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岩SHOWの「デイリー・デッキ」
2020ミシックインビテーショナルの上位デッキをおさらい(ヒストリック)
2020ミシックインビテーショナル、激闘の4日間が終わった直後にこれを書いている。
今大会は、ヒストリックがフォーマットとして制定されて以降、初めての大規模な競技トーナメント。それも、インビテーショナルの名の通り参加者は招待されたプレイヤーのみ。厳しい予選を勝ち抜いた末に参加権利を得た選手たち、そしてMPLおよびライバルズ・リーグ所属のプロプレイヤーたち……最強を決めるには、申し分のないラインナップだ。
最高クラスのプレイヤーたちと、競技としてのヒストリック。これらが組み合わさったことによっておこる化学反応……どのようなものになるのか、期待していた方も少なくないはず。すでにご存知の方が多いだろうが、全参加者の使用率で見ると「ゴブリン」デッキは全体の約34%(参考記事)。圧巻の最大勢力となった。
(以下、デッキリストは記事「2020ミシックインビテーショナル トップ8デッキリストとプロフィール」より)
21 《山》 3 《エンバレス城》 1 《ファイレクシアの塔》 -土地(25)- 3 《スカークの探鉱者》 4 《人目を引く詮索者》 4 《ずる賢いゴブリン》 4 《ゴブリンの酋長》 4 《ゴブリンの女看守》 3 《ゴブリンの戦長》 1 《宝石の手の焼却者》 1 《ゴブリンの鎖回し》 4 《群衆の親分、クレンコ》 4 《上流階級のゴブリン、マクサス》 -クリーチャー(32)- |
3 《アイレンクラッグの妙技》 -呪文(3)- |
2 《ゴブリンのクレーター掘り》 1 《宝石の手の焼却者》 1 《ゴブリンの鎖回し》 2 《ゴブリンの首謀者》 3 《レッドキャップの乱闘》 3 《削剥》 3 《アクロス戦争》 -サイドボード(15)- |
《上流階級のゴブリン、マクサス》という明確なゴール。
この6マナとゴブリンにしては大型な伝説の貴族を戦場に着地させ、その能力でライブラリーから配下を呼び出す。ライブラリーという非公開領域を参照するため、その効果はランダムではあるが……しっかりとキーとなるゴブリンを4枚ずつ採用しておけば、出してしまえば即勝利となることが多々。
このスーパーパワーカードを用いるデッキが1番人気となったのは当然と言えば当然。このトーナメントはゴブリンを中心とした戦場となった。そのゴブリンにもいくつかの形があるのは開戦直前にまとめた通り。赤単か、《思考囲い》を足すか。
その2大派閥の中、第3のアプローチを用いるデッキも登場したのが今トーナメントの面白いところだ。マクサスを1ターンでも早く出すために《ずる賢いゴブリン》《スカークの探鉱者》《ファイレクシアの塔》とマナ加速を備えるゴブリン。それらに加えて用いられたのが、爆発的に赤マナを生み出す《アイレンクラッグの妙技》!
