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戦略記事

岩SHOWの「デイリー・デッキ」

チャンス再到来? サイクリングデッキ!(スタンダード)

岩SHOW

 盛者必衰、マジックで同じデッキがいつまでもいつまでも勝ち続けるということはない。目立った活躍をしたものは必ずや対策される。

 まれに包囲網すら跳ね飛ばすデッキが出現することもあるが、何らかのテコ入れにより一強状態は崩される。特にスタンダードにおいては、新セットの参入やローテーションなどの外的要因も同じデッキが勝ち続けることを阻むものだね。マジックのデッキは現れては消える、儚いものだ。

 ただ、一時期天下を取ってその後姿を消したデッキが再び隆盛する、ということがまたあるのも事実。デッキの世界は残酷だけれども、慈悲もある。

 今日はそんな、再び上昇してくる可能性のあるデッキのご紹介。ああ、そういえば少し前には毎日対戦してたなぁ~っていう、あのデッキだ。

LZB - 「ルールス・サイクリング」
スタンダード (2020年10月13日)[MO] [ARENA]
2 《平地
4 《陽光昇りの小道
4 《針縁の小道
4 《河川滑りの小道
-土地(14)-

4 《繁栄の狐
4 《ドラニスの癒し手
4 《ドラニスの刺突者
4 《雄々しい救出者
-クリーチャー(16)-
4 《踏み穴のクレーター
4 《棘平原の危険
4 《血の希求
4 《驚くべき発育
2 《切り裂かれた帆
1 《セジーリの防護
3 《記憶漏出
1 《息詰まる噴煙
4 《天頂の閃光
3 《願い与えの加護
-呪文(30)-
1 《夢の巣のルールス
-相棒(1)-

2 《無私の救助犬
2 《魂標ランタン
2 《レッドキャップの乱闘
2 《雷猛竜の襲撃
2 《焦熱の竜火
1 《切り裂かれた帆
2 《息詰まる噴煙
1 《願い与えの加護
-サイドボード(14)-
LZB氏のTwitter より引用)

 

 もはや懐かしさすら覚える、「ルールス・サイクリング」。その名の通り《夢の巣のルールス》を相棒にし、サイクリングカードを多数採用したデッキだ。

 やることはもちろん、サイクリング! 『イコリア:巨獣の棲処』リリース直後からしばらくの間、かなり使われていたデッキだね。ルールスを相棒にすることでサイクリングした2マナ以下のクリーチャーを墓地から唱えてアドバンテージが取れるし戦線の立て直しも容易。

 ただあくまでルールスは「そういうこともできる」というサブプランであり、パーマネントカードを2マナ以下で統一しても何ら問題のないデッキであることから採用しているというところ。

 毎ターン、とにかくマナが使える限りサイクリングして、目指すは《天頂の閃光》。

 墓地にあるサイクリングカードの枚数分だけダメージを与えるこの火力で大ダメージを撃ち込みつつ、等しい値のライフを得て相手の攻撃を耐える。これを1~2発ぶっ放して気持ちよく勝つというコンボチックなデッキだ。

 サイクリングというデッキの根幹となるシステムの特性から考えて、これを持たないセットがいくらリリースされようが得るものがないように思える。事実、『基本セット2021』『ゼンディカーの夜明け』とイコリア以降のセットで何かを得たのかと問われると……このリストでも少々ゼンディカーの新カードの姿は見られるが、全く新しいプランや決め手が得られたというわけではない。

 では、なぜこのデッキが再浮上の予感なのかというと、それはスタンダード環境における他のデッキに原因がある。以前にも紹介した「ディミーア・ローグ」の台頭だ。最近ではこのデッキもならず者ではない《遺跡ガニ》まで採用し、とにかく切削を行って相手のライブラリーをすり減らすことに特化したデッキとなりつつある。

 切削、そう相手はこちらのライブラリーを削り墓地に落としてくるのである。サイクリングデッキは《天頂の閃光》を撃つために必死に毎ターン、すべてのマナをサイクリングに注ごうかというデッキである。そんな相手に対して切削をするというのは、敵に塩を送るという行為そのもの。サイクリングと書かれたカードが落ちるよう、こっちもお手伝いしますよと相手が言ってくるのだから「ごっつぁん」と返して享受するのがマナーだよな。そんなわけで切削されることがこちらの勝利と繋がる、有利なマッチアップがあることで使用するプレイヤーが現れたということなのである。

 サイクリングにより《繁栄の狐》を育てて殴りつつ《雄々しい救出者》でトークンを出して相手のの攻撃をキャッチし続け、《ドラニスの癒し手》で回復。

 《ドラニスの刺突者》でチクチクと削って閃光の射程圏内へとライフを落とし込む。

 この戦略自体も、アグロデッキと戦う機会が増えつつあるこの時代にマッチしているのかもしれない。

 あまり土地を入れたくないデッキに《棘平原の危険》《セジーリの防護》と呪文としても使える土地カードが増えたのも地味にプラス。セジーリで相手のクリーチャーの色を指定して狐を無理やり押し込むなんて勝ち方も。

 そしてほぼ唱えることなく完全にサイクリングするためだけに採用しているカード群の評価にも変化が。今スタンダードにおける攻めのデッキの決め技は《エンバレスの宝剣》、中速以降のデッキのアドバンテージ源として多く使われているのは《グレートヘンジ》。アーティファクトを重要パーツとして採用しているデッキが目立つ。そんなデッキに対して2マナのインスタントで対処できる《切り裂かれた帆》は今のスタンダードにおいて良い働きを見せる場面が増えた。サイクリングへの追い風要素、強し。

 《夢の巣のルールス》にこだわらずに《壮麗牝馬》を使って狐や刺突者に絆魂をつけるというプランも試してみたいなと、リストを見て思いついた。アグロデッキが多くなればより生き延びて逆転に繋げることができるようになるのでアリな選択になるか? その時はルールスに代わって《黎明起こし、ザーダ》を相棒にしてあげよう。

 もう終わったデッキと思っていたプレイヤーも少なくないだろうサイクリング、実は駆け上がるのはまだまだこれからなのかもしれない。

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