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戦略記事

岩SHOWの「デイリー・デッキ」

ラクドス・パイロマンサーに青を絡めて(ヒストリック)

岩SHOW

 デッキを円滑に回す上で何かが足りない。そういう場面に直面したときに、どのような行動を取るのが正しいのだろうか。

 構築を根本から見直す、さっぱりと諦める、プレイングがそもそも間違っているのか疑い他人のプレイを見て確認……などなど。

 デッキを組み直す際に考えられるのは、色を足すことだ。デッキが上手く機能しない、手札が尽きてしまいがちだったり、特定のキーカードが引けなかったりという時には、青のドローカードを足してみたくなるものだ。《渦まく知識》《思案》《定業》《手練》……青お得意の1マナでライブラリーを操作しつつカードを引きこむ呪文群。もともとが青いデッキなのであれば素直にこれらの採用は問題ない。他のカードを減らしてこの手のカードを増せば良いだけだ。

 しかしながらそういったカードが欲しいが、そもそも青くないデッキの場合。これは難しい。果たして色を足すというリスクを背負ってまでやることなのか、そこのところが問題だ。1マナドローカードやその他のアドバンテージが取れる手段を、青マナを使わずに用いられれば最高なのに……これは贅沢、無理難題なのだろうか。

 そんなことはない。先日開催されたMTGアリーナアリーナ・オープンにて見事最高位の報奨である2000ドルを勝ち取ったデッキリストを見ていただこう。

 そのデッキはまさに、青マナがなくても青のエッセンスによりデッキ運用がなめらかになっている、理想的なものだった。

Cabezadebolo MTG Noe Rivera - 「グリクシス・パイロマンサー」
2020年12月アリーナ・オープン 2日目7勝(賞金獲得) / ヒストリック (2020年12月12~13日)[MO] [ARENA]
4 《血の墓所
4 《湿った墓
3 《蒸気孔
4 《竜髑髏の山頂
4 《清水の小道
2 《河川滑りの小道

-土地(21)-

4 《縫い師への供給者
4 《戦慄衆の秘儀術師
4 《若き紅蓮術士
3 《死の飢えのタイタン、クロクサ
3 《海門の嵐呼び

-クリーチャー(18)-
4 《思考囲い
2 《血の長の渇き
2 《致命的な一押し
4 《村の儀式
4 《選択
2 《アングラスの暴力
3 《立身+出世

-呪文(21)-
1 《夢の巣のルールス

-相棒(1)-

2 《塵へのしがみつき
1 《儀礼的拒否
1 《強迫
1 《呪文貫き
3 《削剥
2 《霊気の疾風
1 《アングラスの暴力
3 《魔女の復讐

-サイドボード(14)-

 

 このリストはヒストリックの「ラクドス・パイロマンサー(あるいはアルカニスト)」と呼ばれる赤黒2色のデッキがベースだ。《若き紅蓮術士》と《戦慄衆の秘儀術師》がデッキの主役で、これらのカードを強く使えるようにすべてのカードが噛み合うものとなっている。

 墓地からインスタントかソーサリーを唱える秘儀術師のために《縫い師への供給者》で切削。これを《村の儀式》で生け贄に捧げてさらに切削して墓地を貯める。

 《村の儀式》は秘儀術師で使い回してドローするのも強く、紅蓮術士の生み出すエレメンタルを生け贄に捧げればカードの損失もない。墓地が貯まる性質を利用して、墓地から唱えられる《出世》のモードを持つ《立身+出世》を。

 《立身》は切削で落ちたり除去されたクリーチャーを墓地から戦場に戻したりするのにも使える。

 墓地が貯まるのであれば脱出して大暴れする《死の飢えのタイタン、クロクサ》も忘れちゃいけない。

 これも《立身》および《出世》のどちらとも相性抜群で、相手の手札とライフを強襲する。

 《思考囲い》を秘儀術師で連打するなどして相手のプランを崩壊させつつ、こちらはエレメンタルの大群でじわじわと強い盤面を作り上げていく……テクニカルで、完璧に扱うには力量が問われるが、それに見合う強さと面白さを兼ね備えた良いデッキである。《夢の巣のルールス》が相棒で使えるという点も見逃せない。

 このラクドスに青を足してグリクシスにしているわけだが、その足したカードが《選択》と《海門の嵐呼び》。

 確かに《選択》は土地の枚数を削っているこのデッキにとって序盤は土地を探しに行くのに、後半は決定力のあるカードを引き込むために使えて、その上紅蓮術士でトークンも生まれると、かゆいところに手が届く1枚ではある。しかしそのためだけに青を足すというのはあまり進んでやりたいことではない。

 しかしながらこのデッキでは「青マナがなくても使える」という後押しがあるので、これら青のカードを用いることが可能となっているのだ。そう、秘儀術師の能力で墓地から唱えるのであれば青マナの支払いはいらない。《海門の嵐呼び》も同じく、《立身》でリアニメイトさせるのであれば赤黒2色で問題なく運用できる。もちろん完全にそうやって使うために採用した場合、普通に引いてしまった場合に使えない手札となってしまうので、もちろん青マナは出るように土地基盤の調整が行われている。そうした下準備が「墓地から唱える3色目」の存在を許したということだ。うーむ、この発想はできそうでなかなか出てこないものだろうなぁ。目から鱗だ。

 いつ何時、何度唱えても強い《選択》はもとより、《海門の嵐呼び》というチョイスも絶妙だ。《立身》で釣って、後に唱えるインスタント or ソーサリーを倍にする動きは強力無比。《致命的な一押し》《血の長の渇き》《アングラスの暴力》コピーで除去祭り。《思考囲い》をコピーしたり続けての《立身》コピーでクロクサを2体釣ったりして相手の手札を根絶やしに。もちろん《選択》《村の儀式》コピーで手札をゴリッと増やすのもイイネ。ゲームを決める1枚となり得る、このために色を足すのも納得のチョイスだ。もちろんルールスの能力で墓地から唱えられるので、ゲームが長引いた際の立て直しも嵐呼びおかわりでバッチリだ。

 墓地から唱えると開き直ってはいても、何度も言うように手札に来てしまっては唱えるためのマナが必要で、結局のところヒストリックの豊富な多色土地がこの構造を可能にしていることは間違いない。

 現スタンダードにもある《清水の小道》《河川滑りの小道》はデメリットもなく扱えて優秀、そして《血の墓所》《湿った墓》《蒸気孔》はライフの損失こそあれど出しさえすればマナに不自由することはない。山か沼のタイプを持つ土地のおかげで《竜髑髏の山頂》も難なくアンタップ状態で出せるだろう。わがままを叶えてもらうには、地道な基盤作りが大事ってことだね。

 逆に言うとこれらの土地が揃っているのであれば、純正2色にこだわらずに一度この形を試してみた方がお得ってことだ。

 2色には2色の強さがあるように、青が足されたメリットがどれほどのものか、自分自身で体感するのが差を感じ取るには何よりも大事。サイドボードの打ち消しがどれほど効果的か、青を足すことでどれだけ差別化できているか。比較するゲームもまた楽しく有意義なもののはずだ。

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