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岩SHOWの「デイリー・デッキ」
エルドラージ・トロン(モダン)
「ウルザトロン」という括りにされているカードたちや、デッキがある。
英語圏では「~tron」という書き方で「○○実験室(や物理的装置など)」のような意味合いになるらしく、だとすればウルザトロンはウルザの実験室ということになる。ウルザとはマジック最古のキャラクターでもあり、旧ファイレクシアとの戦いにその生涯を捧げた結果、狂気に憑りつかれてしまったプレインズウォーカーであり、最高レベルの工匠である。彼は古代アーティファクトに関する知識が深く、それらを用いてさまざまな実験・研究を行っていたようだ。
《ウルザの鉱山》《ウルザの魔力炉》《ウルザの塔》の3種の土地はそんなウルザの活動拠点とも言えるだろう。
この3種の土地が揃えばウルザの実験は大成功、それぞれが無色マナを2つ・2つ・3つと計7マナ生産する爆発力を発揮する。いつしかこの3つの土地、そしてそれらを揃えて得たマナで重いカードを叩きつけるデッキのことを「ウルザトロン」、縮めてトロンと呼ぶようになったのである。
このトロンと相性が良いのは自然と無色のカードとなる。アーティファクトの数々は言うまでもなく、カーンやウギンといった無色のプレインズウォーカーを早いターンから叩きつけるのはそれだけでコンボと言える強さだ。
どちらかというと《忘却石》などを用いてコントロール的に動くことが主体だった初期のトロンだが、転機となったのは『ゲートウォッチの誓い』リリース。このセットにて登場した、無色マナを要求する中型のエルドラージたちが非常に強力であり、トロンの大量の無色マナを注いで召喚して早期決着を狙うタイプのデッキも誕生した。「エルドラージ・トロン」は気が付けばモダン環境でもかなりの古株になっている(時が経つのが早いね)。
今日はウルザの実験により得たマナで、多元宇宙の厄介者を呼び出し暴れさせるデッキの最新型を見てみよう。
2 《荒地》 4 《ウルザの鉱山》 4 《ウルザの魔力炉》 4 《ウルザの塔》 4 《エルドラージの寺院》 2 《死者の原野》 1 《大瀑布》 1 《魂の洞窟》 1 《爆発域》 1 《屍肉あさりの地》 1 《地盤の際》 -土地(25)- 4 《作り変えるもの》 4 《難題の予見者》 4 《現実を砕くもの》 1 《不屈の巡礼者、ゴロス》 2 《忘却蒔き》 2 《歩行バリスタ》 -クリーチャー(17)- |
4 《探検の地図》 2 《歪める嘆き》 2 《四肢切断》 1 《全ては塵》 4 《虚空の杯》 4 《大いなる創造者、カーン》 1 《人知を超えるもの、ウギン》 -呪文(18)- |
1 《ワームとぐろエンジン》 1 《隔離するタイタン》 1 《歩行バリスタ》 1 《トーモッドの墓所》 2 《大祖始の遺産》 1 《真髄の針》 2 《次元の歪曲》 1 《液鋼の塗膜》 1 《漸増爆弾》 1 《魔術遠眼鏡》 1 《倦怠の宝珠》 1 《罠の橋》 1 《領事の旗艦、スカイソブリン》 -サイドボード(15)- |
《探検の地図》を用いてウルザ土地を揃えるのを狙う。
あるいはそれだけに依存せず《エルドラージの寺院》なるエルドラージ専用の2マナ土地も用いて、なるべく早くエルドラージを戦場に繰り出せるように作られている。
デッキは《四肢切断》こそ有するものの完全な無色構成であり、色マナを必要となしない……というか「無色マナ」を必要とする。加速された無色マナから呼び出すのは《難題の予見者》《現実を砕くもの》。
