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戦略記事

岩SHOWの「デイリー・デッキ」

スゥルタイ・コントロールに加入するのはあの猪?(ヒストリック)

岩SHOW

 前回に引き続き、今回もヒストリックのデッキを紹介しよう。デッキリストを探している際に他にも紹介しておきたいデッキ、テクニックが見つかったからだ。

 今回のリストはアグロを取り上げた前回とは対照的に、それを相手にして耐えて捌いて切り返し、逆転勝利へと持っていくコントロールデッキだ。ヒストリックでコントロール、といえば……思い出されるのはやはり2020ミシックインビテーショナルの王者であるセス・マンフィールド/Seth Manfieldが使用していたデッキだろう。青黒緑の3色、スゥルタイ・カラーのもので、気が付けば勝利を手繰り寄せているセスの手腕に観戦者は皆一様に驚きを隠せなかったのも記憶に新しい。

 あのリストをベースとして新カードを取り込んだものが最近存在感を増しており、これは取り上げておこうと思い立ったというわけだ。それじゃあ早速リストを確認!

John Apokis - 「4色コントロール」
MTG Arena Zone Historic Open: MtGHistoric Subreddit Tournament #18・13位 / ヒストリック (2020年10月17日)[MO] [ARENA]
2 《
2 《
1 《
1 《平地
4 《繁殖池
1 《草むした墓
1 《寺院の庭
1 《神聖なる泉
4 《インダサのトライオーム
4 《ゼイゴスのトライオーム
3 《清水の小道
4 《寓話の小道

-土地(28)-

4 《自然の怒りのタイタン、ウーロ
2 《鎮まらぬ大地、ヤシャーン
3 《ハイドロイド混成体

-クリーチャー(9)-
4 《思考囲い
4 《成長のらせん
3 《霊気の疾風
2 《取り除き
2 《本質の散乱
1 《ネスロイの神話
3 《絶滅の契機
4 《世界を揺るがす者、ニッサ

-呪文(23)-
1 《鎮まらぬ大地、ヤシャーン
2 《墓掘りの檻
3 《否認
2 《無情な行動
1 《絶滅の契機
4 《サメ台風
2 《覆いを割く者、ナーセット

-サイドボード(15)-
mtgmelee より引用)

 

 基本的に、ミシックインビテーショナル時点のスゥルタイと大きな戦略の違いはない。《成長のらせん》《自然の怒りのタイタン、ウーロ》、青緑をやる理由と言える強力なマナ加速を使って序盤から土地を置いていく。

 これらのカードを機能させるためにも土地はたっぷり28枚採用。中には新カード《清水の小道》の姿も。《水没した地下墓地》のように条件なくアンタップ状態で戦場に出る点を買われての採用だろうか。

 これらの土地を並べつつ《取り除き》《絶滅の契機》でクリーチャーを除去して根絶やしに。このクリーチャー対策の枠に《本質の散乱》が含まれているのは《上流階級のゴブリン、マクサス》のような除去されようが戦場に出た時点で仕事をするクリーチャーによる暴挙を未然に防ぐためだ。

 マクサス擁するゴブリンに対して効果があり、他にも赤単や緑単のアグロ、《若き紅蓮術士》デッキや同型のマナ加速にも効果があるのでメインから《霊気の疾風》が採用されているのもインビテーショナル時点から変わらない点だ。

 これら除去、打ち消し、そして《思考囲い》で相手のプランを崩し、ウーロで回復しながらライフも保って万全の状態で《世界を揺るがす者、ニッサ》を戦場に送り出し、一気に攻勢に転じる。

 土地を3/3警戒にしていってライフを攻めつつ、ニッサの常在型能力で使えるマナをグイッと伸ばし、あふれるマナを《ハイドロイド混成体》に注ぎ込み、大量ドローと回復を同時にこなして相手の反撃しようとする心をへし折り勝利する。ゲームが長引けばウーロも戦場に出て暴れ回る。

 3色以上のデッキであるがゆえにマナトラブルは起こり得るが、それを加味してもお釣りがくるどっしりとした強さが魅力のコントロールだ。

 で、気付いている人も多いと思うがこのデッキはスゥルタイではない。この3色にさらに白が足されている。これにより《ネスロイの神話》が万能パーマネント除去になるが、あくまでこれはオマケ。なぜ白が入っているのか、その最大の理由はひときわ異彩を放つ《鎮まらぬ大地、ヤシャーン》にある。

 まさかのヤシャーン、白緑の伝説の猪がなぜこのコントロールデッキにいるのだろう。確かにサイズは4マナ4/4とたくましく、壁役にはなってくれそうだがそれならば緑単色だけで見てもいくらでも選択肢がある。基本の《》と《平地》を得られるのでアドバンテージが取れるから? いやそもそもヤシャーンを唱えるのに白マナを使っているのにさらに《平地》を得てもスゥルタイには使い道がない。もちろんこれらの条件もヤシャーンの良いところではあるのだが、このデッキに採用されている最大の理由にはならない……

 というわけでカードに書かれている最後の能力を評価されてこのデッキに居場所を見つけているのである。プレイヤーは呪文を唱えたり能力を起動するためにライフを支払ったり土地以外のパーマネントを生け贄にできなくなる、この平等に働く制限能力こそがスゥルタイがヤシャーンをスカウトした決定打だ。

 ではヒストリックのデッキを思い浮かべてみよう。これに該当するカードを使ったデッキは……あるね、生け贄に捧げまくるやつが。《波乱の悪魔》を主軸とした「ジャンド・サクリファイス」だ。《魔女のかまど》でクリーチャーを生け贄に、《大釜の使い魔》で食物を生け贄に、これらをひたすら行い使い魔や悪魔の能力で相手のライフを追い詰めていく、ヒストリック全体で見てもかなり強力なデッキだ。

 このデッキの生け贄というメインアクションをヤシャーンは完全に否定する。ヤシャーンが立ちはだかる限り、対戦相手のシステムは完全に沈黙するのだ。サクリファイス・デッキ側のクリーチャー除去のための手段は《初子さらい》で奪ってかまどで生け贄というものなので、ヤシャーンは処理できない。これに触れる手段を何かしら用意していない相手であれば、メインデッキから完封できてしまうのである。

 で、ただのサクリファイス対抗カードに終わらず、ゴブリンデッキの《スカークの探鉱者》や《夢の巣のルールス》デッキの《村の儀式》といったカードもついでに止められて、そして4/4で土地も持ってこられるのでこれらに当てはまらない相手にも仕事をさせることができる。ここまで揃ってりゃあ色を足す価値があるってこと。こうして4色コントロールデッキが誕生したのだ。

 まるでサイドボード用のような能力を持ちながらメインから無理なく採用できる、なかなかにオンリーワンなスペックを持ったヤシャーン。ヒストリックではこれ以外のデッキでも活躍の余地がありそうだ。強いデッキに対して強いカードは無理してでも使え、そんな教えを学ぶことができる一例だね。

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