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岩SHOWの「デイリー・デッキ」
死の国からのダイアモンド(レガシー)
マジック史上最強のカードは何か?
これには諸説あるし、各自によって認識は異なる。かの《Black Lotus》がそうだと言う人も多いが、《島》か《山》だと答える人もいる。《王冠泥棒、オーコ》はオールフォーマットで使用され、近年のカードとしては最強議論に殴り込める1枚と言えるだろう。
僕個人としては……いろいろあるが、やはりレガシーで禁止になり、ヴィンテージで制限となっているカードを挙げたいところだ。カードプールが広大なレガシーでも使用を許されず、なんでもありのヴィンテージでも「ほどほどにな」と注意されるレベルこそ、最強に危険なヤツだろう。
その中から選ぶとすれば……通ればそのまま勝ちと言っても良い、モースト・デンジャラスなソーサリーである《ヨーグモスの意志》を推そう。
墓地にあるカードを手札にあるのと同様に好きにプレイ可能という、マジックの制限を取っ払う危険極まりない効果だ。上述のLotusや《暗黒の儀式》といったマナ加速を再利用し、墓地の呪文をたっぷりと余すことなく唱えられるようにするのが最も効果的だ。ドロー呪文でアドバンテージを手札に還元するもよし、フィニッシャーで決めにいくもよし。古くからコンボデッキの最後の一押しとして用いられ、軽量の呪文が揃うレガシーやヴィンテージではフォーマット設立時から上記のように禁止制限をかけられた。正真正銘、最強カードの一角と言って差し支えあるまい。
この《ヨーグモスの意志》のリメイクが2020年に登場しようとは。墓地のすべてのカードに脱出能力を与える《死の国からの脱出》である。
これと《ヨーグモスの意志》との違いは……墓地からカードを唱えるために脱出コストを支払う必要があり、それが呪文1つにつき墓地に他のカードが3枚と、ある程度の準備を要求する点。そして意志と異なり同じカードを何度も唱えられるという点だ。
制限がかかってはいるが、同じカードを使えるという点では勝っているとも言えるこのエンチャント、そりゃあレガシープレイヤーが黙っちゃいないよ。
てなわけで現在、レガシーでは脱出デッキが大人気。トーナメントにおいても上位に食い込み、存在感を示している。今日はそんなリストを1つ紹介だ。
1 《冠雪の平地》 2 《冠雪の島》 1 《冠雪の山》 1 《Tundra》 1 《Volcanic Island》 4 《溢れかえる岸辺》 4 《沸騰する小湖》 2 《虹色の眺望》 -土地(16)- 1 《タッサの神託者》 -クリーチャー(1)- |
4 《ライオンの瞳のダイアモンド》 4 《水蓮の花びら》 1 《否定の契約》 4 《思案》 4 《定業》 4 《渦まく知識》 1 《呪文貫き》 1 《退去の印章》 3 《悟りの教示者》 2 《オアリムの詠唱》 4 《死の国からの脱出》 4 《思考停止》 1 《浄化の印章》 1 《防御の光網》 1 《研磨基地》 4 《意志の力》 -呪文(43)- |
2 《僧院の導師》 4 《剣を鍬に》 2 《蒸気の連鎖》 2 《沈黙》 2 《静寂》 1 《否定の力》 2 《摩耗 // 損耗》 -サイドボード(15)- |
《死の国からの脱出》と組み合わせて一番美味しい思いができそうなレガシーのカードといえば、《ライオンの瞳のダイアモンド》だ。
劣化《Black Lotus》的な、{0}で色マナ3つを生み出す爆発力を誇りながらも、起動時に手札をすべて捨てるという大きなデメリットを持つクセのあるマナ・アーティファクト。このイニシャルから「LED」と呼ばれるこのカードは、《死の国からの脱出》設置後であれば気兼ねなく起動できる。捨てたカードは墓地に落ち、そしてそのまま脱出を得て唱えられるからだ。さらにLED自体も脱出させてじゃんじゃかマナを生み出すことが可能だ。
あとは何が必要か? それは脱出するために墓地に大量のカードを供給する、そんな呪文である。コストが軽ければなお良し、しかしそんな都合の良いものが……
あるんだな、これが。《思考停止》の出番だ。
レガシーでは古い時代から馴染みのある1枚。そのターンに唱えられた呪文の数だけコピーを生み出すストーム能力持ちで、ライブラリーを3枚墓地に落とすインスタントだ。
通常はドロー呪文やマナ呪文を唱えまくって繋げて、特大のストームが溜まったところで相手に向けて放つフィニッシャーだが、このデッキではこれをドロー呪文代わりに自分に向けて唱える。ストーム×3枚分のカードが自分のライブラリーから墓地に落ちる。単純に考えれば、ストームカウント1つにつき脱出が1回行えるというわけだ。
その分またLEDをグルグル回してマナを得て、ストームが溜まれば《思考停止》を脱出させてまた落として……このサイクルが形成できれば、ライブラリーが空になるまで墓地に落とすのは実に簡単なことだ。
挙動はやや異なるが《研磨基地》も追加の《思考停止》と言える。3枚落としてアーティファクトを脱出させて、基地を起こしてまた3枚落として……。
このデッキのゴールは2つある。上記のようにストームを稼いでから《思考停止》を相手プレイヤーに撃ち込み、ライブラリーをすべて墓地に落として「ドローができない」という敗北条件を満たしてやるというもの。
ただしこの勝ち方にはリスクがある。《引き裂かれし永劫、エムラクール》のようなライブラリーを修復する能力を持ったカードがあっては決まらない。また、相手にターンを返すことでドロー前にインスタントタイミングで動かれてもまずいというケースもあるだろう。
そこで、自分のターンにきっちりと、何の憂いもなく勝利するための1枚として、《タッサの神託者》が仕込まれている。
ライブラリーが空の状態でこれが戦場に出れば、その能力が誘発し、解決までいけばそのまま勝利である。即勝利ってやっぱり素晴らしいね。神託者の能力が解決される前に対応してこれを除去し、信心を0にしてやれば勝利条件を満たせなくなるのでは?と思ってしまうところだが、ライブラリーが0枚であれば信心が0であっても勝利できるので、除去で妨害というプランにも持ち込みにくく、クリーチャーコンボ特有の弱点も克服しているのが素晴らしい。神託者で勝っていると、「《研究室の偏執狂》を護るのは大変だったんだぞ」と、先人のコンボプレイヤーたちが語ってくるかもしれないね(笑)。
これまでにも自分のライブラリーを空にして勝利するコンボデッキはレガシーにもあったが、それらとは挙動が大きく異なり、安定感が高そうな《死の国からの脱出》デッキ。ただ墓地対策を何重にも仕掛けられるとさすがに勝つのに苦労することだろう。そうなったら墓地を全く利用しないデッキが隆盛してきて、今度はそっちに矛先が向いた時にまた脱出が……といった具合に、しばらくは環境の流れを作るデッキになりそうだ。
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