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岩SHOWの「デイリー・デッキ」
今週のCool Deck:クールというものを《考慮》する(ヒストリック)
クールとは決して大げさな物事ばかりを指すわけではない、ほんの些細なことが本当にクールだったりするものだ。
ハリウッドスターなんかがこういうこと言うとクールなんだろうけど、僕が言っても弱いなぁ、まだまだノット・クールだ。
というわけで皆の金曜を彩るかもしれないクールなデッキを毎週取り上げていく当コーナー。今週はついに『イニストラード:真夜中の狩り』リリース後に実際に使用されたデッキをご紹介だ。フォーマットはヒストリック、最近個人的に入れ込んでいるのもあってリストをよく見ているというのもあってね。『イニストラード:真夜中の狩り』の新カードが一体どれだけの影響をこのフォーマットに与えるのか?
それを予測するのは……難しかった。個人的には『イニストラード:真夜中の狩り』のカードパワーは全体的に高めに感じていた。ハチャメチャに重いコストだったり使用できる状況が限定的なカードが少なく、扱いやすい現実的なコストで堅実なカードが多い印象を受けたからだ。
しかしそれは逆説的には、ぱっと見で「コイツはやべぇ」というド派手カードが少ないということでもある。ヒストリックくらい使用できるカードが多い環境では、ある程度アクが強くともリターンの大きいカードというものがどうしても強いインパクトを残し、使用率も高くなったりする。なので派手カードばかりを探してレアや神話レアをチェックしていたのだが……
これはまだまだクールを理解していない行動だったね。このセットにはヒストリックに大きな変化をもたらす1枚が確実に存在していた。それも一見地味な働きをするコモンに!
実際にゲーム内での働きを見てみると、地味どころかゲームの流れを左右するインパクトに満ちたものではないか。そのカードは何かって? 同セットのプレビューでも最初期に公開されたものの1つ、《考慮》だ。
1 《島》 1 《沼》 1 《山》 4 《湿った墓》 3 《蒸気孔》 4 《尖塔断の運河》 4 《血の墓所》 4 《荒廃踏みの小道》 3 《寓話の小道》 -土地(25)- 4 《ドラゴンの怒りの媒介者》 4 《戦慄衆の秘儀術師》 3 《死の飢えのタイタン、クロクサ》 1 《海門の嵐呼び》 -クリーチャー(12)- |
4 《考慮》 4 《邪悪な熱気》 3 《コジレックの審問》 3 《思考囲い》 2 《信仰無き物あさり》 1 《上天の呪文爆弾》 4 《表現の反復》 2 《コラガンの命令》 -呪文(23)- |
1 《夢の巣のルールス》
-相棒(1)- 3 《致命的な一押し》 3 《魂標ランタン》 2 《湖での水難》 2 《大群への給餌》 1 《削剥》 3 《神秘の論争》 -サイドボード(14)- |
このクールなデッキは?
