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岩SHOWの「デイリー・デッキ」
ブルバックのアドバイスはしつこすぎるの巻(ヒストリック)
2020年、マジックシーンでは……いろんなことがあったね。
春先から各種トーナメントはオンライン開催となり、MTGアリーナのゲーム内から誰でも参加できる賞金イベント「アリーナ・オープン」がスタート。初日突破・賞金獲得と活躍したデッキリストが連日飛び交って大盛り上がりだったなぁ。
『イコリア:巨獣の棲処』ではあのゴジラの怪獣たちとコラボ。胸躍らせながら毎日デッキを作りまくったものだ。他にも各種トーナメントで誰が優勝したとか、惚れ込んだセットやカードがリリースされたとか、各自いろいろと思い出深い出来事があっただろう。
当コラム的には、かなり大きい変化というか収穫というか……ちょっと楽になったことがあった。『基本セット2021』から「ライブラリーの一番上からN枚、墓地に置く」という処理を「切削する」と表現するようになったのだ。毎回コラムを書くにあたって、この処理を行う工程を「ライブラリーから墓地に置いて」と書いてきていたのだが、それが「切削して」に置き換わるだけで随分とスッキリするものである。キーボードを打つ手間も文章のモッサリ感も解消されていうことなし。2020年に感謝、感謝なのである。
もともと海外では対戦相手のライブラリーを墓地に落とすことでカードを引けなくさせて勝利するデッキのことを「mill(切削)」と表現していたので、それがそのまま導入されたんだろうね。切削を行う最古にして代表的なカード《石臼》の英名もその語源と言えるだろう。ライブラリーは知識の詰まった脳であり、先人の記憶であり、大量の呪文が納められた書庫である。それを攻めるにはガリガリ削ってすり潰すのが手っ取り早いのだろうね。
精神を削るには、それを疲弊させるというアプローチもある。ラヴニカ次元のギルドであるアゾリウス評議会に所属する裁判官、ブルバックは法律と手続きの達人だ。これに関する知識で彼に並ぶものはおらずアゾリウスでは「不可能を可能にする」というのを「ブルバックを論破する」と表現するくらいだとか。彼をカード化したものが《文飾衒才のブルバック》。
アートではどこまでも続きそうな巻物を読み上げている。延々と専門的な話をし続けて相手の心をクタクタにさせるということだろうか、彼が戦場にいると対戦相手のライブラリーを切削する効果は倍になる。切削カードで相手がカードを引けない状態、通称ライブラリーアウトさせて勝つデッキにおいては、勝利への速度を倍増させるスーパーカードなのだ。『Jumpstart』が使用可能なフォーマットで切削デッキを組むのであれば、これを使わない手はない。ヒストリック環境で切削したいのであれば必須カードと言えるだろう。
今日はブルバックを使ったデッキの中でも、特別衝撃的なビジュアルをしたものを見つけたので紹介しよう。サイドボードなしのメイン戦のみ、BO1仕様のものだ。
10 《島》 2 《森》 4 《繁殖池》 4 《内陸の湾港》 2 《寓話の小道》 -土地(22)- 22 《しつこい請願者》 4 《漁る軟泥》 4 《文飾衒才のブルバック》 -クリーチャー(30)- |
4 《通報の角笛》 4 《集合した中隊》 -呪文(8)- |
デッキリスト、短ぇ! それもそのはず、デッキ内に何枚でも採用可能な《しつこい請願者》デッキだからだ。
これを22枚ドカッと採用。請願者は能力で切削を行う。1枚削る方は……おまけみたいなものだ。肝心要の能力はアドバイザーを4体タップすることで起動し、12枚削る方。これをブルバックがいる状態でぶっ放して24枚削るという豪快な切削を試みようというわけ。
ここで重要になってくるのが、ブルバックもアドバイザーであるという点。つまり請願者が3体いる状況でブルバックを出せば、その時点で24枚削り落としが可能なのである。夢のコンボのようで、割と現実的。まさかアドバイザーという珍しいタイプがここにきて活きてくるとは……。
この「シミック・アドバイザー」とでも呼ぼうか、野心に満ちたデッキにはアドバイザーのための青だけでなく緑も足されている。青単でも成立するデッキなのだが、緑を足した方がデッキとしての完成度とコンボ成立の確率がアップする。
まずクリーチャーに《漁る軟泥》を採用。
切削するだけでは《死の飢えのタイタン、クロクサ》のようにそれを恵みとして享受するデッキがあるので、墓地から戻ったり唱えられたりするカードをしっかりとこのウーズで処理するのだ。クリーチャーを喰えばサイズも上がるしライフも得られるので、対アグロには軟泥で盤面を支えてアドバイザーの集結まで繋ぐという戦法も取ることができる。
そして、コンボの成立を大きく支えるのが《集合した中隊》。
請願者が2体いる状況で、相手のターンにこれを唱えて、3体目の請願者とブルバックを入手。これらが戦場に出てきてアドバイザーが4体集結、タップして24枚。続くこちらのターンでまた4体タップからの24枚。計48枚を瞬く間に奪い去れる! これは予想していなければ目玉が飛び出る衝撃だろう。意識の外から降ってきたブルバックの長すぎる法律解説! う~ん……気絶! 請願者2体と4マナでリーチってのはアツいねぇ。
デッキがアドバイザーでほぼ統一されていることをさらに強みにするのが《通報の角笛》。
これを戦場に出し、アドバイザーを指定。まあ人間でも良いんだけれども、せっかくなので他のデッキだと指定することがまずなさそうなアドバイザーにしておこう。これで毎ターン、ライブラリーの一番上がアドバイザーであれば手札が1枚増える。計26枚のアドバイザーが入っているので、結構な確率で毎ターン2枚引いている状態になれるだろう。
これだけでも強いが、アドバイザーを唱えるためのコストが{1}少なくなるされるのもかなり偉い。請願者もブルバックも並べてナンボのカードなので、それのコストが減少することの恩恵は大きい。特にブルバックは除去されたくないので、アドバイザーが揃っている状態までは戦場に出したくない。かといって抱えすぎていると3マナというコストもあって出しづらくなる……そういったジレンマを解消だ。中隊と角笛でコンボ成立を大きく後押しするべし!
実際に使ってみた感想としては、僕はこのリストのままだと全然勝てなかった。なぜかというと、ゲーム開始時の手札に土地が2枚しか来ないというゲームがほとんどだったからだ。
BO1で対戦する場合、開始時の手札はデッキ内の土地の比率に近い枚数の土地が含まれやすくなっている。このリストの生みの親は土地を引きすぎることを嫌ってその総数を22枚に抑えたのだろう。実際このデッキは土地ばかり引くとそれの使い道が全くないので無駄ドローに成り下がってしまう。
しかしながら中隊のことを考えれば4マナまでスムーズに土地を置いていきたい。僕は22枚の構成でゲームを始めると初手に2枚、その後のドローを合わせても4ターン目に4枚目の土地を置けないというゲームが非常に多かった。なので23枚に増やしたところ、初手に3枚来ることが多くなりそういったトラブルが大きく減少した。その分土地を引きすぎるリスクは上昇しているのだが……そもそもがブン周り前提のデッキでもある。あまり先のことは考えず、理想の手札が来たときにしっかり勝てるように構築するのが良いだろう。
そんなわけで、ブルバックらアドバイザーの知識による暴力を体感してみたいプレイヤーは、このリストを参考に、自分にフィットする形を組んでみよう。24枚のカードが踊るように墓地に落ちていくアニメーションは、見ているとすご~く健康的な気分になれるよ!
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