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岩SHOWの「デイリー・デッキ」
黒緑ファンガス(ヒストリック)
冬になるとアレを食べる頻度が上がる。そう、鍋だ。手軽で調理工程も洗い物も少なくて済む、野菜に肉や魚、締めに雑炊やうどんと何もかもを一品で摂取できる。最強だね。
個人的には鍋には茸(きのこ)が欠かせない。シイタケやえのき茸は出汁をブーストしてくれる、鍋におけるマナ加速よ。
茸といえば《キノコザウルス》も好きでね。
個人的に初めて見たのは『基本セット第5版』のレアとして。性格の悪そうなイグアナみたいなのがこっちを睨みつけて舌を垂らしており、ただただ不気味なイラストである。当時のテキストは今ほど簡潔ではないため、マジックを始めたばかりのド初心者にはその能力がよくわからない。4マナ2/2で《灰色熊》より弱いな……くらいの感覚だった(エキスパンションシンボルもないので、レアとさえ分からなかった)。
それからしばらく経ってカード屋さんに赴いた折、『第4版』の《キノコザウルス》を目にすることに。同じカードでもセットが違えばアートが変わるのだなという発見と、そして何よりこの古い《キノコザウルス》のイラストが味わい深かった。
マジック最初のセットより受け継がれる初代アートは、洞穴の中で背中に菌類のようなものを背負った不気味な、しかしながらどこかユーモラスな爬虫類が虚ろな目をして佇んでいるものだ。ちょっとシュモクザメっぽい顔が良いね。後に『第8版』で再録された際にはこの初代イラストをベースにしたかわいらしいもこもことした茸を生やしたトカゲに生まれ変わり、これもまた心に響くものだ。
そうなると一周回って『第5版』の浮いているイラストもなんだか良いなと見えてくる。結果として好きなクリーチャーの1体となってしまった。
かつてのタイプは「キノコザウルスの召喚」、後にも先にもコイツ1種類だけである。何段階かの変遷の後、今ではファンガス・恐竜になったんだってね。ちゃんと恐竜として認められたということで、おめでとう。
ファンガスというタイプは茸やカビなどの菌類をベースにしたクリーチャーが持っている。初出は『フォールン・エンパイア』で歴史のあるタイプで、菌類の繁殖速度を表現するようにトークンを生成する能力を持つものが多い。
彼らが生み出すのは苗木・トークン。ファンガスの子どものようなもので、イラストを見れば動く菌類感が伝わると思う。単体で相手を殴り倒せる巨体の持ち主はあまりおらず、数で戦場を埋め尽くして圧し潰す戦術を得意とする。緑を中心に黒や白にも見られる。その独特な見た目が琴線に触れるというマニアもいることだろう。
今日はファンガスデッキの一例を紹介してみよう。
10 《森》 5 《沼》 1 《草むした墓》 1 《森林の墓地》 3 《疾病の神殿》 4 《寓話の小道》 -土地(24)- 4 《群れのシャンブラー》 4 《胞子冠サリッド》 4 《ヤヴィマヤの苗飼い》 3 《密航者、スライムフット》 2 《死花のサリッド》 2 《雑食のサリッド》 3 《若葉のドライアド》 -クリーチャー(22)- |
4 《菌類感染》 4 《苗木の移牧》 2 《菌類の勢力範囲》 4 《菌類の再誕》 -呪文(14)- |
フォーマットはヒストリック。同フォーマットでは数々のファンガス関連カードを収録した『ドミナリア』が使用可能、かつその他のセットにも必要なパーツが存在しているため、デッキを組みやすい。
これは黒緑の典型的なファンガス・デッキ……なのだが、驚くべきことにMTGアリーナのランク戦においてプラチナあるいはミシック帯において6連勝以上の戦績を残したものだという。僕はMTGアリーナのクローズド・テスト時代にこのファンガス・デッキをプレイすることがあった。デッキの構成要素の大半がコモンとアンコモンで済み、レアが少なくても組みやすいからだ。それでいてハマれば見た目以上に強いので、これでコツコツとデイリークエストを達成させてカードを集めていたものである。
なので、デッキの大まかな動きはイメージできるのだが、だからこそそんなファンガスが現代マジックの最先端とも言える今日のヒストリックで大勝ちしたという事実にはビックリしてしまう。
このデッキの目指すところは前述したようにファンガスの増殖である。《ヤヴィマヤの苗飼い》《密航者、スライムフット》らの能力、そして《苗木の移牧》などの呪文で苗木・トークンとファンガスを戦場に並べる。
ただ殴るだけでも数がいればそれなりのダメージになるが、《胞子冠サリッド》でまとめて強化することで脅威度は上昇。
《若葉のドライアド》は苗木を毎ターン生成しながら、パーマネントの数が総計10個を超えるとすべての苗木を+2/+2するというゲームを終わらせる能力を持っている。
これらでガツンと殴る、そのわかりやすさは魅力的だ。
システムを構築してテクニカルに戦うこともできるのが、普通のトークン・デッキとファンガス・デッキとの違いだ。《密航者、スライムフット》は苗木が死亡すると同族の恨みとばかりに対戦相手に1点ダメージを与え、苗木を失ったこちらには慰めの1点ライフをプレゼントしてくれる。相手が地上をクリーチャーで攻めてくるデッキだったなら、この毎ターン湧き出る苗木に攻撃を凌がれながらライフを吸われる展開は地獄のようなものである。
これを能動的に誘発させるための生け贄手段と併用することで、相手のライフを一気にそぎ落としにかかることが可能となる。《雑食のサリッド》か《菌類の勢力範囲》で生け贄に捧げてしまおう。
どちらもライフやカードを得られるので、相手とのライフ差をよりつけられる点も殴り合い展開になった時に頼もしい。適当に殴って相手のライフが射程圏内に入ったら一気に吸い尽くして勝利!「赤単ゴブリン」のようなデッキにはとにかくトークンで壁を作って耐え、毎ターントークン生成&生け贄のシステムが完成するまで生き延びられれば逆転勝利も狙える。かなりハードでタフなゲームになるだろうが、決まればアドレナリン出まくりなこと間違いなしだ。
ファンガスへの愛を貫いて大型連勝を決めたプレイヤーが広い広いアリーナの海の中にいる。その事実だけでなんだかワクワクしてくるものだ。《キノコザウルス》のように一風変わったカードは記憶に残り、時には愛を注ぐ甲斐のある存在となる。君にもそんなカードやデッキがあったら、大事にしてあげてほしいね。
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