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岩SHOWの「デイリー・デッキ」
スゥルタイ・フード~地獄の料理人~(モダン)
ついに出た!『モダンホライゾン2』!
スタンダードとは無関係に、モダンやその他のフォーマットでのみ使用可能なカードを収録した特殊なセットの第2弾がリリースされた。前セットの衝撃があまりにも大きかったことから、「2」の存在が明かされた時にはまたあのレベルの衝撃が訪れるのかと、反響が大きかったものだ。
ハードルが自ずと上がってしまったこのセット、果たしてその内容はどうだったかというと……Magic Onlineで使用可能になるやいなや、あれが強いこれがヤバいと、モダンやレガシーを愛するプレイヤーたちから瞬く間に吹き出る感想の嵐。そう、このセットは6月に突如として吹き荒れた嵐なのだ。
スタンダードを経由しないからこそ許される高いカードパワーと、過去のカードのリメイクや懐かしい能力の組み合わせ。エキサイティングが過ぎるカードを使ったデッキが続々と誕生する中、今日はあるキャラクターを主役としたデッキを取り上げよう。
その女性の魔道士はマジック最初の基本セットですでにフレイバーテキストに出演している最古参キャラであり、1996年に発売された短編小説の主人公でもある。
その名は《アスモラノマルディカダイスティナカルダカール》。
異常に長い名前の持ち主であるだけでも人気が出そうなものだが、彼女は魔道士であると同時に料理人であり、《地獄料理書》というレシピ本まで執筆しているというのだからマジックマニアにとってはたまらないキャラクターだった。
この度、ついにカード化と相成ったわけだが、そのデザインは料理人らしく食物と関係のあるものだったからファンも納得の出来だ。
戦場に出れば《地獄料理書》をサーチし、食物を2つ生け贄に捧げることでクリーチャーが自身に6点ダメージを与えるというフレイバーの効いた能力と、そして何よりその長すぎる名前でカード名欄が埋まってしまいマナ・コストが表記できないという問題を、そもそもマナ・コストを持たないカードとすることで解決するという荒業で乗り切っていることは拍手ものだ。
手札を捨てていれば1マナで唱えられるという能力も、手札を捨てて食物を生成する自身の著書と噛み合っている。
クセは強いが、しかしながら味も一級品。アスモラノマル……いや、長すぎるので愛称の「アスモー」と呼ばせてもらおう。アスモーを使用したモダンのデッキ、その一例が以下のリストだ。
1 《沼》 1 《島》 2 《湿った墓》 1 《草むした墓》 4 《汚染された三角州》 2 《血染めのぬかるみ》 4 《闇滑りの岸》 1 《花盛りの湿地》 1 《育成泥炭地》 1 《冠水樹林帯》 4 《ウルザの物語》 -土地(22)- 4 《アスモラノマルディカダイスティナカルダカール》 3 《大釜の使い魔》 4 《湖に潜む者、エムリー》 4 《楕円競走の無謀者》 4 《通りの悪霊》 4 《貪るトロールの王》 -クリーチャー(23)- |
4 《ミシュラのガラクタ》 4 《地獄料理書》 2 《魔女のかまど》 2 《パンくずの道標》 3 《金属の叱責》 -呪文(15)- |
3 《自然の要求》 2 《致命的な一押し》 2 《魂標ランタン》 2 《思考囲い》 2 《夏の帳》 1 《儀礼的拒否》 1 《真髄の針》 2 《氷砕き》 -サイドボード(15)- |
アスモーと同じく食物・トークンに関係のあるクリーチャーと言えば《大釜の使い魔》。
これと《魔女のかまど》の組み合わせで食物と猫をグルグル回すのはお約束の光景となっているが、ここに《地獄料理書》も絡めてみたのがこのデッキ。
料理書は手札を捨てて食物を作り出すのだが、これと相性抜群の1枚が《楕円競走の無謀者》。
アーティファクトが戦場に出ると墓地から手札に戻るという能力を持っているので、つまり「これを捨てる→墓地に落ちる→食物が出る→戻る」というループを形成できる。毎ターン、手札の減少なしで食物を得られるし、料理書が2冊以上並べば食物大量生産も可能だ。
こうして得た食物を使って《パンくずの道標》でアドバンテージを得たり、《金属の叱責》《湖に潜む者、エムリー》のコストを軽減したりしてゲームを優位に進めていこうという、中速のデッキになっている。
食物の使い道として最大のものは《貪るトロールの王》。
食物3つを生け贄に捧げると墓地から戦場に戻る能力を持つこの大型クリーチャーを、《地獄料理書》《魔女のかまど》で早いターンにマナを支払わずに戦場に出すのが必勝パターンだ。いかにモダンのような環境でも、早ければ2ターン目に7/6警戒・トランプルが出てきて苦戦しないデッキはない。
トロールを墓地に落とすには料理書で捨てるか、あるいは《湖に潜む者、エムリー》で切削して埋める形になる。
エムリーは墓地に落ちた料理書やかまどを拾いつつ、トロール以外にも使い魔や無謀者、墓地に落ちても資源としてしっかり働くカードで固められたこのデッキにはとても噛み合っている。《ミシュラのガラクタ》が採用されているのはキーカードを引くためのデッキ圧縮と、エムリーを早いターンに出すためのコスト軽減役を兼ねてのものである。
《ウルザの物語》にも触れておかなければならない。
これはオンラインでリリースされると同時に「ヤバい」という報告が相次いだ全く新しいシステムのカードだ。土地であり英雄譚であるという驚きのデザイン。この土地はⅡ章で得られる能力をⅢ章の解決前に起動することで、のべ2回使えるというのがすこぶる強い。アーティファクトの数だけのサイズの構築物・トークンを生成するので、食物を並べているだけで戦闘で存在感を発揮するサイズのクリーチャーを簡単に得られるのだ。
この土地・英雄譚は今後アーティファクトを用いる全てのデッキで見られるんじゃないだろうかというくらい、無視できない存在だ。
トロールや構築物を2体ほど早いターンに出せれば瞬殺も狙えるが、毎度そういう幸運に恵まれるわけでもない。なのでデッキの他の部分はマッタリ戦えるようにも作られている。
料理書で無謀者を捨てながら毎ターン食物を得て、ブロックして死亡した使い魔を戻したりアスモーで相手のクリーチャーを除去したりと、厨房を回転させながら盤面の主導権を握っていこう。システムが完成した場合、対クリーチャーデッキを前に先にこちらが力尽きるということはないはずだ。要所を《金属の叱責》で乗り切り、トロール王やウルザの到来まで耐えよう。
序盤に墓地から蘇る巨大クリーチャーという構図は、自ずと前『モダンホライゾン』に収録された《甦る死滅都市、ホガーク》を思い出させる。ホガークデッキは大暴れしたものだが、アスモーデッキはどうなるだろうか。このユニークな料理人を軸としたデッキを、この夏は存分に味わってほしいところだ。
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