このソーサリーで一気に4マナから7マナへとジャンプし、早ければ3ターン目にマクサス降臨も決まる。ターボマクサスとでも呼ぶべきこの構成は、このトーナメントで唯一の決勝ラウンド進出を果たしたゴブリン・デッキとなった。
そう、ゴブリンは最大勢力ではあったが、トップ8を支配することはかなわなかったのだ。他のデッキの多くがそれだけ対ゴブリンを意識して組まれていたキラーデッキだったのである。
逆に言うなら、行弘賢・八十岡翔太のMPLプレイヤーが使用したこのアイレンクラッグ型の3ターン目マクサスという動きは、それらの包囲網を打ち破るパワーがあったということでもある。
ゴブリンを倒すには? このアンサーとして《波乱の悪魔》の力を借りることを選択したプレイヤーは少なくなかった。
パーマネントが生け贄に捧げられるたびに能力を誘発させ、1点ダメージを与えるこの赤黒の悪魔。その力を最大限に引き出すために、3色目として緑を足したジャンド・カラーのデッキは、決勝ラウンド進出デッキの中で最多となった。
トップ8中、4つのジャンド《波乱の悪魔》デッキ。しかしながらそれらは決して同じデッキではなく、3つのアプローチに分けられる。
2 《沼》 4 《草むした墓》 2 《森林の墓地》 4 《血の墓所》 4 《竜髑髏の山頂》 4 《踏み鳴らされる地》 2 《隠れた茂み》 1 《ファイレクシアの塔》 -土地(23)- 4 《大釜の使い魔》 4 《戦慄衆の解体者》 4 《忘れられた神々の僧侶》 4 《波乱の悪魔》 4 《悲哀の徘徊者》 3 《真夜中の死神》 1 《砕骨の巨人》 1 《恋煩いの野獣》 -クリーチャー(25)- |
4 《初子さらい》 4 《魔女のかまど》 4 《集合した中隊》 -呪文(12)- |
1 《湧き出る源、ジェガンサ》 -相棒(1)- 1 《漁る軟泥》 2 《再利用の賢者》 2 《フェイに呪われた王、コルヴォルド》 4 《魔女の復讐》 2 《反逆の行動》 2 《虚空の力線》 1 《ゴルガリの女王、ヴラスカ》 -サイドボード(14)- |
まず1つ目は「ジャンド・サクリファイス」。《波乱の悪魔》と最も相性の良い生け贄カードと言えば、《魔女のかまど》と《大釜の使い魔》の通称猫かまどコンボ。
使い魔を生け贄に捧げてかまどを起動、食物・トークンを生成したらそれをコストに使い魔を戦場に戻す。カードを失うことなく、マナすらも支払わずに生け贄を2回行えるため、悪魔の能力を一気に誘発させることができてしまう。
これらが揃うとタフネス2以下のクリーチャーは生存することを許されず、毎ターンぷちぷちと潰されてしまう。悪魔が複数体並べば仕留められる獲物も大きくなる。これでゴブリン・デッキをはじめとしたクリーチャー主体デッキの戦場を更地にしてしまおうというのだ。
猫かまど以外にも《悲哀の徘徊者》《忘れられた神々の僧侶》など他の生け贄エンジンと《初子さらい》が加わることで盤面の支配力は圧倒的なものとなる。
戦場から獲物がいなくなれば、そのダメージの矛先はプレイヤーへと向かう。
この動きを行うには必要なカードの枚数も多く、また悪魔など3マナ以上のクリーチャーが複数必要になってくる。そこで、この動きを緑を足して《集合した中隊》を用いることで滑らかなものにするのである。
4マナから悪魔たちが計2体飛び出してきて、突然戦場が危険領域に突入する様はフィーチャーマッチでも何度も見られた。まさしくヒストリックを体現したカード、デッキである。
2 《森》 4 《草むした墓》 4 《森林の墓地》 4 《踏み鳴らされる地》 4 《血の墓所》 2 《竜髑髏の山頂》 2 《ファイレクシアの塔》 -土地(22)- 4 《金のガチョウ》 4 《ラノワールのエルフ》 4 《血の芸術家》 4 《忘れられた神々の僧侶》 2 《楽園のドルイド》 4 《波乱の悪魔》 4 《悲哀の徘徊者》 1 《真夜中の死神》 -クリーチャー(27)- |
3 《初子さらい》 4 《集合した中隊》 4 《ボーラスの城塞》 -呪文(11)- |
