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戦略記事

岩SHOWの「デイリー・デッキ」

Oops All Spells(レガシー)

岩SHOW

 誰も予想だにしない角度から走り抜け、勝利をかっさらうのが一番カッコイイ……そういう思想の持ち主は、マジックにおいてコンボデッキを愛用するのではないだろうか。それも、どっちかと言えば下準備を重ねていって結実させるコンボというよりは、開幕からぶっ放す刹那的な生き方の瞬殺コンボを。

 そういうデッキが支配的な存在になることはゲームとしてあまり好ましいことではない。ただ抑止力がある中で、時たま弾けるぐらいのポジションであれば許されるのではないだろうか。

 具体的に言うと、《意志の力》を擁するレガシーであれば、1ターンキルを決めてやろうと開幕にオールインしてくる相手がいても返り討ちにできる。それゆえにその手のデッキが野放しになっているフォーマットなので、超短距離走で勝負したいプレイヤーはレガシーに挑戦してみるってのはどうだろう。《意志の力》のような打ち消しがあると言っても、毎ゲーム相手が初手にそれを持っているってわけでもないからね。

 そこで、持ってなかったら勝たせてもらうぜ、ってなデッキを紹介させてもらおう。開幕から急角度で落下する、フリーフォールのようなデッキだ。

Elisa Faria - 「Oops All Spells」
2° LPL Open 2020 @ Cards Store (Campinas, Brazil) 4位 / レガシー (2020年3月1日)[MO] [ARENA]

-土地(0)-

2 《野生の朗詠者
4 《ナルコメーバ
1 《タッサの神託者
4 《Elvish Spirit Guide
4 《猿人の指導霊
4 《地底街の密告人
4 《欄干のスパイ
4 《別館の大長
3 《絡み森の大長
-クリーチャー(30)-
4 《金属モックス
4 《水蓮の花びら
4 《否定の契約
4 《召喚士の契約
4 《暗黒の儀式
4 《陰謀団の儀式
1 《陰謀団式療法
4 《むかしむかし
1 《戦慄の復活
-呪文(30)-
4 《夏の帳
3 《自然の要求
4 《活性の力
4 《神聖の力線
-サイドボード(15)-
mtgtop8 より引用)
 

 生き方が他者と違うデッキは、そのリストも一風変わったものとなる。デッキ内の土地はなんと0枚。それゆえに、海外では「Oops All Spells」と呼ばれている。「あらま、全部呪文カードか!」ってとこかな。なかなかファニーなデッキ名だが、これはこのデッキの性質を見事に表している。このセリフを言うのは、このデッキと初めて相対した対戦相手のセリフなのだ。

 このデッキが全力で唱えにかかるカードは《地底街の密告人》か《欄干のスパイ》。

 これらのクリーチャーは共通した能力を持っており、どちらも対象のプレイヤーのライブラリーから土地カードが公開されるまで墓地に落とし続けるというものだ。つまり、土地が0枚・すべてが呪文カードで構成されたこのデッキであれば、ライブラリーを空っぽにすることが可能だ。というわけでそれを狙っていくデッキなのである。

 密告人とスパイ、どちらも計4マナでライブラリーを空にするカードなので、それを生み出すためのカードがどっさりてんこ盛りだ。土地がなくてもマナなんて生み出せるからね。

 《金属モックス》《水蓮の花びら》といったアーティファクト、

 《暗黒の儀式》《陰謀団の儀式》などのインスタント。

 そして、もちろんクリーチャーだ。ゲーム開始時に手札にあればマナを生み出す《絡み森の大長》、そして手札から追放することでマナになる《Elvish Spirit Guide》《猿人の指導霊》。

 特に後者の指導霊2種は、密告人&スパイを探すための《むかしむかし》《召喚士の契約》で手札に加えられる点が素晴らしい。

 これらのカードから生み出した{R}or{G}は《野生の朗詠者》で{B}に変換することも可能だ。

 全力でマナを加速し、密告人かスパイを戦場に出してライブラリーをすべて墓地に落としたら、その時点で勝負アリだ。ライブラリーから墓地に落ちることで《ナルコメーバ》の能力が誘発して戦場に出てくる。

 これをコストにして《戦慄の復活》をフラッシュバックで唱えて《タッサの神託者》を戦場へ。

 ライブラリーが0枚なので、能力が解決されればそのまま勝ち。簡単な話でしょう。

 見境なくぶっ放すタイプのコンボデッキであり、土地が0枚という特異な形状でありながらもしっかりとコンボ妨害に対する妨害も備えている点がこのデッキの実にいやらしい部分。仕掛けたターンに勝つからデメリットなんぞない《否定の契約》、念のために安全確認可能な《陰謀団式療法》。

 そして《意志の力》どころか《思考囲い》のような1ターン目のあらゆるアクションを否定する《別館の大長》!

 これだけ揃えれば憂いなし、ここまで詰め込めるのも土地のスペースが存在しないデッキならではだ。

 サイドボードのアンチ妨害カードも見事に0~1マナのもので固められている。中でも《夏の帳》は強烈だ。

 このデッキであれば手札を1枚消費して唱えることになるが、その分をすぐに補填してくれるのも嬉しい。《神聖の力線》とこれで自身を護り、《虚空の力線》のようなコンボを封じる墓地対策には《活性の力》《自然の要求》で応じよう。

 マジックの大原則を無視するかのような逸脱したデッキを使う、これもまたマジックの醍醐味である。じっくり戦いたい派には向かないかもしれないが、開幕からクライマックス派のプレイヤーにはその極致とも言える動きをぜひ楽しんでほしいね。

 さあ、明日はいよいよトリの登場だ。乞うご期待!

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