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戦略記事

岩SHOWの「デイリー・デッキ」

嵐の仮面(ヒストリック)

岩SHOW

 《補充》という超強力カードがある。たった4マナで墓地にあるエンチャントをすべて戦場に戻せる、夢にあふれた1枚だ。

 《パララクスの波》《パララクスの潮流》を使いまわしたり、それらを《オパール色の輝き》でクリーチャー化させて一気に制圧。あるいは《はじける子嚢》と《伏魔殿》の2枚を揃えて一瞬で20点以上のダメージを与えるなど、さまざまなコンボデッキを成立させた名カードである。

 大変に人気の高いカードではあるが、高いカードパワーを持った高コストのエンチャントと組み合わせると簡単に壊れたデッキが誕生してしまう危ういカードでもある。そのため、これの後継機とも言えるカードは少々パワーダウンさせたものとなっている。

 具体的に言うと、《再拘束》のように戻せるエンチャントをオーラ限定にしたものが作られるようになった。オーラであればそれをつけるためのパーマネントも必要であり、よって下準備が必要になり壊れたデッキの誕生は起こりにくくなるという寸法だ。

 オーラ戻し系カードの最新版として《嵐の伝令》がある。

 非常に珍しい、赤いオーラ関係の1枚だ。こいつの能力はド派手で、1ターン限定であるものの墓地からすべてのオーラを戦場に戻して自身のクリーチャーにつけるというものだ。あいにくスタンダード環境にはそれほど強力なオーラがないため、これを主役としたデッキは目立った活躍をしていないのだが……強いオーラがあるフォーマットではそのカードパワーを存分に発揮できることだろう。

 ヒストリックには今、面白いオーラがある。《嵐の伝令》という爆薬を弾けさせる導火線となり得る1枚だ。墓地からオーラを大量に拾い上げる、爆発力で勝負するデッキを紹介だ。

「嵐の仮面」サンプルデッキ
ヒストリック (2020年3月)[MO] [ARENA]
3 《
2 《
1 《
4 《草むした墓
1 《森林の墓地
3 《血の墓所
1 《竜髑髏の山頂
3 《踏み鳴らされる地
1 《神無き祭殿
1 《孤立した礼拝堂
1 《寺院の庭
1 《陽花弁の木立ち
1 《寓話の小道

-土地(23)-

4 《縫い師への供給者
4 《光胞子のシャーマン
3 《嵐の伝令
4 《苦悶の侍祭
2 《アゴナスの雄牛

-クリーチャー(17)-
4 《きらきらするすべて
4 《セテッサ式訓練
2 《タイタンたちの軛
4 《祖先の仮面
4 《ティマレット、死者を呼び出す
1 《セラからの翼
1 《永遠の大釜

-呪文(20)-
mtggoldfish より参考)

 

 オーラを好きなだけ戦場に戻せるということは、言うまでもなく大量にエンチャントが戦場に並ぶということ。他のエンチャント1枚につきクリーチャーに+2/+2修整を与える《祖先の仮面》と絡めば、とんでもないサイズのクリーチャーを生み出せる!

 という魂胆で作られたのがこの4色のデッキ。仮面だけでは枚数が足りないので、同様のエンチャント枚数分強化オーラの《きらきらするすべて》と併せて8枚体制だ。これらを伝令から拾って、一発でぶち抜く! ロマンあふれるコンセプト、もちろん君も好きだろう?

 エンチャントを墓地に落とす手段としては、黒特有のライブラリーから墓地にカードを落とすものを用いる。ヒストリックなので、この手のカードの中でも過去最高の性能を誇る《縫い師への供給者》が使えるのがなんとも嬉しい。

 土地を拾える能力が4色デッキ的にはありがたい《光胞子のシャーマン》も併せて、戦場にブロック役を投下しつつ墓地を肥やしていこう。

 《ティマレット、死者を呼び出す》もブロッカーを用意し、最終的にはライフ回復や占術もオマケしてくれる良い墓地肥やしだ。供給者もゾンビなのでⅢ章能力のカウントに含まれるのを忘れずに。

 《タイタンたちの軛》もこの枠に入るカードであり、相手の墓地は追放し、かつ自分の墓地に落ちた《嵐の伝令》を拾える地味シブカードだ。

 同じく墓地から拾う役目を持ち、むしろそちらがメインなのが《苦悶の侍祭》。伝令のみでなくいざとなれば《祖先の仮面》などのオーラを拾って継続して殴るプランを選択できたりと、行動に幅を持たせてくれる。