3 《漁る軟泥》 3 《再利用の賢者》 1 《運命の神、クローティス》 1 《疫病牝馬》 4 《思考囲い》 1 《初子さらい》 1 《削剥》 1 《ゴルガリの女王、ヴラスカ》 -サイドボード(15)- |
続いて2つ目は「ジャンド城塞」。これも悪魔たちを中隊から展開して盤面を構築する生け贄シナジーを用いるデッキではあるが、重要なポイントは《魔女のかまど》および《大釜の使い魔》を用いない点。これを毎ターン回してじりじりとダメージをばら撒くよりも、重たい一撃を叩き込むこと狙いに行く。
《ボーラスの城塞》でライブラリーの上から呪文を連打し、10個のパーマネントを生け贄に捧げて能力を起動。10点のライフを失わせると同時に悪魔と《血の芸術家》などの能力がゴリゴリと誘発し、対戦相手をすり潰す。
そのために《金のガチョウ》《ラノワールのエルフ》などマナクリーチャーを多く採用している。
これらと《忘れられた神々の僧侶》から出るマナとを組み合わせて、最速城塞設置からの決着を狙う。《悲哀の徘徊者》の占術はこのデッキでまさしく光り輝く。
2 《森》 2 《沼》 1 《山》 4 《草むした墓》 1 《森林の墓地》 4 《踏み鳴らされる地》 2 《血の墓所》 3 《竜髑髏の山頂》 1 《ロークスワイン城》 2 《ファイレクシアの塔》 3 《寓話の小道》 -土地(25)- 4 《大釜の使い魔》 4 《金のガチョウ》 4 《波乱の悪魔》 4 《悲哀の徘徊者》 1 《残忍な騎士》 3 《フェイに呪われた王、コルヴォルド》 -クリーチャー(20)- |
4 《魔女のかまど》 3 《初子さらい》 2 《思考囲い》 4 《パンくずの道標》 2 《ゴルガリの女王、ヴラスカ》 -呪文(15)- |
1 《漁る軟泥》 1 《残忍な騎士》 2 《思考囲い》 1 《リリアナの敗北》 1 《レッドキャップの乱闘》 1 《魂標ランタン》 3 《削剥》 3 《魔女の復讐》 2 《ボーラスの城塞》 -サイドボード(15)- |
最後に3つ目は……「ジャンド・サクリファイス」という分類されてはいるが、その構成は1つ目の一般的なものと異なる。《集合した中隊》の不採用だ。
多くのプレイヤーはこのお手軽パワーカードで一気に展開することを狙ったが、デイヴィッド・スタインバーグ/David Steinbergはこの枠を《パンくずの道標》としたリストを引っ提げてインビテーショナルに乗り込んできた。
4マナのカードに頼らずとも《波乱の悪魔》を擁するジャンドは十分に戦える。むしろ土地が詰まってそれらのカードどころか、3マナのカードをも唱えられないような事態こそ回避すべきことであると判断したのだろう。
《魔女のかまど》で《大釜の使い魔》をグルグルと回転させつつ、食物を生け贄に捧げるたびに1マナを支払ってパーマネント・カードを手札に加えていく。ミシックインビテーショナルのような長丁場では必ずと言っていいほど遭遇する、マナスクリュー(土地が引けない状況)。それを避けて安定して運用できる。それこそ理想的だと考えるのは、スタインバーグだけではないだろう。
また《フェイに呪われた王、コルヴォルド》をフィニッシャーとして採用しているのも強みだ。
同型においては《初子さらい》で奪われない点が何よりも素晴らしい。メインはこのドラゴンがもたらす打撃力とドローで制するという考えがこのリストから中隊を抜く後押しをしたのだろう。
今回は先日開催された2020ミシックインビテーショナルの上位入賞デッキを改めて紹介させてもらった。『ゼンディカーの夜明け』の登場はこのヒストリック環境にも影響を与えることになるはずだ。現時点ではどのようなデッキが登場したのかはわからないので紹介できず申し訳ないが、これからもヒストリックの強い・面白い・楽しいデッキを紹介していけたら良いなと考えている。初の大型イベントは終わったが、ヒストリックはまだまだこれからも続いていくのだ。
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