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岩SHOWの「デイリー・デッキ」
Ice Station Zebra(レガシー)
デッキに惚れる要素ってのはいくつかある。
採用されているカードや構成そのものの独自性が高いとオッと人目を惹くね。カードプールが広いフォーマットであれば、往年の名カードの姿があるとそれだけで嬉しくなってしまう。
リストをまじまじと眺めて「これはいい仕事してるなぁ」と感動するのはコンボデッキであることが多い。それも1つのコンボに特化したものというよりは、2つ以上のコンボをうまくパーツを同居させて1つのデッキとして形にしているものに対して心を揺さぶられがち。
そして最後に、デッキ名。色とキーカードとコンボ、それらを並列しただけじゃちょっと物足りない。分かりやすさを取っ払っても「私のデッキは○○だ!」と自我を通した上でハイセンスなデッキ名をつけられる。これもデッキ構築におけるセンスのひとつだと考えている。
というわけで上記の条件が揃ったリストと出会うと、惚れてしまうのだ。つい先日にも、これらの条件をしっかりと満たした、惚れさせリストと遭遇した。レガシーのコンボデッキである。表現の幅が広いフォーマットで、やりたいこととゲームに勝つという重要な目的を両立したリストだ。見てみようじゃないか。
1 《沼》 2 《Bayou》 1 《Scrubland》 2 《新緑の地下墓地》 2 《湿地の干潟》 1 《汚染された三角州》 4 《ヨーグモスの墳墓、アーボーグ》 3 《暗黒の深部》 3 《演劇の舞台》 -土地(19)- 1 《コーリスの子》 2 《吸血鬼の呪詛術士》 3 《グリセルブランド》 -クリーチャー(6)- |
4 《ライオンの瞳のダイアモンド》 4 《水蓮の花びら》 4 《暗黒の儀式》 4 《納墓》 4 《思考囲い》 1 《輪作》 4 《生ける願い》 4 《浅すぎる墓穴》 3 《死体発掘》 1 《集団的蛮行》 1 《暴露》 1 《掘葬の儀式》 -呪文(35)- |
1 《暗黒の深部》 1 《演劇の舞台》 1 《カラカス》 1 《不毛の大地》 1 《コーリスの子》 1 《墓所破り》 1 《吸血鬼の呪詛術士》 1 《研究室の偏執狂》 1 《再利用の賢者》 1 《忠臣》 1 《墓所のタイタン》 1 《グリセルブランド》 2 《暗殺者の戦利品》 1 《静寂》 -サイドボード(15)- |
レガシーを代表するコンボデッキといえば……「ダーク・デプス」だ。キーカードはデッキ名通りの《暗黒の深部》。
真面目に運用するとなると10個の氷カウンターを取り除くのに合計で30マナも用意しなければならないこの土地を、ちょいと裏技を使って一瞬でカウンター0個にしてしまうおうというコンボだ。
パーマネントの上からカウンターを取り除く《吸血鬼の呪詛術士》でサクッと消し去るのが1つ。そしてもう1つの手段が《演劇の舞台》の能力で《暗黒の深部》のコピーを作るという方法だ。
氷カウンターは戦場に出る際に乗るもので、《演劇の舞台》はこれが置かれていない状態で深部のコピーになる。なのでカウンターが0になった時の能力が誘発する。
呪詛術士か舞台で深部の能力を誘発させ、生け贄に捧げると20/20破壊不能&飛行の大怪物マリット・レイジが出現する。一発殴ってゲームエンド、という豪快なコンボで、2枚で決まるというのもあって確実性も高いのが強みである。
この「ダーク・デプス」をベースに、もう1つレガシーのコンボを重ね合わせて1つにしている。「リアニメイト」だ。《納墓》でクリーチャーを墓地に置き、黒の各種呪文で戦場に戻し、早期ターンに巨大クリーチャーで制圧することを狙った伝統的なコンボだ。
