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岩SHOWの「デイリー・デッキ」
ピキュラ、フォーエバー(レガシー)
いつものようにネット上に散らばるデッキリストを巡っていたら、ちょっとした感動……と言っちゃあ大げさだが、グッとくることがあった。まあ、まずはリストを見てみよう。
3 《冠雪の沼》 1 《平地》 4 《Scrubland》 4 《湿地の干潟》 2 《汚染された三角州》 2 《血染めのぬかるみ》 1 《新緑の地下墓地》 1 《カラカス》 4 《不毛の大地》 -土地(22)- 4 《闇の腹心》 4 《石鍛冶の神秘家》 1 《ファイレクシアの破棄者》 2 《敵対工作員》 2 《スカイクレイブの亡霊》 -クリーチャー(13)- |
4 《暗黒の儀式》 3 《思考囲い》 2 《致命的な一押し》 2 《コジレックの審問》 2 《剣を鍬に》 4 《トーラックへの賛歌》 1 《未練ある魂》 1 《梅澤の十手》 1 《火と氷の剣》 1 《殴打頭蓋》 3 《ヴェールのリリアナ》 1 《オルゾフの簒奪者、ケイヤ》 -呪文(25)- |
1 《Bayou》 2 《疫病を仕組むもの》 1 《外科的摘出》 1 《真髄の針》 2 《突然の衰微》 2 《Chains of Mephistopheles》 2 《安らかなる眠り》 1 《窒息》 2 《虚空の力線》 1 《仕組まれた爆薬》 -サイドボード(15)- |
レガシーの白黒デッキだ。こういうデッキは「デッドガイ・エール」と呼ばれる。「デッドガイ・エール/Deadguy Ale」とはビールの名前で、なぜこのビールの名前が選ばれたかはわからないが、瓶に髑髏が描かれたモノクロのイラストが白黒のデッキを想起させなくもない。
《思考囲い》《コジレックの審問》などの手札破壊と、白&黒のパーマネント除去を用いてゲームの流れをこちらのペースに持ち込みつつ、《石鍛冶の神秘家》で《殴打頭蓋》などを持ってきて装備品で強化されたクリーチャーで攻撃して殴り勝つ。
なかなか歴史の長いデッキで、白単よりも直接的に対戦相手を妨害でき、青系のデッキへの対抗策を苦にしないという点を評価して用いるプレイヤーが根強く存在する。
最近のセットからも新戦力を得ており、《スカイクレイブの亡霊》はコストの軽いカードが重視されるレガシーではほとんどの土地以外のパーマネントを処理してしまうアーミーナイフのような万能っぷり。
《敵対工作員》は相手の石鍛冶のようなサーチカードに対して瞬速で飛び込ませれば、相手は何も得られずこっちはカード1枚を得られるというこれまた素敵なヤツ。レガシーであれば《湿地の干潟》のようなフェッチランドがあふれているので、これの起動に対して使えば土地破壊としても機能する。
相手していて苦しいこの「デッドガイ・エール」。そのスタート地点はグランプリ・フィラデルフィア2005。アメリカの強豪プレイヤーであるクリス・ピキュラ/Chris Pikulaがこのトーナメントに持ち込み、決勝ラウンドに進出を果たしたことで白黒の手札破壊を軸としたデッキが世に知られることとなった。このデッキのことを「ピキュラ黒」とか単に「Pikula」と表記することがある。如何にピキュラというプレイヤーがリスペクトされているか伝わるというものだ。
そして序文のちょっとした感動というのが、このリストが掲載サイトで「Pikula」と分類されていたことに対するもの。16年経っても、ピキュラの組んだデッキは忘れられていないんだなぁ。というわけで、今回はその2005年のデッキも一緒に紹介だ!
