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戦略記事

岩SHOWの「デイリー・デッキ」

デイリー・デッキ都市伝説:赤いランプの真相(ヒストリック)

岩SHOW

 都市伝説。それは近現代において人から人へ伝えられ広がる噂話、根拠は不明で曖昧なもの。嘘か真かわからない、怪しい噂の数々……人類の起源や歴史を覆すもの、陰謀論、宇宙の秘密。マジックの世界にもそんな都市伝説は存在……するね、するんじゃないかな。

 そこで今回思い立って、新企画を立ち上げた。「デイリー・デッキ都市伝説」! 毎週金曜に掲載している「今週のCool Deck」に続く企画ものだ。完全に思いつきで始めたので、このコーナーは不定期でやらせてもらえたらと考えております。相変わらずふざけたことやってんなと、《にやにや笑いのトーテム像》みたいな表情で見守っていただければ幸いでございます、押忍。

 今回語られる都市伝説。それは――

 

都市伝説その1:《成長のらせん》《探検》はにもある。

 

 マジックはマナが命。マナあってこそ数々の強力なカードは唱えられる。そんなマジックの根源とも言えるマナを多く得ようと、昔から作られてきたのがランプデッキ。

 ランプとは「Ramp」であり、ramp upで生産量を上げるという意味になる。マナの生産量を上げるデッキということで、《不屈の自然》のような土地を戦場に出す呪文や、《スランの発電機》のようなマナを生み出すパーマネントを用いて大量かつ恒久的なマナを得る。

 その膨大なマナから、コストが非常に重たいが戦場などに与える影響が大きく、1枚で逆転可能な呪文を叩きつけることで勝利を手にする。その豪快さ、力でねじ伏せる快感に取り憑かれてこのデッキを愛用し続けるプレイヤーは少なくない。

 そんなランプデッキを支える、土地を戦場に出す呪文において、歴代最強クラスの1枚が近年登場しランプの一時代を築き上げた。《成長のらせん》である。

 青と緑の2色ではあるが、カードを1枚引いて手札から土地を出してもよい、という強力なことが書かれているインスタントだ。

 ランプはこのマナ生産を加速させるカードを用いると手札が減り、結果マナは大量にあっても手札が空という敗北ルートがつきもの。それを1枚ドロー付きで回避させてくれるらせんは非常に素晴らしいもので、またインスタントなので相手の様子を見ながら唱えられる点も歴代の同様のカードと一線を画す。

 このカードは土台になった1枚があり、それが《探検》だ。

 こちらもカードを1枚引き、そのターンにプレイできる土地の枚数を1つ増やすソーサリー。やっていることは非常によく似ている。現在この2種はヒストリック環境において共存しており、両者を採用したランプデッキを組むことが可能だ。2マナのドロー付きマナ加速が8枚、安定した滑り出しが期待できるのである。

 ここまでは多くのプレイヤーの周知の事実であるが、ここからが知る人ぞ知る裏の情報。この緑のマナ加速と同等の性能を持ったものが、赤にもあるというのだ。

 確かに赤はマナ加速の役割を与えられている色ではある。爆発的にマナを生み出す《炎の儀式》や、宝物・トークンを生成する呪文の数々など備えてはいる。だがそれらに共通するのは、瞬間的な加速であるという点。赤は燃え盛る炎や沸き起こるマグマのように一時的にマナを発生させることは得意だが、土壌を成長させ豊かなものにしてマナを得る緑のように恒久的にマナ生産量を伸ばすということはできない色のはず――である。

 しかしながらその常識を打ち破る1枚が、同じくヒストリック環境にあるというのだ。2マナで、ドロー付きで、恒久的にマナが得られる。そんなカードがあるのか、信じるか信じないか……リストをご覧になってから。

Bigtaketen - 「赤単ランプ」
ヒストリック (2021年2月17日)[MO] [ARENA]
14 《冠雪の山
4 《大瀑布
3 《不詳の安息地
1 《オラーズカの拱門
1 《次元間の標
-土地(23)-

