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戦略記事

岩SHOWの「デイリー・デッキ」

ジャンド・サクリファイス(スタンダード)

岩SHOW

 「サクる」というマジック用語を聞いたこと、あるかな?

 かなり多くの方が耳にしたことがあるだろうし、何だったら自身でも口にしていることだろう。マジック初心者には何のことかわからないかもしれないので、初心者向けでもある当コラムで解説しておこう。

 サクるとは「生け贄に捧げる」ということを意味する。生け贄が英語版のテキストでは「sacrifice(サクリファイス)」と書かれているため、サクリファイスする→縮めてサクるとなったわけである。この語感が妙に良いのと、なんとなくカードをサクッと墓地に送っている状況とイメージの噛み合いもあってか、広く浸透しているフレーズとなっている。

 「それを対象に《ショック》唱えます」「じゃあ対応してこれでサクります」という感じで使えれば意味も通じるし、毎回「生け贄に捧げます」という長めのフレーズを言わずに済んで助かるというもの。別に使うべき!と推奨するわけではないが、多くのマジックプレイヤー同士の間では通じるフレーズなので覚えておくと吉だ。

 サクリファイスというフレーズはデッキ名でもたびたび目にする。主にクリーチャーを生け贄とするデッキに対して使われるものであり、クリーチャーを生け贄に捧……サクるためのカードとサクることで恩恵が得られるカードを組み合わせて勝利に向かうデッキがこれに分類される。

 これらのデッキで重要なのはサクるためのカード、通称「サクリ台」だ。かつては《アシュノッドの供犠台》など、クリーチャーを生け贄に捧げるためのカードはそれを捧げる台であることが多かったことからこの通称で呼ばれている。優秀なサクリ台があればサクリファイスデッキは組める、逆にそれなしでは難しい。

 今のスタンダードはどうかというと……なかなかに優秀なものが揃っているね。というわけで今日はサクリファイス・デッキを紹介だ。

crokeyz - 「ジャンド・サクリファイス」
『ゼンディカーの夜明け』予選ウィークエンド / スタンダード (2020年11月7~8日)[MO] [ARENA]
5 《
2 《
1 《
4 《悪意の神殿
4 《岩山被りの小道
1 《ロークスワイン城
4 《寓話の小道
-土地(21)-

4 《死の飢えのタイタン、クロクサ
4 《ぬかるみのトリトン
4 《砕骨の巨人
2 《悲哀の徘徊者
2 《悪ふざけの名人、ランクル
3 《フェイに呪われた王、コルヴォルド
-クリーチャー(19)-
4 《初子さらい
4 《村の儀式
3 《血の長の渇き
4 《ティマレット、死者を呼び出す
1 《エルズペスの悪夢
1 《カズールの憤怒
1 《ハグラの噛み殺し
2 《髑髏砕きの一撃
-呪文(20)-
3 《スカイクレイブの影
3 《強迫
1 《猛火の斉射
2 《切り裂かれた帆
2 《ファリカの献杯
2 《絶滅の契機
2 《アクロス戦争
-サイドボード(15)-
cardboard live より引用)

 

 MTGアリーナでたびたびランク1位を獲得する強者、crokeyzが『ゼンディカーの夜明け』予選ウィークエンドで使用した「ジャンド(黒赤緑)・サクリファイス」だ。彼は前環境でもヒストリックでもこのカラーリングとサクリファイスというデッキを頻繁に使用している。最たる相棒とも言える《波乱の悪魔》はもうスタンダードにはいないのだが、それでも生け贄システムが有用と判断してこの構築に至ったようだ。

 ジャンドとは言うが、ほぼ黒赤の2色でまとめられている。主役と言えるのは《死の飢えのタイタン。クロクサ》。

 脱出により墓地から戦場に飛び出し、相手の手札を奪いつつダメージも刻みつける、殴りだしたらすぐさまゲームが終わる圧倒的なフィニッシャー。

 このクロクサを使うために《ぬかるみのトリトン》《ティマレット、死者を呼び出す》と自身のライブラリーを切削するカードを採用、そこにサクリファイス要素を融合させてデッキにまとめあげたという様相だ。

 先に結論から言うと……このデッキは簡単ではない。選択肢が数多あり、どれがベストかを判断できなければデッキの真価を発揮させることは難しい。サクリファイスでいくか切削でいくか、手札を消費するか脱出するか。さまざまなファクターが絡み合い、相手のデッキによっても立ち回りを変えなければならない、上級者向けのデッキなのである。

 このデッキのサクリ台は《村の儀式》と《悲哀の徘徊者》に《カズールの憤怒》、そして唯一の緑要素である《フェイに呪われた王、コルヴォルド》。

 一度殴り出すと多大なるアドバンテージをもたらしつつ一気に相手のライフを追い詰めるドラゴンが加わることで、黒赤2色よりも決定力の高いデッキに仕上がっている。

 これらのサクリ台を用いてサクるクリーチャーは前述の切削関係のゾンビらを用いても良いし、あるいは《初子さらい》で奪った相手のクリーチャーという形になる。

 この《初子さらい》で奪って殴ってから処理する、という工程が「グルール・アグロ」に対しては効果的だ。相手の勝利手段を減らし、こちらの手札などを潤わせる。それに加えてデッキに多数採用された黒と赤の除去でクリーチャーを潰し続けて勝つわけだ。

 アグロデッキにはこのようにコントロール的に立ち回り、コントロール相手には中堅クリーチャーを積極的に展開して攻めていく。除去の的になったものをサクって無駄なく使用し、《初子さらい》は自身のクリーチャーに速攻を付けるための手段としても用いるなどデッキの毛色が大きく変わる。いわゆるミッドレンジに分類されるデッキの典型例とも言える。だからこそ、使いこなすにはデッキへの理解度が求められるのだ。

 2ターン目にクロクサを唱えずに、3ターン目に《村の儀式》と併せて使うなど、カード1枚1枚の価値を最大限に発揮させる丁寧なプレイングも重要だ。

 以前のスタンダードで《フェイに呪われた王、コルヴォルド》を使っていたという人は懐かしさを感じるために使ってみても良いかもしれない。奪ってサクる、シンプルにして極悪なクリーチャー・デッキ対策を用いて、アグロが多い時代を乗り切ろう。日々練習を積んでアドリブ力を磨いて、アグロを迎え撃て!

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