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戦略記事

岩SHOWの「デイリー・デッキ」

氷雪グリクシス:デッキリストからわかること(スタンダード)

岩SHOW

 デッキを組む際にまず何を決めるか、どこから考えるか。

 端から「○○を使いたい!」「△△でコンボする!」というように具体的な目標が設定されている場合は簡単なんだけどもね。そうじゃなくて「スタンダードで勝てるデッキを作りたい」「持っているカードで何か良いもの組めないかな」こういうザックリしたところからスタートする場合は、なかなかに頭を悩まされることになる。

 その時間こそが楽しいものなので、この悩みは決して苦痛というわけではない。デッキ構築であれこれ頭を悩ませている人がいたら、自分はマジックの醍醐味を味わっているのだなぁと思ってほしいね。

 実際に、スタンダードのデッキを組むとしよう。どこから考えようか? 仮想敵=使用者が多くランク戦やトーナメントで遭遇することの多いデッキを振り返ってみる。それらに効果的なカードやアプローチは何か。

 デッキの色やスピードをこの段階で決めたなら、細かいカードの取捨選択は実際にカードをダーッと並べてから。あれもこれもとやって60枚を余裕でオーバーしたり、あるいはこんなもんだろと列挙してみたら55枚くらいしかなかったりで、そう簡単に60枚がビシッと決定することはない。そこからさらにサイドボードの15枚を考えたり、80枚デッキに発展させたり……その段階に移行する前に、まずは60枚まとまったらメイン戦のみで回してみて感触を確かめるなどしても良いね。

 多色デッキの場合は土地と色マナのバランスを微調整し、土地をよく引きたいコントロールなら増量を、あまり引きたくないアグロなら減量を検討したりしつつ、ストレスなく思ったことができて、想定した相手に勝てる完成形へと近づけていく。

 なかなか思った通りのデッキがサクッと組めるものではなく、環境や経験によって思いのほか時間がかかることもある。でも、じっくり磨き上げたデッキが理想の形になった時、達成感が凄いんだよね。

 デッキを作り、仕上げる。初心者には難しい作業であることには違いない。上級者だって難儀する工程だ。なので、誰かのデッキリストを参考にするというのはどんどんやっていこう。

 このコラムも1人でも多くのプレイヤーに誰かのアイディアや思考を伝えるために連載しているので、リストから作成者の意図を読み取り、マイデッキを構築する際の糧としてほしいなと願っている。

 じゃあ今回もデッキリストを見ていこうか。じっくりと、その要素を読み解きながらね。

Platinum-Mythic Rank Player - 「氷雪グリクシス」
スタンダード (2021年8月7日)[MO] [ARENA]
6 《冠雪の島
3 《冠雪の沼
6 《冠雪の山
3 《氷のトンネル
3 《硫黄のぬかるみ
4 《寓話の小道
-土地(25)-

4 《砕骨の巨人
4 《厚かましい借り手
4 《セッジムーアの魔女
-クリーチャー(12)-
4 《霜噛み
3 《胸躍る可能性
3 《襲来の予測
3 《多元宇宙の警告
4 《雪上の血痕
2 《海門修復
4 《オニキス教授
-呪文(23)-
2 《スカイクレイブの影
4 《乱動する渦
2 《取り除き
2 《否認
2 《神秘の論争
3 《影の評決
-サイドボード(15)-

 

 MTGアリーナのランク戦で6連勝以上を達成したデッキをまとめたリストよりピックアップしたこのスタンダードのデッキ、青黒赤でこのカラーリングはかつて登場した次元(の断片)になぞらえてグリクシスと呼ばれる。土地の内訳を見ると得られるマナはすべて氷雪。なので「氷雪グリクシス」としておこう。

 氷雪土地をこれだけ用いるということは、氷雪パーマネントや氷雪マナを参照するカードが採用されているはずだ。そういうカードを探してみると、あったのは《霜噛み》と《雪上の血痕》。

 どちらもクリーチャーおよびプレインズウォーカーに対する除去である。これらが4枚ずつ採用されているということは、戦場をコントロールすることに重きを置いていると見ることができる。

 そして特に注目は《雪上の血痕》。このソーサリーは6マナとコストは重く、気軽に使えるものではない。それでも4枚採用しているということから考えられることは……クリーチャーをすべて破壊するという効果の大きさを評価して? プレインズウォーカーも破壊可能なので非クリーチャーデッキにも無駄になりにくい点から? それらだけでは他にももう少し軽いカードがあるので、決め手に欠ける。

 ここで重要なのは血痕が除去とともにもたらす、もう1つのものだということが読み解ける。唱えるために支払った氷雪マナの数以下のマナ総量のクリーチャーかプレインズウォーカーを墓地から戦場に戻す、リアニメイトの部分を重要視しているということだ。

 で、これで戻せるクリーチャーおよびプレインズウォーカーを確認してみる。クリーチャーは数が12枚と少なく、またマナ総量はいずれも3と軽めである。

 対してプレインズウォーカーは《オニキス教授》4枚。6マナと重めではあるが戦場に出れば大きな恩恵をもたらすヘビー級だ。

 土地はすべて氷雪マナを供給するものなので《雪上の血痕》では6マナのパーマネントを戻せる、つまり戦場を更地にしつつ教授を釣り上げるのが狙いというのが判明。

 この教授は対戦相手によって墓地に落とされたものを再利用する以外に、能動的に墓地に落とす手段はないかとリストを見てみると、手札を捨てるドロー呪文《胸躍る可能性》が。

 つまりは……血痕でリセットしつつ教授を戻す、この動きを能動的に行うために赤を、そしてこの2色だけではコントロールを組むのにカードが足りないなどの問題で青を加えたのだろう、と。こう推察できるわけだ。面白いアイディアだよね。

 それを綺麗に形にまとめ上げているのは、他のコンセプトでデッキを作る際にも大いに参考になるはずだ。

 デッキの目指すところを中心に見てみたが、他にも《セッジムーアの魔女》の能力を誘発させつつ《雪上の血痕》から戦場に戻すクリーチャー枠として出来事能力持ちを優先しているところや、《乱動する渦》4枚に始まるサイドボードの構成など、細かく見ていけば学びは多くあるはずだ。

 自分の構築スキルをアップさせるには、他人のデッキを見て学ぶことが一番の近道。今日も明日もデッキを見て、作って、遊ぶ! いつまでも続けていきたいルーティンだね。

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