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戦略記事

岩SHOWの「デイリー・デッキ」

今週のCool Deck:デッキに4枚まで? それってクールじゃないね(スタンダード&特殊フォーマット)

岩SHOW

 こっちは今日からゴールデンウィーク突入だ! 昨年以上に全くそんな実感もなく、家で仕事しているというのが現実だ! いずれこれもクールな思い出になると信じて……我々にはステイホームがいくら続いてもMTGアリーナがあるから……そんな一心で日々を生きてます、押忍ッ!

 というわけで今週もデイリー・デッキの金曜日が、Cool Deckのコーナーがやってきた! ド開幕にデッキを一つ紹介しようッッ。

Platinum-Mythic Rank Player - 「赤単・ドラゴンの接近」
スタンダード (2021年4月19日)[MO] [ARENA]
24 《
-土地(24)-

7 《七人の小人
2 《朱地洞の族長、トーブラン
-クリーチャー(9)-
27 《ドラゴンの接近
-呪文(27)-
5 《
-サイドボード(5)-

 

 デッキリストは短ければ短いほどクール、とも言われているが……サイドボード込みで5行!?これはクールの地平の向こう側、行っちまったなぁ。

 このリストは『ストリクスヘイヴン:魔法学院』リリース直後、アリーナのランク戦においてプラチナ~ミシック区間で6連勝以上の成績を残したリストの1つとして公開されていたものだ……マジっすか。

 新セットがもたらした《ドラゴンの接近》はデッキ内に好きなだけ採用できるカードで、これを利用したデッキは出てくるとは思ったが……まさかのドラゴン不採用! こんな読めない構築してくるたぁ、クールとしか言えないねぇ!

 好きなだけ採用出来る《ドラゴンの接近》に加えて、7枚まで採用できる《七人の小人》がいるのもスタンダードのルール破壊カード集合デッキになっていてクールだ。

 小人を並べて攻撃し、接近でライフに直接ダメージ。これしかない、これしか知らない。《朱地洞の族長、トーブラン》でダメージを増やす工夫はされているのがリアルかつクール。これで2本先取形式でランク戦に挑むというのもクーラーだし、6連勝以上ってのがクーレストでもう気絶しそうだ。

 まるでタイプ0みたいなデッキだ、とふと思った。タイプ0というのは非公式フォーマット。その名はかつての公式フォーマット、タイプ1に由来する。タイプ1は現在で言うヴィンテージの前身。あらゆるセットのカードが使用可能だが、強すぎるカードはデッキに1枚制限であるヴィンテージは他のフォーマットよりもフリーダムなイメージがあるだろう。

 タイプ0はこれを超えたフリーダム具合からそのように呼ばれている。マジックのあらゆるセットのカードが使用可能で、禁止も制限もない。そしてデッキに同名カードは4枚制限というルールもない。制限と呼べるものは何ひとつないのだ。

 銀枠のカードだって使えてしまうこのクールなフォーマット、サンプルデッキを紹介しよう。

サンプルデッキ「超速攻ナメクジ単」
タイプ0[MO] [ARENA]

-土地(0)-

60 《Rocket-Powered Turbo Slug
-クリーチャー(60)-

-呪文(0)-

 短ッ。《Rocket-Powered Turbo Slug》はそれを唱えるよりも先に攻撃できるという「超速攻/Super haste」という能力を持つ。1ターン目、攻撃クリーチャー指定ステップに手札のこのナメクジをすべて戦場に出せば21点以上のダメージを叩き込めて即勝利。1ターンキル率100%である。

サンプルデッキ「ドロス単」
タイプ0[MO] [ARENA]

-土地(0)-

60 《ドロスの大長
-クリーチャー(60)-

-呪文(0)-

 そんなナメクジもこのデッキにはかなわない。ゲーム開始時に手札から公開し、そのゲーム最初のアップキープに能力が誘発する大長サイクル。《ドロスの大長》7枚の手札を公開すれば21点のライフをゲーム開始時に吸い取れる。こちらは0ターンキル率100%。ヒェ~ッ。

サンプルデッキ「うねる単」
タイプ0[MO] [ARENA]

-土地(0)-

20 《猿人の指導霊
-クリーチャー(20)-
40 《うねる炎
-呪文(40)-

 ただそんなドロス単も《うねる炎》には敵わない。ドロスの能力が解決される前に《猿人の指導霊》から2マナ得て《うねる炎》を唱え、あとは波及能力によりライブラリーの上からどんどんと自動的に《うねる炎》が唱えられる。20点のライフを焼き切る確率は100%ではないが、それに近い値である。

 このうねる単も《精神壊しの罠》には敵わず、完全無欠のデッキが組めそうで組めない絶妙なバランスがタイプ0の魅力だ。ある種の思考実験的な要素を備えているので、プレイするというよりはデッキを考えている時が楽しいフォーマットと言えるね。

 このタイプ0みたいなことが、アリーナ上で遊べたということをご存知かな?

 新環境を迎える前のクールなイベント「新ヒストリック」は、マジックが現在のルールに至る前の原初の姿に戻ることをコンセプトに、禁止カードと4枚制限をとっぱらったヒストリックとして期間限定で遊ぶことができた。カードプールの狭いタイプ0、こんな特殊なフォーマットを遊ぶチャンスなんてそうそうあるもんじゃない。

 というわけで僕ももちろんプレイしてみたのだが……これがなかなか面白い。各プレイヤー、創意工夫を凝らしていて全ての対戦がワクワクさせられるものだった。僕はタイプ0から着想を得て、どちらかといえばディフェンシブなデッキを選択した。ヒストリックにおけるナメクジや大長やうねりの代わりになるカードをイメージし、それらへの対策カードデッキに採用。これで勝ち筋を潰してゆっくり攻めるというプランを実行したら、これがビタッとハマって快勝に次ぐ快勝をもたらした。

 かなり納得がいっているクールなリストに仕上がったので、何の参考にもならないかもしれないが、この場を借りて公開させてもらおう!