グリクシス(青黒赤)カラーの《夢の巣のルールス》デッキはこの夏ヒストリックで使用率を高めたアーキタイプの1つだ。
このデッキのキーカードは《ドラゴンの怒りの媒介者》。
条件達成で1マナ3/3飛行というハイスペックを有する、今のヒストリックを象徴するカードだ。このクリーチャーは墓地にカードの種類を揃える必要があり、そのための下準備として非クリーチャー呪文を唱えると諜報1が行える。
このカードと相性の良い《信仰無き物あさり》などと組み合わせ、捨てたカードを《戦慄衆の秘儀術師》や《死の飢えのタイタン、クロクサ》のためのリソースとしても使用する。
これらを墓地から唱える最後の砦にルールスを用意したデッキである。
赤と黒の軽量カードで固めつつ、青を使用しているのは《表現の反復》という大きくアドバンテージを稼げる1枚と、各種サイドカードのためだ。
青い1マナのドローとして《選択》も用いることがあったのだが、そこの枠をこのたび《考慮》と入れ替えたのがこのリストである。《考慮》は媒介者の能力と同じく、諜報1と全く同じことを行った後にドローする1マナインスタント。つまり、媒介者がいる状況だとこれ1枚で2枚も墓地にカードを送ることができ、しかも手札の総枚数は減らない。
ここが重要で、同じ1マナの《信仰無き物あさり》の場合は普通に唱えると手札が1枚減ってしまう。この捨てる行動をマッドネスなどで補填できる構成であれば問題はないのだが、《戦慄衆の秘儀術師》型のデッキだとそういうものを採用するスペースもない……というのもあって、実は物あさりは扱いが難しいカードであったのだ。
手札を減らさないまま墓地にカードを送り込める《考慮》の参入は、実はこの手のデッキにとってはこの上ないクールな変化だったのである。1枚の差が勝負を分けるヒストリックにおいて、この差は微差とは割り切れないのだ。
3 《島》 3 《山》 4 《蒸気孔》 3 《尖塔断の運河》 2 《硫黄の滝》 4 《河川滑りの小道》 2 《バグベアの居住地》 -土地(21)- 4 《ドラゴンの怒りの媒介者》 4 《スプライトのドラゴン》 2 《くすぶる卵》 4 《弧光のフェニックス》 -クリーチャー(14)- |
4 《考慮》 4 《選択》 4 《信仰無き物あさり》 4 《邪悪な熱気》 1 《上天の呪文爆弾》 1 《稲妻の斧》 1 《火柱》 4 《表現の反復》 2 《約束の終焉》 -呪文(25)- |
2 《歴戦の紅蓮術士》 2 《大祖始の遺産》 1 《マグマのしぶき》 2 《霊気の疾風》 2 《否認》 1 《丸焼き》 3 《神秘の論争》 2 《神々の憤怒》 -サイドボード(15)- |
このクールなデッキは?
墓地にカードを送り込む《考慮》には媒介者以外にも相性抜群のカードが。《弧光のフェニックス》だ。
ライブラリーから直にフェニックスを落とす手段でもあり、1マナインスタントなのでフェニックスが戦場に戻る条件を埋めるのも手助けする。隙がなさすぎるクールなパーツが加わり、「イゼット(青赤)フェニックス」がまたその存在感を強めそうな予感だ。
《考慮》のみではなく、フェニックスデッキには新たなクリーチャーも加わっている。《くすぶる卵》だ。
2マナ0/4、インスタントやソーサリーを唱え続ければ4/4飛行の《灰口のドラゴン》に変身だ。変身後はインスタントかソーサリーを唱えるたびに2点ダメージというクールすぎる超性能。
媒介者とフェニックスという墓地頼策を弱点とするカードが主力を務めているデッキなので、それらとベクトルがやや異なる勝ち手段である卵は、なかなかのクールっぷりを発揮する予感だ。《スプライトのドラゴン》に《ドラゴンの怒りの媒介者》と、ドラゴン要素の方が増えてしまったのでデッキの看板であるフェニックスは肩身が狭いかもしれない。
ちなみに《くすぶる卵》の変身はカウンターが7個以上置かれたタイミングで行われるので、変身するのに対応して、という動きはできない。対処する場合はカウンターが必要数を満たす前に行おう。うっかりノット・クールな負け筋はたどらないように。カウンターを巡るインスタントの攻防はマジックならではのヒリヒリ感を味わえるだろう。
クールなまとめ
今回は《考慮》の参入でリストが一新されたヒストリックの青赤絡みのデッキを紹介した。墓地という要素を扱う青いデッキにとってはかなり使いやすいカードの参入は、ヒストリックのみならずパイオニアやモダンといったフォーマットにも影響を与えそうだ。
真のクールはコモンにだって潜んでいる。新セットのカードリスト、今一度見返してクールの探究に勤しもう。では今週はここまで。Stay cool! Let's consider!!
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