4 《砕骨の巨人
4 《真面目な身代わり
4 《不屈の巡礼者、ゴロス
1 《絶え間ない飢餓、ウラモグ
-クリーチャー(13)-
4 《精神石
4 《浄化の野火
4 《ヴァラクートの覚醒
3 《神々の憤怒
4 《反逆の先導者、チャンドラ
1 《目覚めた猛火、チャンドラ
4 《精霊龍、ウギン
-呪文(24)-
2 《黄金架のドラゴン
2 《アゴナスの雄牛
3 《墓掘りの檻
2 《マグマのしぶき
2 《力ずく
2 《焦熱の竜火
1 《乱動する渦
1 《目覚めた猛火、チャンドラ
-サイドボード(15)-
Bigtaketen氏のTwitter より引用)

 

 ヒストリックの「赤単ランプ」だ。緑の力を借りなくともランプは組めることをこのリストが証明した、というのは決して過言ではないはず。

 このデッキが用いるマナ加速は《精神石》《真面目な身代わり》《不屈の巡礼者、ゴロス》。《反逆の先導者、チャンドラ》もマナ加速と捉えることができる。しかし肝心の《成長のらせん》は……ある。よく目を凝らして見てほしい。

 ……そう、《浄化の野火》のことだ。

 何を言っているのかと思われるかもしれない。このカードはマナ加速じゃない。むしろ土地を破壊するカードである。主に対戦相手の土地に対して唱えて、《ロークスワイン城》のような何か特殊な働きをする土地を破壊する。2マナという軽さで土地破壊は破格だが、代わりにその土地のオーナーは基本土地を1枚ライブラリーから探してきてタップ状態で戦場に出す。マナが使える数は減らさず、基本でない土地の対策として用いるカードだ。

 あるいは自分の土地に対して使用し、ライブラリーから土地を戦場に出すことによって《硬鎧の大群》のような上陸能力を誘発させるのにも使える。1枚ドローがついているので手札消費もなく、モダンなどのフォーマットであれば基本土地を使わないデッキもあるので、そういう相手には2マナで土地破壊としても機能する。

 ここまで説明してもまだマナ加速として側面が見えてこないが、それもそのはず。単品で用いた場合ではそうなってしまう、これはもう1つのカードと組み合わせて真価を発揮するのだ。カードリストを今一度眺めてみてほしい。

 さあ、見つけたときには鳥肌が立ったことだろう、答えは……《大瀑布》。

 この土地には「破壊不能」と書かれている。それは文字通りそのまま破壊されないということだ。つまり……自分の《大瀑布》を対象に《浄化の野火》を唱えるのである。破壊はされず、されどそのオーナーは基本土地を1枚ライブラリーから戦場に出せる。2マナで土地1枚分加速し、かつドロー付き。これが赤い《成長のらせん》、ソーサリーなので《探検》と言った方がより適切か。いずれにせよ2マナ1ドロー付きマナ加速の正体なのである。

 瀑布野火のマナ加速コンボと前述のカードで使えるマナを増やし、相手のクリーチャーは《神々の憤怒》などで処理し、《目覚めた猛火、チャンドラ》《精霊龍、ウギン》《絶え間ない飢餓、ウラモグ》など絶大なカードパワーを誇る面々に繋げるというのがデッキの理想的な動きだ。

 《大瀑布》は何もそのためだけに採用されているのではなく、マナが多く得られるようになったらこれで5色のマナを得て《不屈の巡礼者、ゴロス》の能力を起動。3枚のカードをマナなしで唱えるという強力無比なアドバンテージを獲得し、対戦相手と圧倒的な戦力の差を形成するのだ。

 以上により、今回の都市伝説は限りなく真実に近いということが分かってもらえたと思う。

 今後もこのようなマジック界でまことしやかに囁かれている噂、そんなことがあり得るはずがないという矛盾したデッキなどをこのコーナーでは取り上げていきたいと考えている。あくまで都市伝説、《大瀑布》が引けず《浄化の野火》がただのサイクリングと化してしまっても当方は一切の責任を持ちません。自己判断の下、カードの真実と向き合ってください。このデッキを使うか否かは、あなた次第です!

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