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岩SHOWの「デイリー・デッキ」
牛人大絶滅(パイオニア)
アーティスト、スポーツ選手、映画やゲームの登場人物、どんなジャンルにおいても僕はクレイジーなやつが好きになる傾向にある。一般的・常識的な価値観から逸脱し、結果を残し大きな役割を担う人物に心惹かれるのである。ぶっとんでいる生き方をしている人は話していても面白い。自分もそういう逸脱した道を歩んでみたいものである。
デッキ構築においても、根本から発想が異なるビルダーがいるものである。わけのわからないコンボが思いつくことはそれこそ多くの人々が経験することだが、それらのほとんどはそれをデッキとして形にできない。こんなことは無茶、無謀であると諦めるのである。だがごく一部のビルダーは、そもそもそれを無謀なことに挑んでいるとは思っていない。自然に、気が赴くままにデッキを組むと、人と違うものになっているってわけだ。
個性的なリストを眺めると、それを作れる人に対して強く憧れを抱くものだ。パイオニアというフィールドにおいて、天衣無縫にその腕を振るい、他の誰にも組めなさそうなデッキを生み出し、リーグ戦を5勝0敗で駆け抜けた者がいた。そのデッキをご覧いただこう。
20 《山》 4 《竜髑髏の山頂》 1 《ニクスの祭殿、ニクソス》 -土地(25)- 4 《ボロスの反攻者》 2 《怒血のシャーマン》 2 《モーギスの狂信者》 3 《クラグマの戦呼び》 1 《ミノタウルスの攻め手》 -クリーチャー(12)- |
4 《安堵の再会》 4 《突沸の器》 4 《アイレンクラッグの妙技》 4 《絶滅の星》 4 《死呻きの鬨の声》 3 《反逆の先導者、チャンドラ》 -呪文(23)- |
4 《神々の憤怒》 4 《神聖の力線》 4 《目覚めた猛火、チャンドラ》 3 《精霊龍、ウギン》 -サイドボード(15)- |
ミノタウルスにフォーカスしたデッキなど、なんと珍しいことだろうか。そして同時に、部族デッキとは呼べないほどのクリーチャーの少なさである。要するにミノタウルスどうこうを主軸には置いていないのである。大事なのは《ボロスの反攻者》。
この牛人は自身が受けたダメージを対戦相手や他のクリーチャーにも与える。これに自らダメージを与えれば、対戦相手にとんだとばっちりを喰らわせることが可能だ。というわけで反攻者がいる状況で《絶滅の星》をぶっ放す。
20点喰らった牛人が八つ当たりで対戦相手のライフを0にして、巻き添えEND。最高だ。
と、この2枚のコンボ自体はこれらのカードを知っていれば誰でも思いつくものである。だがそれを形にするのは難しいため、これまで存在感を示すことはほぼなかった。
このデッキでは4ターン目に上記のコンボが決められる。3ターン目に反攻者→4ターン目に《アイレンクラッグの妙技》から7マナ捻出しての《絶滅の星》であっけなくゲームが終わる。何の前触れもない隕石は誰にも避けられないものだ。
アイレンクラッグのみに頼るのもあまり良いことではないので、《突沸の器》も併用する。
2ターン目などに出しておけば、5ターン目に7マナ出して絶滅を引き起こせる。
《反逆の先導者、チャンドラ》もマナ加速として働きつつ、いざとなれば単体でゲームに勝てる点が素晴らしい。まあこのあたりまでは思いつく範囲ではあるね。
この手のデッキにおいて大事なのは《絶滅の星》以外のマナの使い道である。毎回《絶滅の星》を引ければいいが、そうも都合の良いものではない。また、反攻者がいなければ星を落としても単純なリセットで終わってしまう。
そこでこのデッキでは《死呻きの鬨の声》を用いるのだ。
え、このカードはなんなのかって? 『テーロス還魂記』のテーマ・ブースターにのみ収録されているミノタウルスデッキ専用カードだよ! ライブラリーから名前が異なるミノタウルスを4体戦場に出すという、なかなかの大盤振る舞いである。8マナと重いこのカードを、マナ加速から叩きつけるわけだ。星があっても反攻者がいないという状況もこれで解決☆……ってぶっとんでんなぁオイ。
このカードを用いるためにミノタウルスが必要最低限採用されているというわけで、そもそもミノタウルス・デッキを組もうという考えではなかったことが推察される。これぞ逸脱した発想、感じ入ったよ。
で、この《死呻きの鬨の声》から飛び出してくるのは……まずは反攻者。次に《モーギスの狂信者》、シンボルの濃い反攻者との相性は抜群で、少なくとも7点ぐらいは叩き出してくれる。《怒血のシャーマン》でこれらをサイズアップしつつトランプルも与えよう。
そして《クラグマの戦呼び》で全員に速攻を付けて……あ、終わるんだ。対戦相手の戦場ががら空きだったり除去がなければ、《死呻きの鬨の声》を唱えればそれで20点以上のダメージを弾き出せるのである。なんていうか、すごい以外の言葉が出てこないね。
このデッキを構成するカードの中でも一番驚いたのが《ミノタウルスの攻め手》である。
リミテッドでもコストのわりにタフネスが低すぎてあまり使われなかったようなカードである。《死呻きの鬨の声》から叩きつければ高いパワーと先制攻撃、《怒血のシャーマン》が与えてくれるトランプルでゲームを終わらせてくれるだろう。
でも大事なのはそこじゃくて、このカードが7マナであるということ。《アイレンクラッグの妙技》を経由して早いターンに繰り出すことが可能なのである。もちろん、これは積極的に狙いにいくプランではないが、「そういうこともできる」というのはマジックにおいてとても大切なことである。いきなり出てきたパワー6先制攻撃・速攻でガンガン殴って勝つというルートもある、この備えあればの姿勢がこの異様とも言えるデッキを5-0へと導いたのではないだろうか。
使い手は選ぶ類のデッキだし、どんな相手に対しても強く立ち回れるようなデッキでもない。ただ、見た目のインパクトは最強、いわゆる「分からん殺し」の連発で対戦相手たちに絶滅をもたらしたことだろう。
このリストをこのままコピーして使うというのも良いが、今回はどちらかと言うと「こんなデッキの組み方もある」ということを伝えたくて取り上げさせてもらった。
この手のぶっ飛んだデッキによく見られることだが、サイドボードはシンプル極まりない。プレインズウォーカーを増やすことで勝ち方の軸を変えるものであり、どの相手にはどれを何枚入れて……という緻密なサイドボーディングを行うようなものではない。ただでさえ混沌としたメインなのに、変な入れ替えを行うとデッキが自身がクラッシュしてしまうからだ。
というわけで、明日のクレイジーなデッキを担う面々にはこのデッキを良きお手本として、まだ人類が到達していないデッキを生み出すことを目指してほしいと願っている。そん時はここで取り上げさせてくれよな!
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