10 《沼》 4 《Scrubland》 1 《汚れた原野》 4 《血染めのぬかるみ》 4 《不毛の大地》 -土地(23)- 4 《闇の腹心》 3 《ナントゥーコの影》 4 《惑乱の死霊》 -クリーチャー(11)- |
4 《暗黒の儀式》 4 《強迫》 2 《呪われた巻物》 4 《トーラックへの賛歌》 4 《陥没孔》 2 《ジェラードの評決》 4 《名誉回復》 2 《仕組まれた疫病》 -呪文(26)- |
4 《萎縮した卑劣漢》 2 《ファイレクシアの抹殺者》 3 《真髄の針》 2 《暗黒破》 2 《剣を鍬に》 2 《仕組まれた疫病》 -サイドボード(15)- |
これぞ元祖「ピキュラ黒」であり、「デッドガイ・エール」と呼ばれるデッキの始祖である。ビールの方のデッドガイ・エールは豊潤な香りが特徴的だそうで、このリストも……う~む、深く吸い込みたい最高の芳香を放っているなぁ。何度見ても惚れ惚れするほど美しいリストだ。
時代は2005年、つまりそこには現レガシーの定番カードのほとんどが存在しない。メイン4枚の《強迫》から、《思考囲い》すらないというのが伝わるだろう。
デッキとしては中速~低速の、コントロール寄りのミッドレンジというところか。コントロールといってもカードは極力軽いコストのもので、手札破壊を中心に対戦相手にとって理想的なゲーム展開にならないように、序盤から能動的に妨害を仕掛けていく構成になっている。上記の2021年版でも使われているが、使い捨てのマナ加速である《暗黒の儀式》を採用していることからも、現スタンダードなどで言うコントロールとはベクトルが大きく異なることがわかるね。
《暗黒の儀式》により1ターン目から《トーラックへの賛歌》+《強迫》で3枚捨てさせたり、《強迫》で《稲妻》や《剣を鍬に》を落としながらの《闇の腹心》、あるいは《惑乱の死霊》といったイケイケなスタートを切ることが可能だ。
そこからさらに手札を捨てさせたり、《陥没孔》《不毛の大地》で土地を割ったり。
この動きを黒単だけで行うとカードが足りないので、《トーラックへの賛歌》追加枠である《ジェラードの評決》や土地破壊兼万能除去の《名誉回復》のために白を足しているのである。
後のレガシーの白黒デッキに比べると圧倒的に黒の比率が高く、ほとんど黒単のデッキなのである。
しかしまあ、16年も前のデッキとあって、カードチョイスが今日のレガシーでは全く見なくなったものばかりでなんとも郷愁的な気持ちにさせられる。《闇の腹心》は絶対的なカードだったし、《ナントゥーコの影》は《タルモゴイフ》と並ぶ2マナの殴り屋のエースだった。《惑乱の死霊》が殴りだしたら止まらないという光景も大会のどこでは見られたしね……
サイドボードには個人的にカード名が大好きな《萎縮した卑劣漢》が4枚!
《漁る軟泥》も良いけどやっぱり卑劣漢を使いたいんだよなぁ~。そういう意味では《ファイレクシアの抹殺者》も心底使いたいカードだ、1ターン目《暗黒の儀式》から叩きつけてノンクリーチャーデッキを苦しめたい……!
などなど、いろんな思いが湧いてくる。《呪われた巻物》も……
とか話してたらキリがないのでここらで締めよう。幸い、この2005年のデッキリストには、今日のレガシーで使用できなくなってしまったカードは1つもない。もっと強いカードが出たり、異なったコンセプトのデッキの方が環境に適していたりで使われなくなっただけで、使用が禁止されたわけではないのだ。2021年、あえて2005年仕様の「ピキュラ黒」で大会に出ることだって、それはプレイヤーの自由だ。否、むしろ出たい!
古き良きカード、デッキでノスタルジーにひたるためにプレイする、これこそがレガシーのそもそもの醍醐味。自分が本当に使いたいデッキとともに、レガシーを楽しもうじゃないか。
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