どちらもサイズに優れており、相手のライフを詰めるのには十分なスペック。4マナ4/4とバランスが良く、戦場に出たら相手の手札を確認、そこから1枚追放させる《難題の予見者》は、相手のプランを崩しこちらのプランを決定づける超強力な妨害能力の持ち主。《現実を砕くもの》にはそうした干渉力はないが、5マナ5/5速攻&トランプルで相手のライフを一気に削り取る。これを呪文で除去しようものなら、対象に取った時点で1枚手札を捨てなければならないという強烈な疑似耐性を備えている。これらのエルドラージを2~3ターン目から連打していって相手にプレッシャーをかけ短期決戦を狙うことも可能だ。
この手の重めのカードたちで戦うデッキにおいて、軽いカードの価値というものは薄い。《探検の地図》など一部には1~2マナのカードがあるが、トロンが揃ってエルドラージが殴りだすころにはもはや不要とも言える。それらが使えなくなることを恐れずに《虚空の杯》を用いるのがこのデッキの強さだ。
0、1、2といった低マナ域に設定し、相手のデッキの主軸であるそれらのカードを打ち消し、一方的なゲーム展開へと持っていく。状況によってはXに3以上を注ぎ込んで相手に唱えられたらイヤなカードを抑え込み、それらさえ飛んでこなければ勝ちだという盤面を作るという手もある。「エルドラージ・トロン」の利点はこの杯を使えるというのもかなりのウェイトを占めている。
マナの使い道はエルドラージと杯のみではなく、《大いなる創造者、カーン》もキーカードだ。
ウルザの後継者とも言える彼はトロンと相性抜群。トロンから捻出されたマナで戦場に出てきて、同時にサイドボードから持ってきた各種アーティファクトを即座に唱えて対戦相手を妨害。墓地利用デッキには《大祖始の遺産》《トーモッドの墓所》、クリーチャーの能力を使ったコンボなどには《倦怠の宝珠》、起動型能力を封じたいなら《真髄の針》《魔術遠眼鏡》。
さらには《液鋼の塗膜》でそのパーマネントをアーティファクトにし、カーンの常在型能力で止めてしまうという手もある。
塗膜は土地もアーティファクトにできるので、対トロン同型においてアップキープにウルザ土地をアーティファクトにしてマナを有効に使えなくするというロックを仕掛けることができる。そういったカードで止めたターンの返しにカーンを再起動して《隔離するタイタン》《ワームとぐろエンジン》に繋がればゲームも終焉を迎えることだろう。
エルドラージ・デッキということで、《忘却蒔き》も採用されている。
早いターンに出せれば相手のライブラリーの上からカードを追放し、それらの中から土地を戦場に出せる。マナを伸ばせるのはこのデッキにおいて大きな利点であり、同時に巨体が戦場に現れるので戦力にもなる。
無色マナが出ない土地や《汚染された三角州》などのデッキと噛み合わない土地は価値が薄そうではあるが……これらが活きてくるように用意されたのが《死者の原野》。
エルドラージ軍団が潰されたとしても盤面にクリーチャーを再展開するために、7種以上の土地があればゾンビを生み出すこの土地を起用するという大胆な構築だ。ウルザ土地で3種類は並ぶので、残り4種。《忘却蒔き》が上手くハマれば楽勝だ。むしろ原野がある状態でコイツが出てくると、一気に大量のゾンビを生成するチャンスでもある。《大祖始の遺産》《屍肉あさりの地》などで相手の墓地を追放し、その中にフェッチランドが含まれていればそれも《忘却蒔き》から引っ張り出すことができる。
エルドラージ、カーン、ゾンビ。隙が無い……そういや土地サーチ要員の《不屈の巡礼者、ゴロス》も原野と相性◎だし、《大瀑布》とトロンで能力起動までいっちゃえばもうGood Game宣言のお時間だ。なんとパワフルなことか。
勝つためには、量さえあれば色などいらない。マナに対して割り切った姿勢が「エルドラージ・トロン」の強みだ。色マナを普通に用いて土地を揃えやすくしたり、フィニッシャーとして用いるに留めるトロンもあるが、突き詰めるのであればこのデッキがオススメだね。シンプルに強い、以上ッ!って感じだ。
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