 これらのカードでオーラ含むカードを大量に墓地に落とすわけだが、そのラインナップを紹介しよう。

 《セテッサ式訓練》はパワーを1上昇させトランプルを与える。

 こう書くとその効果はちっぽけに思えるが、トランプルを与えるってのが重要だ。いかに伝令がオーラを戻してクリーチャーが強化されても、相手の適当なクリーチャーでブロックされて凌がれてはたまらない。トランプルなどの回避能力を与えてやるのは結構重要。それにドローがついてくるのであれば文句なしだ。コストも軽いので、序盤はこっちのブロック役につけて相手のクリーチャーと相討ちさせてしまおう。

 同じく回避能力を付与し、絆魂で劣勢を一気に覆す秘密兵器が《セラからの翼》だ。貼り付けたクリーチャーが伝説になるので、複数体並んでいるものにはつけないように要注意。

 このデッキの墓地に落ちて嬉しいカードはオーラだけではない。《アゴナスの雄牛》は脱出コストは重いのだが、綺麗に回ったこのデッキではそれを捻出するのは難しい話ではない。オーラ以外を追放して戦場に送り出し、その能力で手札を捨てて3枚引こう。

 ドローが強いのは同然だが、何気に手札を捨てられるのも伝令で戻すオーラを増やせて嬉しかったりする。

 墓地にクリーチャーが大量に落ちれば《永遠の大釜》も唱えやすくなる。これで墓地に落ちた伝令を釣り上げて勝つのも強烈だ。

 もちろん、供給者を使いまわして伝令のためのオーラを補充したり、《苦悶の侍祭》や雄牛でアドバンテージを稼いでも良い。まともに使われているところをめったに見ないカードの1つだが、とにかく出たらむちゃ強なので一度使ってみてほしいね。

 回していて楽しいデッキであり、オンリーワンの快感を伴ったデッキである。なのだが、リストはまだまだ改善の余地ありといったところだ。各カードの枚数などは各自で自分に合ったものに変更して、それぞれの素敵な伝令ライフを送っていただきたい。サンプルとして僕はこんな感じにイジってみた。

岩SHOW - 「嵐の仮面」
ヒストリック (2020年3月)[MO] [ARENA]
2 《
2 《
1 《
4 《草むした墓
1 《森林の墓地
3 《血の墓所
1 《竜髑髏の山頂
3 《踏み鳴らされる地
1 《神無き祭殿
1 《孤立した礼拝堂
1 《寺院の庭
1 《陽花弁の木立ち
1 《寓話の小道

-土地(22)-

4 《縫い師への供給者
4 《光胞子のシャーマン
2 《群れネズミ
4 《嵐の伝令
2 《苦悶の侍祭
1 《アゴナスの雄牛

-クリーチャー(17)-
4 《きらきらするすべて
3 《セテッサ式訓練
2 《タイタンたちの軛
2 《戦茨の恩恵
4 《祖先の仮面
3 《ティマレット、死者を呼び出す
2 《セラからの翼
1 《永遠の大釜

-呪文(21)-

 重くてあまり安定して唱えられなかったり、重ね引いた時に使い切れず今ひとつだったカードの枚数を調整し、伝令コンボが決まった時に寄り勝ちにいきやすいようにカードを追加した。《嵐の伝令》や《セラからの翼》を増量だ。

 《戦茨の恩恵》は序盤に除去として使えて、伝令から拾った際には大型クリーチャーの前に立つブロッカーを排除して勝利を確実なものにしてくれる。

 また手札にオーラや雄牛が溜まった際に捨てる手段が欲しいと思ったので、《群れネズミ》も採用してみた。

 戦場をネズミで埋め尽くし、これ1枚で勝てるカードという点も高評価だ。

 土地の枚数をその分削ったので、《タイタンたちの軛》も増やした方がより安定しそうではある。伝令をリアニメイトしたりオーラを拾って普通に勝つルートを支える《栄光への目覚め》や、伝令コンボが決まれば大量の兵士を呼び出す《ピレアス号の艦長、シオーナ》なども面白い。いろいろと試しがいがあって、ヒストリックに一気にのめり込みそうになった。

 最後に、サイドボードがないのは、このデッキが一本勝負、いわゆるBO1専用のデッキだからだ。コンボを決めてサクッと勝って、勝ち逃げだ。この手のデッキはサイドボードで対策されると脆いからね。BO1だと初手の土地の枚数調整機能のおかげでマリガンを緩和してくれたり、《運命のきずな》が禁止なのでその手のデッキがいないという追い風の要素もある。

 とにかく面白いマジック体験を提供してくれることは間違いないデッキなので、興味が湧いたらヒストリックBO1に突撃だ。嵐のような風吹かせてやるって!

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