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岩SHOWの「デイリー・デッキ」
青単マーフォーク a.k.a. Splinter Fin(モダン)
何の世界でも「その道のプロ」というのはいるものだ。
マジックでプロとなるとMPL所属プレイヤーが何人いて……という話になるが、もっと別の視点で、たとえば特定のデッキタイプをひたすらに使い続けている人のことをプロと形容することもあるよね。どんな環境・時代でもコントロールやアグロをひたすらに使い続ける、一種の職人たち。あるいはもっと狭めて、特定の部族デッキしか使わない人とかもいる。
今日取り上げるのはそんなプレイヤーが生み出した珠玉の逸品。そのプレイヤーは「Nikachu」。彼はカナダのプレイヤーで、Magic Onlineを中心に活動している。主にモダンをプレイし、使用するデッキは……「マーフォーク」だ。
自身をマーフォーク・マスターと称するほどこの部族デッキをこよなく愛し、そしてやり込んでいる。常に新セットでマーフォークがいないかをチェックし、時折マーフォーク以外のデッキを使うことはあっても基本は海洋民族一筋で配信を行っている。筋金入りのマーフォーク愛好家として長く活動しているのだ。
そんなマーフォークのプロが2020年も末に差し掛かったタイミングで意欲作を世に放った。その名は「Splinter Fin」。直訳すると「破片の鰭(ヒレ)」。なんのこっちゃというデッキ名だが、これには元ネタがある。以前にも紹介した《欠片の双子》。モダン初期におけるコンボデッキの代名詞であり、環境を去った今でもコンボの代名詞として広く認知されているデッキ名およびキーカードの英名が《Splinter Twin》。Twinをマーフォークを表す鰭に置き換えたダジャレというわけである。双子コンボのような揃えば即勝利というコンボを有したマーフォークデッキということだ。
一体どんなものなのか……何はともあれリストを確認だ。
7 《冠雪の島》 4 《闇滑りの岸》 4 《ワンダーワインの分岐点》 3 《魂の洞窟》 2 《変わり谷》 -土地(20)- 4 《アトランティスの王》 4 《真珠三叉矛の達人》 4 《マーフォークのペテン師》 4 《純視のメロウ》 4 《銀エラの達人》 4 《タッサの神託者》 -クリーチャー(24)- |
4 《霊気の薬瓶》 4 《虚空の杯》 4 《極楽のマントル》 4 《密輸人の回転翼機》 -呪文(16)- |
1 《夢の巣のルールス》
-相棒(1)- 4 《真髄の針》 3 《大祖始の遺産》 3 《四肢切断》 4 《否定の力》 -サイドボード(14)- |
こりゃまた2020年を詰め込んだマーフォークだなぁ。
マーフォークではないものの相棒には《夢の巣のルールス》を。2マナ域に主要カードが固まっているマーフォークにとってこれは便利な相棒だ。
《ワンダーワインの分岐点》《闇滑りの岸》と早いターンにアンタップ状態で出せる2色土地を採用することで、この相棒のために白および黒マナを足してもデッキの展開を遅れさせず、ライフを失うこともないといった構成だ。長期戦になっても墓地からマーフォーク軍団を再構築してやるという気概を感じるね。ルールスは2020年大いに話題になったパワーカードだ。今年を象徴する1枚だと言っても良いだろう。
そしてもうひとつ、2020年生まれのカードが。それこそがコンボを成す「鰭」の1つ《タッサの神託者》。
2020年初頭に現れたこのマーフォークは、「ライブラリーを何らかの手段で空にしてから出せば即座に勝利」ということでさまざまなコンボデッキを生み出した。それらのデッキではマーフォークであることはどうでも良かったのだが、Nikachuにとっては大きな問題だったことだろう。マーフォーク・デッキであり、同時にこの神託者コンボで勝つデッキを組む……それは高いハードルかに見えたが、さすがマスター。完璧なパートナーを発見したのだ。
それが《純視のメロウ》。
珍しいアンタップ・シンボル({Q})を持つ2マナのマーフォークで、アンタップさせながら白か青のマナを支払うことでライブラリーの一番上を見て、それを追放してもよいという変則的な占術のような能力を持っている。
追放するということはライブラリーが減るということ。この能力を何度も起動できれば、自身の青への信心以下の枚数のライブラリーを作り出して神託者WINを決められる……のだが、かなりの回数を起動しなければならず、生半可なことではない。
これを叶えてしまうのが《極楽のマントル》だ。
装備しているクリーチャーは、タップすると好きな色マナが得られる、《極楽鳥》さながらの能力を得る。つまり、これを装備してタップしてマナを得て、そのマナを支払いながらアンタップしてライブラリーを追放。これを好きなだけループできるのである。ライブラリーを吹き飛ばしたら最後は神託者でFinish!! 3枚コンボではあるがコストが軽いので3ターン目に決めることだって可能で、見た目以上にデンジャラスなコンボとなっている。マーフォーク同士で決まるというのもポイントが高い。
コンボ以外の部分はマーフォークデッキの基本的な構成要素だ。《霊気の薬瓶》から2マナのマーフォークを延々と展開し、それらで攻撃して殴り勝つ。
青いデッキ相手には《アトランティスの王》《真珠三叉矛の達人》で強化しながら、島渡りで止められない軍勢で圧倒だ。
ドローをもたらす《銀エラの達人》にタップ&能力失わせの《マーフォークのペテン師》と、薬瓶と相性の良いカード揃い。
これらとともにコンボパーツの2種類も展開し、ドローを調整しながら殴りにいけるというのがなんとも無駄がなく美しい。
殴り勝てればそれに越したことはなく、それが難しい相手や隙を見せたところにコンボを決めて勝利する。《虚空の杯》がそれをしっかりとサポートしてくれることだろう。
X=2で2マナの呪文がこれで打ち消されるように設定しても、薬瓶から展開したり《魂の洞窟》のマナを使ったりすればこちらは被害を受けずにコンボを決められる。
殴り勝つルートで《極楽のマントル》が不要であれば《密輸人の回転翼機》で殴って捨てて、別のカードを引き込めば良いのだ。
さすがはその道のプロのデッキとあって、完成度が高い。自分も何か突き詰めたい道がある、そんな時には、先人がいるジャンルであればその後を素直に追いかけて知識とテクニックを吸収するのが良いだろう。
未踏のジャンルに挑む場合は……君が先人になり、誰かがそれに続く。自他ともにマスターと認める領域にたどり着くまで、精進あるのみだ!
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