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岩SHOWの「デイリー・デッキ」
セルフミル(モダン)
いきなりだが、今回はマジック初心者に向けたマジック用語をいくつか紹介しよう!
マジックの敗北条件の1つに「ライブラリーにカードがない状況でカードを引く」というものがあるね。『エルドレインの王権』のリミテッドでも、相手のライブラリーから墓地にカードを落とすことで、カードが引けないという敗北条件に相手を陥れるという戦略が有効なものとして広く知られている。
この敗北条件のことを、ライブラリーが無くなるということで「ライブラリーアウト」という一言でまとめて表現される。「ライブラリーアウト狙い」というように戦術のことを指したり、「青黒ライブラリーアウト」なんかのようにデッキ名に用いられたりする。ライブラリーアウトのイニシャルから「LO」と略されることもしばしば。
まあ、この「ライブラリーアウト」は頻繁に耳にするし、言葉から意味も分かりやすいので初心者でも知っている・わかる用語ではあると思う。では、このライブラリーアウトを狙うためにライブラリーを墓地に落とすこと、ライブラリー破壊を一言で表現することがあるのは知っているだろうか。
最古のライブラリー破壊用のカードは《石臼》。対象のプレイヤーのライブラリーを2枚墓地に置くこのアーティファクトの英名・Millstoneからとって「ミル」と表現することがあるのだ。LOデッキのことを「ミル」と呼ぶこともあり、特に海外で用いられる。
このミルというアクションは、時にLOデッキ以外にも居場所を見つける時がある。対戦相手ではなく、自分自身のライブラリーを削るのだ!
2 《沼》 3 《湿った墓》 2 《草むした墓》 3 《湿地の干潟》 4 《汚染された三角州》 4 《血染めのぬかるみ》 1 《ダクムーアの回収場》 1 《宝石鉱山》 -土地(20)- 4 《縫い師への供給者》 4 《面晶体のカニ》 4 《マーフォークの秘守り》 4 《墓所這い》 3 《屍肉喰らい》 4 《ナルコメーバ》 4 《秘蔵の縫合体》 4 《復讐蔦》 1 《憑依された死体》 -クリーチャー(32)- |
4 《不可思の一瞥》 4 《這い寄る恐怖》 -呪文(8)- |
1 《血の墓所》 3 《致命的な一押し》 2 《古えの遺恨》 2 《暗殺者の戦利品》 1 《悪ふざけ》 4 《否定の力》 2 《虚空の力線》 -サイドボード(15)- |
モダンで《甦る死滅都市、ホガーク》が暴れ回っていたころ、このクリーチャーを墓地に落とすために《縫い師への供給者》《面晶体のカニ》でサポートするデッキが活躍した。
ホガークは禁止となり、また同じく手札を入れ替えて墓地に落とし込む万能ソーサリーであった《信仰無き物あさり》も禁止となった。ホガークが去っても墓地から戦場に出てくる各種クリーチャー、特に《復讐蔦》は健在であり、これを用いるデッキを作ろう……にも、《信仰無き物あさり》の退場が痛いという状況であった。
このデッキはその欠けた1マナで墓地を肥やせる呪文の枠を、ミルカードの最新鋭《マーフォークの秘守り》で補うというアプローチの元に構築された、「セルフミル」とでも呼ぶべき墓地利用デッキの新型だ。
デッキの動きはミルまっしぐら。1ターン目から《縫い師への供給者》や、《マーフォークの秘守り》の出来事である《深みへの冒険》で自分のライブラリーを削る。2ターン目にも《面晶体のカニ》を出してからの《汚染された三角州》などフェッチランドを置いて削る、起動してライブラリーから土地を出してさらに削る。《縫い師への供給者》を《屍肉喰らい》に食わせてどんどん削る。そして……ミル効率最高峰の《不可思の一瞥》で一気に10枚削るッッ! なんと2ターン目にして16枚も削ってしまうことが可能なのだ。
60枚デッキの、実に4分の1ものカードを墓地に落として、さあどうするのか。得をするカードは山ほどある。
まずはクリーチャー。墓地から唱えられる《墓所這い》、ライブラリーから墓地に落ちれば全自動で戦場に出る《ナルコメーバ》などで戦場の頭数を増やして殴る体制を整える。
そして主役の《復讐蔦》!
同一ターンにクリーチャー呪文を2回唱えると墓地から戦場に戻ってくるこの4/3速攻で一気に勝負を決めるのがこのデッキのブン回りパターン。
そのために《墓所這い》が活きてくるわけだが、このゾンビとともに蔦戻しに一役買うのが、埋める役目も担う《マーフォークの秘守り》だ。出来事として唱えた後は追放領域から0/4クリーチャーとして唱えられるので、墓地を肥やすのと同時に戦場を作ることにも貢献する、地味ながらに重要な役回りを担ういぶし銀なのだ。
これらの墓地から戦場に戻るクリーチャーらがワラワラと這い出た後に、ターン終了時に《秘蔵の縫合体》もつられてやってくる。
こういうまともじゃない手段で戦場にクリーチャーを展開し、真面目にマナを払って戦場を作るデッキを相手に圧倒してやろうってわけだ。
このデッキの良いところは、クリーチャーで数回殴って相手のライフを減らしておけば、どんな時でもチャンスがある点だ。勝利を掠め取る避けられない一撃、それは《這い寄る恐怖》という飛び道具。
ライブラリーから墓地に落ちることで相手のライフを3点吸い取れる能力が誘発するソーサリー、ライフを3や6まで削っておけば、ライブラリーを削ることでこれを落として決着へと持ち込むことが可能なのだ。
この手の墓地を作るデッキにとって、ゲーム終盤に引いた墓地肥やしカードというものは往々にして無駄なドローになってしまうのだが、このデッキではミル役のカードを引いたことで逆転勝利という展開もあり得るのだ。《不可思の一瞥》で10枚めくる時、自分も相手も1枚1枚固唾を飲みながら、恐怖の3点が這い寄るか否かを見守ることになるだろう。
《信仰無き物あさり》を失ったスペースに《マーフォークの秘守り》が収まったことは喜ばしいことだ。さらに《復讐蔦》との相性が良くなったり青が濃くなったことで、サイドボードに《否定の力》を搭載できるようになったりと副産物も少なからず。
自分のデッキを自ら削り落とす独自の快感、君も味わってみないか?
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