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岩SHOWの「デイリー・デッキ」
今週のCool Deck:アゾリウス・アーティファクト(スタンダード)
負ければそこまで、お疲れさん。ノックアウト形式の大会ってマジックでは珍しい。ほとんどが予選ラウンドで上位入賞者が決勝ラウンドに進出する形式で、少々負けてもチャンスがある。そもそも予選ラウンド終了までは成績に関係なく最後まで遊ぶことができるしね。そんなわけで負けた瞬間に終わる、そんな緊張感漂うイベントは希少であり、それゆえにクールと言えよう。
MTGアリーナでは新セットリリース直後に毎度「メタゲーム・チャレンジ」なるクールなイベントが開催される。サイドボード込みの2本先取形式で、一度でもマッチを落とすとそこでチャレンジ終了。かなり厳しい条件ではあるが、勝ち続けるとパックがザックザクもらえたりする、ハイリターンなお祭りだ。
腕に自信のあるプレイヤーが集うので、初心者には少々ハードルが高いものかもしれない。マジックに慣れて、かつデッキにも手応えがあるタイミングでこのイベントがまた巡ってきたら、その時にはチャレンジャーとして参戦してみよう。
というわけで本日は金曜日、私・岩SHOWが独断選んだクールなデッキを紹介する「今週のCool Deck」のお時間だ。こんな前フリをしたということは、今回はもちろんメタゲーム・チャレンジで最高の成績、7連勝を達成したデッキを紹介しよう。
『フォーゴトン・レルム探訪』スタンダードで勝ちまくったデッキ……世界中から上がる報告に目を通していると、一際異彩を放つリストに遭遇。ガチガチの大本命ではなく、ダークホースどころか誰もイメージしていなかった、そんな個性際立つデッキでの7連勝。これをクールと呼ばずしてなんと呼ぶのか。それでは論より証拠、リストをご開帳!
4 《平地》 3 《島》 4 《連門の小道》 4 《啓蒙の神殿》 2 《フロスト・ドラゴンの洞窟》 4 《宝物庫》 2 《寓話の小道》 -土地(23)- 4 《ジンジャーブルート》 4 《シルヴァー・レイヴン》 2 《無私の救助犬》 4 《巧妙な鍛冶》 2 《オズワルド・フィドルベンダー》 4 《石とぐろの海蛇》 -クリーチャー(20)- |
4 《ウォーターディープの黒杖》 2 《唱え損ね》 2 《ポータブル・ホール》 4 《きらきらするすべて》 4 《ガラスの棺》 1 《影槍》 -呪文(17)- |
1 《夢の巣のルールス》
-相棒(1)- 3 《ドラニスの判事》 2 《ポータブル・ホール》 2 《魂標ランタン》 1 《影槍》 2 《解呪》 1 《否認》 3 《神秘の論争》 -サイドボード(14)- |
このクールなデッキは?
メタゲーム・チャレンジに颯爽と現れ《夢の巣のルールス》を相棒とした……青白!
スタンダードであれば「サイクリング」の白青赤3色以上のデッキや「ディミーア・ローグ」、ヒストリックであれば「アゾリウス・オーラ」で見ることができる色とルールスの組み合わせ。スタンダードでは非常に珍しい。
それだけでなく、『フォーゴトン・レルム探訪』からは実に合計24枚もカードを採用。既存をベースにしたとかそういうものではなく、全く新しいデッキでメタゲームに挑んだ形になる。クールそのものだ!
そもそもメタゲームとは。これはトーナメントに参加する際に、どのデッキを選ぶかという情報戦のこと。赤くて速いデッキが多いから、青くて遅いデッキは避けた方が良い、逆に白くてライフを護れるデッキで出よう――というように、直前の動向から当日のデッキ分布を予測し、相対的に有利なデッキを持ち込む。ゲームの前のゲームに勝利する、という意味でメタゲームと。この言葉の意味も広いものになり、デッキ分布や使用率を指したり、環境そのものを示したりするようになった。
メタゲーム・チャレンジは「環境に多く使用者が存在する強力デッキがひしめき合う中に挑もう!」という意味合いになるわけだが、そこでこのようなオリジナルデッキで全勝しているのはクールの極みである。ではどんなデッキか分析していこう。
どこがどうクールなのか?
