READING

戦略記事

岩SHOWの「デイリー・デッキ」

オルゾフ・ヒューマン(スタンダード)

岩SHOW

 「白黒はっきりつけようぜ」、なんて言うけれども、マジック的には白でも黒でもどっちでも、というかどっちも良いんじゃないってのが主流意見ではないかな。

 マジックにおける白と黒は、その黎明期には敵対色と呼ばれる関係にあった。《白騎士》《黒騎士》《日中の光》《夜の戦慄》などのカードに見られるように、お互いに強烈にブッ刺さる色対策を有していた。高潔で神聖な白に対して、野心的で魔性の黒と色のテーマも相反するものだ。

 しかしながらマジックの歴史が流れに流れて四半世紀を超えた現在。《敬虔な命令》《害悪な掌握》と相変わらず対策しあう間柄であることは変わりはないが、それでもグッと歩み寄ったものである。表向きは慈善を行い、裏の顔は私利私欲のために手段を問わない、そんなキャラクターや集団を表すのに白と黒の多色のカードはうってつけで、近年はあらゆるセットでこの2色を併せ持ったカードや、この2色の間で形成されるシナジーを目の当たりにするものだ。相反するものが手と手を取って1つとなると、強いのである!

 今日は白黒2色のデッキは、それを体現するギルドから「オルゾフ○○」と呼ばれるのが慣例となっている。今日はそんなオルゾフ○○を紹介だ!

Adam ”yoman_5” Hernandez - 「オルゾフ・ヒューマン」
スタンダード (2020年8月20日)[MO] [ARENA]
9 《
7 《平地
4 《神無き祭殿
4 《静寂の神殿
-土地(24)-

4 《漆黒軍の騎士
4 《将軍の執行官
4 《帆凧の掠め盗り
4 《歴戦の神聖刃
4 《ドラニスのクードロ将軍
4 《ラバブリンクの冒険者
3 《悪ふざけの名人、ランクル
-クリーチャー(27)-
3 《不吉な戦術
4 《悪魔の抱擁
2 《太陽の宿敵、エルズペス
-呪文(9)-
1 《夜の騎兵
3 《強迫
2 《見栄え損ない
1 《魂標ランタン
3 《害悪な掌握
1 《無情な行動
2 《解呪
2 《はぐれ影魔道士、ダブリエル
-サイドボード(15)-
 

 ○○に当てはまるのは、人間! そうヒューマン。人間には善悪両面あるってことで、白黒のカードとのイメージ的相性はピカイチ。

 その中でも、群衆を率いるリーダーであり同時に獣に対しては過激派で絶滅させることしか考えていないヤバい人である《ドラニスのクードロ将軍》は、色のイメージにもピッタリなまさしくこのカラーリングの神話レアに相応しい風格を持った1枚だ。

 同族である人間だけを強化しつつ、その人間を生け贄に捧げてパワー4以上の巨獣を破壊する……この能力だけで彼が一体どんな人物なのか、その白い部分と黒い部分が見えてくるのが素晴らしいデザインだ。

 このクードロ将軍に率いられた人間で押しつつ、《漆黒軍の騎士》《悪ふざけの名人、ランクル》といった非人間も一部用いて、殴り切る。それがこの「オルゾフ・ヒューマン」というデッキである。

 クードロ将軍という優秀な人間シナジーカードがあるので人間デッキとして組まれているが、大事なのはこのデッキが無理やり組まれた人間デッキではない、という点。この手の特定のクリーチャータイプに寄せたデッキを作る際に、スタンダードであればどうしても駒が足りずにカードパワーの低めなものを無理やり採用してしまいがち。そうするとデッキの完成度は上がりはするものの、個々のカードパワーでは落ちるものとなってしまい、結果としてデッキの強さは落ちることになる。

 その点、このリストはきちんと強い人間で固めてある。というか「白黒のビートダウンを組んでいたらたまたま人間で固まったので、3マナ圏をクードロ将軍にした」という後から人間デッキとなったようにさえ見える。

 《歴戦の神聖刃》は最近のスタンダードの白の顔になりつつある、2マナでパワー3のハードパンチャー。破壊不能を得るのでブロックも除去も何でもこいという強気の攻めを後押しする。

 《帆凧の掠め盗り》は相手の手札を覗き見て、どんなデッキか、どんなプランを狙っているかを確認しつつ、そのプランを崩す手札追放能力がいやらしい。パワーは1だが飛行を持つので、クードロ将軍で強化すれば十分な攻め手となるだろう。

 《将軍の執行官》は人間デッキ用のカードであり、これはクードロ将軍と組ませてこそ進化を発揮する。我らが主導者に破壊不能を与えて、強化して殴る計画は崩させない。地味に長期戦になった際には人間を呼び出す能力が活きてくる。

 クードロ将軍とともに採用された3マナ圏は《ラバブリンクの冒険者》。

 状況によってプロテクションを使い分け、ブロックを避けたり除去を無視したり、その柔軟性を活かして戦場の覇権を握ろう。

 と、2~3マナのこれらの人間を採用しつつ、1・4マナには先述の通り非人間ではあるが優秀なクリーチャーを採用。この良い意味での妥協がデッキを引き締めている(もちろんこの枠も人間で固めるというのも悪いわけでは決してない)。

 扱いも比較的シンプル寄りのデッキなので、マジックに慣れてきたなというプレイヤーをはじめとして幅広い層に使ってみてほしいデッキだ。ビートダウンが好きだという方は選択肢のひとつとして試してみるのも良いんじゃないかな。

 スタンダードのトーナメントと言えば、毎週秋に向けて日本選手権2020の各種予選が開催されている。その場でもどんなオルゾフカラーのデッキが、あるいは何かしらのビートダウンが、活躍を見せるのか? 結果から目が離せない。

  • この記事をシェアする

RANKING

NEWEST

CATEGORY

BACK NUMBER

サイト内検索