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戦略記事

岩SHOWの「デイリー・デッキ」

不死なるヨーグモス(モダン)

岩SHOW

 『テーロス還魂記』ではテーロスと直接の関わりがない、ある勢力が久々にその姿を見せている。ファイレクシアだ。

 エルズペスは自身の故郷の次元をファイレクシアによって滅ぼされている。また、ヴェンセールとコスと協力してミラディンがファイレクシア化するのにも抗ったが、奮戦もむなしくミラディンは新ファイレクシアと化してしまった。彼女がミラディンを去る際には《ファイレクシアの抹消者》に追いかけられ、あわやというところだった。その際の記憶が悪夢として蘇るのだろう、新カード《エルズペスの悪夢》にはその抹消者の姿を見ることができる。彼女が真の安らぎを得るためには、今一度ファイレクシアとの決着をつけねばならないだろう。この後はアジャニやカーンといった面々と合流するのだろうか。

 ファイレクシアはドミナリアとの戦争に負けて一度滅んではいるものの、今やまた多元宇宙最大の脅威となっている。機械の父であるヨーグモスもさぞや満足な笑みを浮かべていることだろう。肉体は消滅したヨーグモスだが、ファイレクシアがある限り彼は不滅であるとも言える。

 そんなヨーグモスと、彼にお似合いのキーワード「不死」を組み合わせた、実にそれらしいデッキがモダンで活躍していたので紹介しよう!

Aaron Barich - 「ゴルガリ・ヨーグモス」
Star City Games Modern Open Knoxville 優勝 / モダン (2020年1月11~12日)[MO] [ARENA]
2 《
1 《ドライアドの東屋
1 《
2 《草むした墓
4 《新緑の地下墓地
3 《花盛りの湿地
2 《育成泥炭地
4 《黄昏のぬかるみ
1 《カルニの庭
1 《ヨーグモスの墳墓、アーボーグ
-土地(21)-

4 《極楽鳥
4 《若き狼
1 《貴族の教主
4 《絡み根の霊
4 《根の壁
1 《血の芸術家
4 《ゲラルフの伝書使
4 《スランの医師、ヨーグモス
1 《夜の騎兵
-クリーチャー(27)-
4 《むかしむかし
4 《異界の進化
4 《召喚の調べ
-呪文(12)-
1 《ファイレクシアの破棄者
1 《イクスリッドの看守
1 《台所の嫌がらせ屋
1 《疫病を仕組むもの
1 《再利用の賢者
1 《打ち壊すブロントドン
1 《強情なベイロス
2 《思考囲い
2 《夏の帳
2 《減衰球
1 《突然の衰微
1 《暗殺者の戦利品
-サイドボード(15)-
StarCityGames より引用)
 

 これはアメリカの100人規模のモダンのトーナメントで優勝したリストだ。モダンと言えば《最高工匠卿、ウルザ》を用いたデッキが大繁殖しており、このデッキが勝ったタイミングではまだ1月13日の禁止制限改定の前だったので、まさしくウルザ旋風が吹き荒れているタイミングだ。

 そんな中で、ウルザの宿敵である《スランの医師、ヨーグモス》が勝利したというのはなんともドラマチックではないか。

 ヨーグモスは3つの能力を持っているが、最も重要なものは真ん中のもの。1点のライフとクリーチャー1体の生け贄を対価として、他のクリーチャーに-1/-1カウンターを置いてカードを1枚引くことができる。クリーチャーを生け贄に捧げれば捧げるほど相手のクリーチャーを無力化し手札が満ちるので、彼を使うのであれば何らかの手段で生け贄用の肉体を得る構築をしたいところ。

 このデッキはそのために、「不死」という能力を持ったクリーチャーを活用する。死亡すると+1/+1カウンターが1個置かれた状態で墓地から戦場に戻るというクリーチャーの能力である。+1/+1カウンターがすでに置かれた状態で死亡しても誘発せず、1回死んだら強くなって帰ってくるというニュアンスだ。

 これを持ったクリーチャーであれば、2回は生け贄に捧げることが可能だ。単純にクリーチャーカードが2枚の手札になるので、アドバンテージを得られている。ついでに相手のクリーチャーを除去できていれば、さらなるアドバンテージ。

 黒には《ゲラルフの伝書使》という大変に強力な不死持ちがいる。単体で使っても十分強く、相手のライフを2点失わせる能力を2回誘発させて一気にライフを詰められる。

 ただ、単色だと軽くて使いやすい不死持ちはこれぐらいしかいないので、このデッキでは緑の力を借りている。1マナという軽さが嬉しい《若き狼》に、速攻を持つためアタッカーとしても優秀な《絡み根の霊》だ。

 これらのクリーチャーを展開し、ヨーグモスで生け贄として使いまわしてゲームを優位に進めていく。そんな中速のデッキである。

 不死クリーチャーは複数種いるが、ヨーグモスは4枚しかない。そのためこのデッキにはクリーチャーを探すカード、戦場に出すカードが多く採用されている。

 1ターン目に土地や《極楽鳥》などのマナクリーチャーを探して順調な滑り出しもサポートする《むかしむかし》、クリーチャーを並べるデッキでは強く運用できる《召喚の調べ》。

 そしてこのデッキらしい1枚が《異界の進化》だ。

 《極楽鳥》《貴族の教主》そして《若き狼》を生け贄に捧げることで、《ゲラルフの伝書使》などに繋げることが可能だ。狼をコストにすれば実質損失ゼロである。

 伝書使を餌にして《夜の騎兵》を引っ張ってくるのも強いね。不死で戻った伝書使を再度生け贄に捧げてクリーチャーを破壊し、騎兵をヨーグモスで生け贄に捧げて伝書使がまた戻り、その伝書使をまたヨーグモスで……とグルグル回すことで、盤面をかき回し手札を得つつ相手の本体に8点とかいう、恐ろしいムーブだ。これは決めてみたい!

 着々と盤面を作って有利になることを狙ったこのデッキには、勝利のためのコンボをも仕込んである。必要なのはヨーグモスと不死クリーチャー2体、そして《血の芸術家》だ。

 《スランの医師、ヨーグモス》の能力で不死クリーチャーAを生け贄に捧げ、それは+1/+1カウンターが置かれて戻ってくる。今度は不死クリーチャーBを生け贄に捧げて、能力の対象は不死Aにする。Aの上に-1/-1カウンターが置かれ、これが+1/+1カウンターと相殺される。今度は+1/+1カウンターが置かれているBを対象にAを生け贄に……とループが形成される。

 これだけならライフがもたないが、《血の芸術家》がいればクリーチャーが出入りするたびに対戦相手のライフを1点吸い取れるので、最後の1点を吸い尽くすまで延々と生と死のループを繰り返すことが可能だ。

 冒涜的で実にヨーグモスらしいこのコンボ、ファイレクシア好きなプレイヤーは狙うべし!

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