クールポイントその1:黒き杖で秘宝を操れ
このデッキはメインに27枚のアーティファクトが採用されている。その実、半分はアーティフアクトってことで、これがメインテーマというのがよくわかる。
その主役と言えるのが《ウォーターディープの黒杖》。
ウォーターディープとはフォーゴトン・レルムで最も壮麗な巨大都市のこと。アートにてこの杖を装備しているのはVajra Safahrというキャラクターで、彼女が振るう黒い杖には様々な能力が備わっているらしい。
カードとしてこの杖はアーティファクト1つを4/4のクリーチャーへと変貌させる。一時的に使用しても良いし、黒杖をアンタップしないことを選んでいる限りは永続的にそう運用することも可能だ。これを用いて《ガラスの棺》や《ポータブル・ホール》などの除去をクリーチャー化させて1枚で2倍働いてもらおうという魂胆である。
土地である《宝物庫》もトークン経由でクリーチャー化させられるので、かなりしぶとくクリーチャーを送り込むことが可能になっている。潰しても潰しても4/4が発生するのはクールな光景だ。
また、すでにクリーチャーであるアーティファクトも対象に出来るのも強みで、《ジンジャーブルート》に《シルヴァー・レイヴン》と1マナで回避能力を持つ1/1たちをサイズアップさせてハードパンチャーに育て上げるという戦術も。
《石とぐろの海蛇》は基本サイズが0/0から4/4になるわけで、緑のクリーチャーも見上げてしまう怪物を作り出すのもお手の物だ。
これとともに《きらきらするすべて》も併用し、超大型のアーティファクト・クリーチャーを用意して殴り切る、というのが理想のゲーム展開。《踏みつけ》のようなダメージ除去や緑の格闘も寄せ付けない、サイズによる暴力でメタゲームを制する!
クールポイントその2:杖を手に入れるには
キーカードが強力なのはわかったが、4枚しかない黒杖を引けるかどうかでゲーム展開は雲泥の差となってしまっては困りもの。そこで白の出番で、この色の持つアーティファクトを探す手段でなんとかしようと。
《巧妙な鍛冶》で見つかれば万歳、他のアーティファクトしかなくてもアドバンテージを得ているのでオーライ。しかもアーティファクトを出していくだけで鍛冶自身もサイズアップして戦力となってくれるのが嬉しい。
そして0マナアーティファクトを元に黒杖を錬成するのが《オズワルド・フィドルベンダー》。
彼の魔具化能力で《石とぐろの海蛇》か宝物を生け贄に捧げてライブラリーから黒杖を直接戦場へ! 短期決戦を狙うデッキなので、土地の犠牲もそれほど痛手にはならない。序盤に展開できないことの方が痛いので、遠慮なく杖を手に入れちゃおう。海蛇であればルールスで唱えなおせば問題ないしね。
黒杖を複数枚引いてしまった時にも《ガラスの棺》に変換するという形でオズワルドは役に立つので、その辺もお忘れなく。
さらなるクールのために
ルールスデッキなので2マナ以下に縛られているが、そこをとっぱらえばクールな選択肢は増えることになる。ルールスのようにアドバンテージ獲得、戦線再構築能力を持ったカードをしっかりと採用するというのがクールさを保つ前提条件にはなりそうだけどもね。
《忍耐の偶像》で1マナクリーチャーを再利用するなど備えておきたい。《秘儀術師のフクロウ》は黒杖や《きらきらするすべて》を引き込むチャンスをくれるし、これも強そうだ。《よろめく鎧》と《宝物庫》のコンボも試してみたい。クールなデッキをどう発展させるかは君次第。
クールなまとめ
過酷なチャレンジに独自性の高いデッキで挑む。それだけでもクールなプレイヤーの姿であるが、最高の戦果を引っ提げて帰ってくるとなればもう拍手もんだ。メタゲーム・チャレンジに限らず、常にマイデッキを追い求める人々に最大の敬意を。それじゃあ今週はここまで。Stay cool! Be a challenger!!
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