岩SHOW - 「力線兵団」
「新ヒストリック」[MO] [ARENA]
50 《陽光昇りの小道
-土地(50)-

30 《囁く兵団
-クリーチャー(30)-
30 《軍団の最期
25 《神聖の力線
25 《虚空の力線
-呪文(80)-
1 《空を放浪するもの、ヨーリオン
-相棒(1)-

 こいつが新ヒストリックの我が自慢のクールデッキ、「力線兵団」だ!

 採用されているカードの枚数がどれも異常に見えるだろうが、それぞれ採用している理由を1つ1つ説明していこう。何せ種類が少ないからね!

 力線こと《虚空の力線》と《神聖の力線》がこのデッキのキーだ。

 僕が新ヒストリックをプレイしたのはイベント開始から少し時間が経ってからだったが、その時点でもう1つのデッキが存在感を示していた。《這い寄る恐怖》デッキだ。

 これを何十枚とデッキに採用し、切削するカードを用いて一気に6~9点ほど対戦相手のライフを吸う。これを1ターン目から繰り返して、遅くとも3ターン目には決着という手法だ。

 これに対抗するために《虚空の力線》が必須カードだ。対戦相手の墓地にはカードが落ちなくなり、《這い寄る恐怖》の誘発条件は満たされなくなる。これで相手の勝ち筋を1つ奪う。

 そうなっても対戦相手はこちらを対象に切削する呪文を用いてくるだろう。それも《神聖の力線》でシャットアウト。この自分に呪禁をもたらす力線は《魔術師の稲妻》などを大量に備えた相手も予測してのチョイスで、直接ダメージ呪文の連打で瞬殺されることも防ぐ。どちらも力線特有の、ゲーム開始時の手札に来ればマナを支払わず戦場に出せるというクールな点が重要だ。

 新ヒストリックに存在する切削デッキの1つとして考えられるのは《遺跡ガニ》と《寓話の小道》をドカ盛りしたものだ。このデッキには《神聖の力線》が通用しないので、何か別のカードで対策しなければならない。そこで選んだのが《軍団の最期》。

 相手が1ターン目に出してきたカニに対して2ターン目にぶっ放すと……手札が土地2枚だけ、なんて悲惨な状況に。文字通りカニ軍団の最期だ。

 《翻弄する魔道士》など軽量クリーチャーを山積みしたデッキも確認できたので、この除去には価値があるとにらんだ。事実、クリーチャーを用いるデッキ相手には唱えればほぼ勝ちという、クールかつ凄まじいバリューを見せつけてくれた。

 で、大事な勝ちに行くためのカードに選んだのが《囁く兵団》。

 最大の理由は見た目がクールだから! これに尽きるな。

 真面目な話をすると、力線を大量採用しているこのデッキは手札がスッカラカンになりがち。その問題を兵団はクリアしてくれる。1マナなので力線を並べつつ土地1枚から1ターン目に展開でき、以降はマナを支払ってライブラリーからどんどんと仲間を呼んでいく。手札が無くなっても展開を続けられるという点がクールだ。

 あまりに特異な環境なので、クリーチャーのサイズはそれほど重要ではないと判断し、アドバンテージにのみ絞った結果がこのチョイスだった。開幕に力線と兵団を繰り出し、後は《軍団の最期》で除去するなり兵団を呼ぶなり……まったりやっていればいつの間にか勝利という寸法だ。

 《遺跡ガニ》など切削デッキへの対策としてライブラリーを100枚以上にしているので、《空を放浪するもの、ヨーリオン》を何のリスクも調整もなくすんなり採用できる。追放して嬉しいカードもないが、4/5飛行というボディーで地上がにらみ合いになった際にケリをつける。

 このデッキの弱点は勝ち手段に乏しいところ。《囁く兵団》オンリーと言っても良いので《ルーンの光輪》を用いる相手にはゴメンナサイ~となってしまった(笑)。何かエンチャントも壊せるパーマネント破壊か、ヨーリオン以外にもサブの勝ち筋を用意しても良いかなと。

 あとは、これはあるあるなのだが……あまりにも尖った構築をしているため、普通のデッキにコロッと負けてしまう。

 新ヒストリックらしさを追求したデッキにはガードを上げているので好きなことをさせず、その間に1/1の群れで勝負できるのだが……イベント中、見るからにスタンダードの赤単をそのまま持ち込んだ感じの対戦相手には、クリーチャーのサイズ差で圧倒されて《エンバレスの宝剣》でフィニッシュと、サンドバッグのようにボコボコにされてしまった(笑)。

 ヴィンテージのデッキとスタンダードのデッキで対戦してもこのような事態に陥ることはあり、ぶっ飛んだ環境ではデッキたちも基本を外れてしまいがちで、ごくごく当たり前のことをしてくるデッキに足元をすくわれたりするものだ。なんだか深いな、と勉強させてくれた新ヒストリック、クールだぜ。

 『ストリクスヘイヴン:魔法学院』の登場により、ミスティカルアーカイブがヒストリック環境に加わった。この中でも《稲妻》《暗黒の儀式》などはカードパワーの問題により使用不可となっているが……次に新ヒストリックのイベントが開催される時には、これらも使用可能になるのだろうか。そうなったらこのフォーマットはより混沌とした、よりクールなものになるだろう。いつか来るかもしれないその時が楽しみだ。

 それじゃあ今週はここまで。Stay cool! Break the rule!

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