このリストでデプスとハイブリッドになっているものは、リアニメイト系の中でも「Tin Fins」と呼ばれる、《グリセルブランド》を用いることに特化したタイプだ。
《浅すぎる墓穴》《死体発掘》でグリセルを釣り上げ、7点ライフを支払ってカードを7枚引く。これを2~3回行った後、《コーリスの子》の能力でこのターン失った分のライフを回復する。
しかる後にまたグリセルでドローし、コーリスをリアニメイトするなどしてまたライフを大幅回復して……と派手に動いてライブラリーを引き切る勢いで掘り進む。最後は《研究室の偏執狂》を出してグリセルのドローでこれ以上カードが引けないという敗北を勝利に置き換えて決着だ。
「ダーク・デプス」と「Tin Fins」、この2つが絡み合っているデッキなわけだが、共存させることにメリットはあるのか? そこがこのデッキの面白いところだ。単純にコンボの部分だけ抜き取れば、両者に被るパーツはない。ただ、リアニメイトカードがデプスコンボを助けることはできる。《暗黒の深部》だけがある状況で《納墓》と釣り竿があれば《吸血鬼の呪詛術士》をリアニメイトして一気にコンボ完成だ。あるいは呪詛術士が打ち消されたり捨てさせられたりしても、コンボの目は潰えないというのも魅力的だ。
しかしながらこれらのコンボが共存することの醍醐味は、往年の名カードである《生ける願い》を使えるということに尽きるね。
クリーチャーか土地をゲーム外から手札に加えるこのカードで、サイドボードに忍ばせたコンボパーツをサーチするってわけだが、土地かクリーチャーという範囲が絶妙に2つのコンボに重なっている。そのため、どちらのコンボを狙う場合でも腐ることがないのだ。
《暗黒の深部》《演劇の舞台》《吸血鬼の呪詛術士》、《グリセルブランド》《コーリスの子》《研究室の偏執狂》……これらのコンボの中核を成すパーツは勿論のこと、他にも選択肢が広がるのが素晴らしい。
《墓所のタイタン》というリアニメイトでも素出しでも勝ちに行けるサブプランや、手札に来たグリセルを捨てるための《墓所破り》、ソーサリーの代わりにグリセルを墓地から戦場に出す役目の《忠臣》、いろいろ壊せる便利屋《再利用の賢者》、天敵《カラカス》へのアンサーである《不毛の大地》と、優秀なスタッフがズラリと控えている。
豊富な選択肢の中からその時に応じてベストなカードをサーチしてゲームを有利に進める……こういうデッキ、大好きだなぁ。
《生ける願い》のテクニックとして、《ライオンの瞳のダイアモンド》との組み合わせがある。
願いを唱えて解決する前にダイアモンドを起動、手札をすべて捨てて3色のマナを得る。その後願いを解決してクリーチャーを手札に加えてそのマナで唱えたり、《演劇の舞台》を持ってきて能力を起動したりといった動きが行える。ダイアモンドで捨てたグリセルを願いで引っ張ってきた《忠臣》で釣るという動きはビューティフル。
同じく手札を捨てて、そうやって墓地に落ちたクリーチャーを同じく墓地に落ちた《掘葬の儀式》フラッシュバックで、という手もある。《ライオンの瞳のダイアモンド》、上手く使うべし。
コンボのハイブリッドで、《生ける願い》という歴史ある名カードも使えて……惚れる要素を満たしているデッキだ。そうそう最後の惚れる要素としてデッキ名にも触れておこう。このタイプのデッキは各種サイトにて「Ice Station Zebra」というデッキ名で紹介されることがある。アイスステーションジブラ……かっこいいじゃないか。調べてみたところ、元ネタは1968年の映画「北極の基地/潜航大作戦」およびその原作の原題。《暗黒の深部》が北極をイメージさせるところからつけられたのだろう。こういうクールなデッキ名をつける風潮、また蘇ってほしいものだなぁ。
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