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戦略記事

岩SHOWの「デイリー・デッキ」

バーンデッキ、ライズアゲイン(ヒストリック)

岩SHOW

 マジックにおける回復、すなわちライフを得るという行動について。これはかつてあまり強い動きとして認識されていなかった。

 ライフを失わせるクリーチャーらは戦場に残り、生き延びている限り複数回ライフを失わせる働きをするのに対して、ライフを得るカードというのは使い切りであることがほとんどで、結局カード1枚とマナを使って得たライフはクリーチャーたちに簡単に奪い返されてしまう。

 マジックを始めたばかりのころ、仲間内では全員が《命の川》を全力でデッキに投入していたものだが、マジックというゲームを知るにつれて1人また1人とデッキから抜いていった、というのは初心者の通過儀礼だった。

 そう、これは古い時代の話。現在はライフを得ることしかできないカードというのはほとんどなくなって、回復しつつ同時に何かを行うというものが多くなった。そしてそれらの中にはかなり強力なものも見られるように。絆魂能力とかもかなりわかりやすいね。戦場に残り、相手のライフを失わせるクリーチャーでありながら回復役もこなす使いやすいクリーチャーがちらほら。

 そして近年最も強烈な回復カードと言えば《自然の怒りのタイタン、ウーロ》で異論は無いだろう。3マナで3点回復……と同時にカードを引いて手札から土地を出せる。脱出で戦場に姿を現してもう1回3点回復、攻撃して3点回復……一体この巨人に何点回復されたことやら。

 3点と言えば赤いデッキにとってはカード1枚分である。《稲妻》に見られるように、赤は手札を消費し即座に対戦相手にダメージを与える=ライフを失わせる呪文に長けている。クリーチャーのように戦場には残らず使い捨てだが、どれだけブロックできる者がいようがお構いなしにプレイヤーにダメージを与えられるというのは魅力的。

 《稲妻》は無条件で1マナ3点と効率が良すぎるため、近年のセットではこれをベースに調整したものが複数見られるようになった。例えばヒストリック環境だと2マナの《稲妻の一撃》、対戦相手にすでにダメージが与えられていれば1マナになる《批判家刺殺》、そしてウィザードをコントロールしていれば1マナ3点の《魔術師の稲妻》なんかは優秀なカードだ。

 こうしたダメージ呪文を多く採用したデッキが「バーン」と呼ばれる。バーンデッキで手札使って3点当てて、返しで何度でも回復させるウーロが出てきたら……心が折れるよ! そんなわけで立ち位置はあまり良くないデッキだったのだが、ヒストリックにおいてウーロの姿を見ることは今後なくなった。

 お、こうなったらバーベキューの時間再びかな? 直火でこんがり焼き上げる「バーン」デッキのサンプルリストを見てみよう!

Lexi Steyer - 「ボロス・バーン」
ヒストリック (2021年2月16日)[MO] [ARENA]
7 《
4 《聖なる鋳造所
4 《感動的な眺望所
2 《断崖の避難所
4 《針縁の小道
-土地(21)-

4 《損魂魔道士
3 《ギトゥの溶岩走り
4 《炎樹族の使者
4 《遁走する蒸気族
4 《ヴィーアシーノの紅蓮術師
-クリーチャー(19)-
4 《稲妻の一撃
4 《舞台照らし
4 《魔術師の稲妻
2 《批判家刺殺
4 《スカルドの決戦
2 《実験の狂乱
-呪文(20)-
4 《暴れ回るフェロキドン
2 《ゴブリンの鎖回し
2 《削剥
4 《不可解な終焉
2 《安らかなる眠り
1 《反逆の先導者、チャンドラ
-サイドボード(15)-
Lexi Steyer氏のTwitter より引用)

 

 「ボロス(赤白)・バーン」だ。赤単色をベースに白が足されている理由は一目で分かるが、後述で。とりあえずヒストリックの土地は優秀だなというのを再認識。早いデッキにとって《感動的な眺望所》のような土地が使えるのは非常に大きいね。

 バーンデッキと言っても、対戦相手をバーンする(燃やす)呪文だけでなく、クリーチャーにも多くの枚数を割いているのが常だ。2マナ以下で通算3点ほどのダメージを与えてくれるものであれば見込みあり。ヒストリックには1マナ2/2速攻に成り上がれる《ギトゥの溶岩走り》、同じく1マナで果敢でかなりデカくなることもある《損魂魔道士》とバーンデッキのスタートを切るのに相応しい顔ぶれが揃っている。どちらもウィザードなので《魔術師の稲妻》との相性も◎。

 そういったクリーチャーを展開して攻撃し、対戦相手の戦場にこちらの攻撃を食い止めるブロック役が現れたら、各種ダメージ呪文で焼き払い、攻撃をねじ込む。これが基本的な動きで、相手のライフを焼き切れる状況だったり、これ以上は攻撃が通らないというくらい固められたり、そもそもクリーチャーを出してこない相手だったら、それらのインスタントやソーサリーを対戦相手本体に投げつけることになる。とにかく速度重視で、ダラダラ戦うのはあまり得意なデッキではない。

 そのデッキの性質上、手札の消費は激しい。かつてのバーンはすぐに手札が0になり、毎ターン引いた1枚を投げつけるだけの息切れ状態に陥るのが常だった。現在のバーンにはこのデッキでも無理なく用いることのできる手数を獲得する手段、アドバンテージを稼ぐカードが入るようになった。《舞台照らし》と《実験の狂乱》だ。

 《舞台照らし》は期限付きではあるものの、軽く扱える2枚ドローのようなもの。《実験の狂乱》は手札が使えなくなるという大きいデメリットを抱えるが、ライブラリーの並びさえ良ければ通常では考えられないような手数を生み出す。《遁走する蒸気族》との相性はまさしく最強で、また手札は使えないが追放されているカードは問題ないので《舞台照らし》とも仲良しだ。

 このアドバンテージ源の枠に名乗りを上げたのが白を足している理由、それは新カードである《スカルドの決戦》だ。

 スタンダードでも4マナで実質4枚ドロー、そしてその後にクリーチャーまで強化するパワーカードっぷりを発揮しているが、なるほどヒストリックではバーンに足すという手があったか。

 クリーチャーも、ダメージ呪文もすべてがコスト軽めに抑えられているこのデッキであれば、追放した4枚すべてをすっかり使い切ってしまうことも可能。さらには戦場にいるクリーチャーたちを強化してダメージを上昇させ、相手のライフを一気に詰めまで持って行ける。クリーチャーは除去したいが、そうするとダメージを与える手段が失われる……バーンのジレンマを、+1/+1カウンターという形で解決だ。

 ヒストリックはこれから新たな局面を迎える。そこにバーンデッキの姿を多く見ることになるかは未知数だが、以前よりもチャンスのあるデッキになったことは確かだ。簡単に見えて判断が難しいデッキでもあるので、プレイする際には数をやり込んで感覚をしっかり身につけるのが吉。しっかり立てたプランの先にスカルドなどの爆発的なアドバンテージ、それはまさに歓喜の味わいだ。

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