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戦略記事

岩SHOWの「デイリー・デッキ」

ディミーア・コントロール:皆の相棒はこれからもずっと(ヒストリック)

岩SHOW

 前回はスタンダードのローテーションについて話をした。

 このローテーションにおいて印象的なのは、対戦開始前から相手のデッキの予想ができるあの要素が去って行くこと――そう、相棒だ。

 サイドボードの枠を1つ使い運用する相棒はゲーム開始前に公開され、それぞれにデッキ構築に制限がなされていることが判明する。《夢の巣のルールス》だったらマナ総量3以上のパーマネントを気にする必要はないな、といった具合に。

 そのルールスと人気を二分していた相棒と言えば《空を放浪するもの、ヨーリオン》!

 構築する際の縛りは、メインデッキの枚数が80枚以上であること! これはビジュアル的にもわかりやすく、当初はインパクトがすさまじかったものの、コントロール系においては80枚以上という制限が苦痛にならなかったのも手伝って、瞬く間に日常の光景となったものである。

 戦場に出た際にクリーチャーやエンチャントなどを追放し、それを戻すことで戦場に出た際の能力を誘発させる。《海の神のお告げ》など相性の良いカードが多く存在したこともあって、スタンダードのコントロールとは即ちヨーリオンと言っても決して過言ではない状況が続いていた。能力もさることながら、4/5飛行がゲーム外から手に入るというのはやっぱり強いね。

 スタンダードではその役目を終え、ヨーリオンは放浪の旅へと帰っていくことになる。しかしながら、これが80枚デッキとの別れというわけではない。スタンダードから去ったとて、他のフォーマットがあるじゃないか。ヨーリオンは次なる戦場へ向けての放浪へと出発したに過ぎないのだ。

 たとえば、ヒストリックなどどうだろう。スタンダードでもお馴染みだったヨーリオン型の青黒2色のコントロール。ヒストリックで組むならこんな具合に仕上がるぞ。

Mason Esports Clark - 「ディミーア・コントロール」
ヒストリック (2021年9月3日)[MO] [ARENA]
12 《
2 《
4 《湿った墓
4 《異臭の池
4 《水没した地下墓地
4 《清水の小道
1 《ヴァントレス城
1 《ストーム・ジャイアントの聖堂
3 《寓話の小道

-土地(35)-


-クリーチャー(0)-
3 《致命的な一押し
2 《血の長の渇き
1 《塵へのしがみつき
4 《取り除き
1 《無情な行動
4 《記憶の欠落
4 《海の神のお告げ
4 《大魔導師の魔除け
2 《魂の粉砕
1 《神秘の論争
4 《絶滅の契機
2 《ヤヘンニの巧技
2 《最古再誕
4 《サメ台風
1 《暗記 // 記憶
4 《覆いを割く者、ナーセット
2 《秘密の解明者、ジェイス

-呪文(45)-
1 《空を放浪するもの、ヨーリオン

-相棒(1)-

3 《墓掘りの檻
1 《血の長の渇き
3 《否認
1 《霊気の疾風
1 《害悪な掌握
2 《屍呆症
2 《魔女の復讐
1 《神秘の論争

-サイドボード(14)-

 

 「昔ながらの」がしっくりくる、伝統的なゲーム展開を主とした「ディミーア・コントロール」である。

 そのゲーム展開とは「ドローゴー」。ここで言う「ドロー」とは各ターンの最初にカードを引くことを意味し、「ゴー」とはターン終了のことである。つまり自分のターンではカードを引いて、(土地を置いて)ターン終了。これを繰り返すというわけで、つまりは自分のメインから何かを仕掛けることは稀、ゲームを掌握し尽くすまではとにかく対戦相手のターンにインスタントを構え続けるという戦術こそがマジック黎明期より長きに渡って続いたコントロールの形なのである。

 このスタイルを確立するには、何よりもインスタントが強くなくてはならない。除去や打ち消しといった盤面に干渉する手段はもちろんのこと、そういうアクションを繰り返して失った手札を補充するためのドローもインスタントで質の良いものがあると真のドローゴーを貫ける。ドローのために隙だらけになっては本末転倒だからね。

 そういう悩みを解決する1枚が《大魔導師の魔除け》だ。

 青マナ3つで打ち消しとなるとややコストが重めに感じるが、それがカードを2枚引くというモードも持っている便利呪文であれば話は別。状況に合わせて柔軟に打ち消しとドローが行える、この手のデッキが待ち望んでいた1枚がヒストリックにやって来たのだ。

 マナ総量1以下の土地でないパーマネントを奪うというモードも、ややこしいエンチャントやアーティファクトに触れるので青黒の弱点をカバーしてくれるのがなんともえらい。

 これと《記憶の欠落》などを構えて対戦相手の動向をしっかりと見定めて、通せないものには打ち消しを、強いクリーチャーには除去を。

 見逃せるような小粒なクリーチャーはある程度泳がせておいて《絶滅の契機》などでまとめてどかす。

 ゲームを支配できるタイミングが訪れたら、ヨーリオンを繰り出して《海の神のお告げ》《覆いを割く者、ナーセット》を使いまわして手札補充。

 《最古再誕》も再利用できればそれでもう決着となってしまうだろうね。

 このリストはおそらくクリーチャーを主体としたアグロ~ミッドレンジ系のデッキとよくマッチした末にこのような形になったのだろう。

 もしコントロールやコンボとの連戦が続くようなら、この形のままではやや勝ちにくいことかと思う。ドローゴースタイルを崩して《思考囲い》などで手札を攻める、やや能動的なスタイルの方がそういったデッキには勝ちやすいが、そうなると今度はアグロ耐性が下がってしまう。この両立はなかなかに難しい。というかそこまで完璧なコントロールが組めたら一強になってしまう。

 何を標的にするか? 仮想敵をしっかりと定めてチューニングを施し、ランク戦や大会に臨みたい。読みが外れた時は仕方がないという割り切りも、このようなデッキを使う場合には重要だ。あとはサイドボードでどれだけ切り替えられるかだね。

 《空を放浪するもの、ヨーリオン》はこのような伝統的なコントロールはもちろんのこと、その能力をガンガン使うことを狙ったパーマネントを並べていくスタイルでも活躍することは、2020年にスタンダードに登場してからのこの1年半で証明済み。

 スタンダードでは役目を終えたが、だったらヒストリックで羽ばたかせてやろう。このローテーションを機にスタンダードのデッキにカードを足してヒストリック参戦! そんなプレイヤーが1人でも多くいてくれたら、ヒストリック中毒の身としては嬉しい限りだ。

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