 1 《パワー・ワード・キル》 3 《セレスタス》 1 《悪魔の稲妻》 1 《プリズマリの命令》 3 《記憶の氾濫》 1 《家の焼き払い》 4 《アールンドの天啓》 -呪文(33)- |
4 《心悪しき隠遁者》 2 《マインド・フレイヤー》 3 《竜巻の召喚士》 1 《強迫》 1 《パワー・ワード・キル》 2 《真っ白》 1 《魂の粉砕》 1 《予想外の授かり物》 -サイドボード(15)- |
こちらは同じく世界選手権で予選ラウンドを勝ち抜いたヤン・メルケル/Jan Merkelの「グリクシス天啓」、青赤に黒が足される形だ。
黒が入ることで《パワー・ワード・キル》《血の長の渇き》といった確定でクリーチャーを破壊できる除去が取れるようになるが、それ以上の利点が手札破壊を使えるようになること。
天啓同型において手札の枚数及びその中に打ち消しがどれだけあるかは勝負を決定づける要素であり、その枚数を削る《真っ白》やピンポイントで打ち消しを抜き去る《強迫》は非常に効果的だ。
これらを《溺神の信奉者、リーア》でフラッシュバックし、手札をごっそり落として差をつけるというのがこのリストの狙いであり、同じ天啓デッキでもアプローチは大きく異なる。《感電の反復》の枚数差からも、よりコンボを重視したイゼット、イゼット殺しを意識したグリクシスとその違いがはっきりと分かる。
これら天啓デッキが睨み合う世界選手権決勝ラウンドを制し、世界王者となったのが高橋優太なのは大々的に報道されたこともあって皆さんもよく知るところだろう。
彼が用いたデッキもイゼットカラーであり、《アールンドの天啓》が採用されている。ただ上記2つとはその様相が大きく異なる。
7 《島》 4 《山》 3 《凍沸の交錯》 4 《河川滑りの小道》 2 《ストーム・ジャイアントの聖堂》 -土地(20)- 4 《くすぶる卵》 4 《黄金架のドラゴン》 -クリーチャー(8)- |
1 《消えゆく希望》 1 《棘平原の危険》 4 《ドラゴンの火》 4 《表現の反復》 3 《ジュワー島の撹乱》 2 《轟く叱責》 1 《否認》 2 《ゼロ除算》 1 《雲散霧消》 1 《プリズマリの命令》 1 《襲来の予測》 4 《記憶の氾濫》 3 《アールンドの天啓》 4 《髑髏砕きの一撃》 -呪文(32)- |
4 《心悪しき隠遁者》 1 《消えゆく希望》 3 《バーニング・ハンズ》 2 《燃えがら地獄》 1 《プリズマリの命令》 1 《白熱する議論》 1 《環境科学》 1 《才能の試験》 1 《マスコット展示会》 -サイドボード(15)- |
こちらは「イゼット・ドラゴン」である。《黄金架のドラゴン》と《くすぶる卵》が変身した《灰口のドラゴン》で勝つことを狙っており、これらドラゴンが主役なのを活かして《ドラゴンの火》というタフネス4にも対処可能な除去を用いているのがその特徴だ。
対戦相手の展開に対してインスタントとソーサリーの手数で対抗、ドラゴンたちで息つく暇を与えず殴り切る。《くすぶる卵》が天啓で一発で変身し、黄金架の宝物が天啓を唱えることを後押しすると、ドラゴンたちと天啓の相性もバッチリ。
手数で勝負する際に重要な打ち消し呪文は、種類をなるべく多く散らして採用している形。これはリストが公開される世界選手権というフォーマットにおいて、今この状況で一体何を構えているのかを読まれにくくするための工夫。このリストを相手にカードを予顕されると、対戦相手はそれが《アールンドの天啓》なのか? それとも1枚だけの《襲来の予測》なのか? 予測だった場合には慎重に動かねばならないが、天啓だった場合はそれをケアしなくては……と大いに惑わされることになる。
世界の頂点を巡る戦いは、《アールンドの天啓》をどう唱えるか・あるいはいかに対策するかという勝負であった。スタンダードを代表するこのパワーカード、これからもますます環境の中心で渦を巻く存在となるだろう。
そして『イニストラード:真紅の契り』がやってくる。一体どのような化学反応が起きるのか。この秋、実際にその目で見届けてほしい。
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