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戦略記事

岩SHOWの「デイリー・デッキ」

グルール・アグロ:万を率いる隊長であるぞ(ヒストリック)

岩SHOW

 「威厳ある万卒隊長」……これ、マジックのあるカードの名前なんだけれども。わかるかな? これだけでもう能力まで全部わかったという人は結構なマニアだ。

 まず威厳がある、という時点で若輩者ではなさそうだ。何十年と戦い続けた人間、あるいはエルフなら数百年。堂々としたその姿と積み重ねた実戦経験からくる確かな知識、老指揮官を思い浮かべてしまうことだろう。

 万卒隊長って聞いたことないけどなんだかすごそうな肩書きだ。調べてみると英名では「Majestic Myriarch」。Myriarchとは難しい単語のようで、簡単な翻訳機能では何も出てこない。どうやら10,000人を指揮したり支配する者のことらしく、日常会話では絶対に使うことがないだろう。まあ万の軍勢を率いようと思ったらそりゃあ威厳がないとね。

 では、そのお姿を拝見しよう!

 ……動物なんかいっ!

 初めて見たときにはこんなツッコミをしてしまった。タイプは希少種族のキマイラ。合成生物のことで、イラストでもライオンの身体に猛禽類の頭部、コブラの尻尾と典型的なキマイラスタイルを披露している。まあ、確かに威厳はあるね。

 これが万を率いる指揮官というのは……おそらくこういうことじゃないかな。「ライオンにタカにコブラ、強い動物の集合体は百獣の王どころか万の獣を従える最強の生物である!」てな具合のね。

 そうとなれば肝心なのはサイズと能力。サイズは自分のクリーチャーの数の倍。これ1体だけなら5マナ2/2と頼りないが、1体でもお供がいれば4/4と平均サイズ。3体以上からコストパフォーマンスに優れた怪物となっていく。クリーチャーを並べるデッキで使えってことだ。

 能力も同じく横並びを推奨するもので、かつ何でも並べろというよりはバリエーションがあった方が活きてくる。戦闘の開始時に他のクリーチャーが持っている飛行やトランプルなどのキーワード能力を自分も得るというものだ。これはなかなか面白い。能力は複数持っているがサイズには恵まれないクリーチャーなんかと並べて、サイズはこの万卒隊長に任せな、ってな使い方をすると強そうだ。もちろん、素で強いヤツらと並べられれば最高。

 今日はこの可能性に満ちあふれた獣の隊長で暴れ回る、ヒストリックのデッキを紹介だ!

Donald Scott - 「グルール・アグロ」
ヒストリック (2020年12月21日)[MO] [ARENA]
5 《
4 《
4 《踏み鳴らされる地
4 《根縛りの岩山
1 《隠れた茂み
4 《岩山被りの小道
-土地(22)-

3 《金のガチョウ
4 《義賊
3 《炎樹族の使者
2 《楽園のドルイド
4 《グルールの呪文砕き
3 《不屈の神ロナス
2 《灰のフェニックス
3 《探索する獣
2 《熱烈の神ハゾレト
2 《再燃するフェニックス
3 《栄光をもたらすもの
3 《威厳ある万卒隊長
-クリーチャー(34)-
4 《グレートヘンジ
-呪文(4)-
2 《漁る軟泥
3 《再利用の賢者
1 《長老ガーガロス
3 《墓掘りの檻
3 《削剥
1 《燃えがら蔦
2 《混沌をもたらす者、ドムリ
-サイドボード(15)-

 

 緑と赤の優秀なクリーチャーたちがズラリ! いわゆる「グルール・アグロ」に万卒隊長を取り込んだものである。

 万卒隊長のサイズを保つためにもクリーチャーは多ければ多いほどよく、そのためその総数は34枚と圧倒的なものに。癖のあるカードを使いこなすには中途半端はよくない、これぐらい尖ったスタイルで挑まないとね。

 そして数だけでなく、その顔ぶれも重要。最強のキマイラを生み出すために、可能な限りキーワード能力を持つクリーチャーを採用したいところだ。このリストはその辺りは全くぬかりなし。序盤の展開を滑らかにするための《炎樹族の使者》以外は皆何かしら能力を持っている。1マナのマナクリーチャースロットに、パワーが1あっていざとなったら殴れることができる《ラノワールのエルフ》ではなく、飛行を持っている《金のガチョウ》を採用していることからも、その徹底っぷりがうかがえる。

 以下に各能力についてまとめてみた。

 これ全部ついたらまさしく最強生物誕生だな!

 とりあえずはかなりの確率で速攻を得られる、それだけでも偉い。5マナのクリーチャーを出して何もせずターンを返して除去されました、じゃちょっと厳しいものがあるからね。

 ついでに飛行も持ってくれたら高確率で対戦相手本体にダメージを叩き込める。破壊不能や呪禁は得る前、戦闘に入る前に除去呪文を使われたりすると意味がないと言えばそうだが、逆に戦闘にさえ入ってしまえば何も恐れる必要がなくなるのは安心感がある。そこに警戒も絡めば殴り得という構図に。こうなればもう勝利は目前だ。

 組み合わさって嬉しい能力としては、接死とトランプルも強力だ。

 初心者のためのルール解説をしておくと、接死とトランプルを持ったクリーチャーが対戦相手のクリーチャーにブロックされた場合、そのブロックしてきたクリーチャーに割り振るダメージは1点だけでよい。接死のおかげで1点でも与えれば致死ダメージとカウントされるからだ。相手のタフネスがどれだけあろうと関係ない。ブロッカー1体につき1点割り振ったら、余剰ダメージはトランプルですべて対戦相手本体へと抜ける。ブロックなど無意味とあざ笑う、必殺の攻撃をお見舞いできるのである。これは狙いたい!

 クリーチャー陣の中でも注目は2体の神。《不屈の神ロナス》と《熱烈の神ハゾレト》だ。

 それぞれに破壊不能+αを備えている。条件を満たさないと戦闘に参加できないという弱点を持つものの、このデッキでは比較的簡単にそれが達成できるだろう。ロナスはパワー4以上のクリーチャーをコントロールしていると、ハゾレトは手札が1枚以下になると、それぞれ攻撃できる。単純に3ターン目ロナス、4ターン目ハゾレトと動けばロナスが殴りにいけるし、次のターンに万卒隊長と動けば手札もかなり減っているだろうから能力モリモリのキマイラとともにWゴッドが突撃かまして一気にゲームエンドだ。うわ~、毎ゲームやりたいよこの動き。

 神たちは《神の怒り》などの破壊やダメージの全体除去にも耐性があり、これが立っているだけで万卒隊長からの即決着が狙えるのがなんとも頼もしいね。

 意外な名前と面白い能力の組み合わせ、思わず使ってみたくなる夢に満ちた《威厳ある万卒隊長》は神話レアの鑑だ。来る『カルドハイム』でも同じく面白いカードや、これと組み合わせたいキーワードたっぷりのカードが出てくることを願うね!

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