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岩SHOWの「デイリー・デッキ」
ティムール・ライノ:ピッチと続唱のコンビネーション(モダン)
やあやあ、今回も皆にマジック用語(通称)を覚えていってもらうよ。今日の用語はコレだ!
「ピッチスペル」
この言葉の起源は1996年。『アライアンス』にてマナ・コストを支払わずに代替コストで唱えられる呪文が登場したことにさかのぼる。
《意志の力》《Contagion》と強力なカードにより構成されたそのサイクルは、リリース当時のスタンダードのみならず、長きに渡ってさまざまなフォーマットで使用されることになる。
これらの呪文はマナを支払わなくてよい代わりに、ライフの支払いと手札の追放を要求するというデザインであった。《意志の力》で呪文を打ち消す場合、手札2枚を消費して呪文1枚と交換する形になり、ハンド・アドバンテージの観点で見れば大きく損をしている。しかしながら多少の損をしてでもマナを用いずに何かができるということのもたらす恩恵は大きく、対戦相手と同じマナを持ちながらも行動回数で勝る「テンポ・アドバンテージ」の概念を生みだした。
『アライアンス』の元祖ピッチスペルを皮切りに、《火炎破》《誤った指図》《アロサウルス乗り》などなど多種多様な後継機が作られるようになり、それらはまとめてピッチスペルと呼ばれることとなった。
ではこのピッチスペルの語源とは何か? これは英語表記にするとすぐにわかる。pitch spell、spellは呪文で、pitchは野球のピッチャーのピッチと同じ。つまりは放り投げるということで、『アライアンス』の初代ピッチスペルらの手札を追放するというコストを、カードを放り投げるという形で表現しているということなのだ。
先にも述べた通り、本来マナがない状況でも無理やり行動するために、ピッチスペルで数の損をしてしまうのは仕方のないこと。必要経費と思って諦めよう。例え少々損をしたところで、それによって稼いだテンポで押し切るかあるいは他のもので取り返せば済むことなのだ。
というわけでピッチスペルはテンポ重視の超軽量呪文で構成されたデッキか、あるいは損失をリカバリーできるアドバンテージ源を備えたコントロールなどで用いられることになる。
今回紹介するデッキは、その両方の特性を併せ持っていると言える。テンポで押しつつアドバンテージもガッツリ、そんな欲張りを叶えるのがモダンの「ティムール・ライノ」だ!
1 《森》 2 《島》 1 《山》 1 《繁殖池》 1 《踏み鳴らされる地》 1 《蒸気孔》 1 《ケトリアのトライオーム》 4 《霧深い雨林》 3 《樹木茂る山麓》 4 《沸騰する小湖》 1 《溢れかえる岸辺》 3 《宝石の洞窟》 -土地(23)- 4 《砕骨の巨人》 4 《厚かましい借り手》 4 《断片無き工作員》 4 《激情》 -クリーチャー(16)- |
4 《衝撃の足音》 4 《否定の力》 4 《暴力的な突発》 3 《プリズマリの命令》 4 《火 // 氷》 2 《死亡 // 退場》 -呪文(21)- |
4 《忍耐》 1 《基盤砕き》 4 《神秘の論争》 3 《血染めの月》 3 《活性の力》 -サイドボード(15)- |
「ティムール」は青赤緑3色のデッキの愛称。「ライノ」は何かというと犀、つまりは動物のサイのことだ。《衝撃の足音》というサイ・トークンを2体生成するソーサリーが主力のためこのような呼ばれ方をしている。
《衝撃の足音》にはマナ・コストが設定されておらず、つまり通常のマナ・コストを支払って唱えることができない。真面目に運用するなら待機させて4ターン待たなければならない。4/4トランプルのトークンが2体であればやむを得ない待ち時間ではあるが……流石にじれったい。
なのでこの呪文は続唱と組み合わせて用いる。続唱能力を持つ呪文よりもマナ総量が低い呪文を《衝撃の足音》のみに絞ったデッキを構築することで、続唱から絶対にサイが飛び出すというシステムを確立する。
《断片無き工作員》と《暴力的な突発》で十分な続唱枠を確保したら、あとは出来事を持つクリーチャーや分割カードなど、2マナ以下で使用できるがマナ総量は3以上で続唱を邪魔しないカード、そしてテンポを稼ぐピッチスペルを投入すればデッキの完成だ。
ピッチスペル枠はモダンならではの強力なラインナップ。打ち消しは《否定の力》。
《思考囲い》などの手札破壊や打ち消しなどから続唱を護り、サイ登場後は除去を弾く。コンボへの自衛手段でもあり、積極的に用いるこのピッチによる損失をサイで埋めて一気に勝ちに行く。
サイドには《活性の力》も。
アーティファクトやエンチャントを主軸としたデッキに対して、それらを2枚破壊するこのインスタントはピッチで使用しても損はしないという特殊なもの。不要になった《暴力的な突発》など投げ捨ててバンバン唱えよう。続唱を妨害する《減衰球》や《エーテル宣誓会の法学者》などに対処可能なのも偉い。
クリーチャーにもピッチスペルに分類されるものもおり、《激情》《忍耐》のインカーネーション連中はいずれもゲームの流れを変える能力を持っている。
ピッチとして使い捨てても良いし、マナに余裕があれば唱えても良い。クリーチャーを複数体対処可能な《激情》と、戦場に出る前に未然に防ぎプレインズウォーカーも対処可能な《緻密》とどちらを採用するかはプレイヤーによって異なる。仮想敵に合わせて切り替えるのがベストだろう。
マナ不要、非常に便利なピッチスペルは何も考えずにデッキに投入すると損失をもたらすことも。早期ターンでゲームを終わらせるか、損失をリカバリーするか、あるいはその両方か。構築段階でより強く使えることを意識して用いたい呪文群だ。それらのカードが横行するフォーマットでは、マナがないからと言って油断せず常に警戒を。
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