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岩SHOWの「デイリー・デッキ」
二大巨頭の今後(スタンダード)
ローテーション後最初の一大イベント、2019ミシックチャンピオンシップⅤ(MTGアリーナ)が先週末に開催された。
このトーナメントでは使用者数で、2つのデッキが存在感を示すこととなった。まずはダントツの使用率33.8%、3人に1人が使った「バント・ゴロス」を振り返ってみよう。
2 《森》 1 《平地》 2 《島》 2 《寺院の庭》 1 《花咲く砂地》 1 《セレズニアのギルド門》 2 《繁殖池》 1 《神秘の神殿》 1 《茨森の滝》 1 《シミックのギルド門》 2 《神聖なる泉》 1 《平穏な入り江》 1 《アゾリウスのギルド門》 1 《疾病の神殿》 1 《ボロスのギルド門》 1 《オルゾフのギルド門》 1 《ヴァントレス城》 1 《調和の公有地》 2 《寓話の小道》 4 《死者の原野》 -土地(29)- 3 《樹上の草食獣》 4 《不屈の巡礼者、ゴロス》 2 《裏切りの工作員》 1 《豆の木の巨人》 1 《王国まといの巨人》 3 《ハイドロイド混成体》 -クリーチャー(14)- |
3 《むかしむかし》 4 《成長のらせん》 4 《迂回路》 3 《時の一掃》 3 《時を解す者、テフェリー》 -呪文(17)- |
1 《裏切りの工作員》 1 《王国まといの巨人》 1 《ハイドロイド混成体》 3 《夏の帳》 2 《敬虔な命令》 3 《霊気の疾風》 2 《軽蔑的な一撃》 1 《ガラスの棺》 1 《神秘の論争》 -サイドボード(15)- |
キーカードは《不屈の巡礼者、ゴロス》と《死者の原野》。
ゴロスや《迂回路》など戦場に土地を出すカードを大量に採用、デッキ内の土地の種類をばらけさせながら29枚とメガトン級の構成にすることで《死者の原野》からゾンビ・トークンを戦場に出すというアクションを確実に行えるように動いていく。
クリーチャーデッキ相手にはこれらのゾンビで食い止めながら《時の一掃》などで吹き飛ばし、また土地を置くだけでゾンビを生み出し……と強固な城を築き上げる。
コントロールデッキを相手にした場合はどれだけ除去されようとも毎ターン地の底からゾンビを呼び出し続け、物量で圧倒する。オールラウンダーなデッキであり、とにかく硬いのがセールスポイントだ。
いろいろな派生形はあるが、この緑白青の3色でまとめた形が一番扱いやすく、結果的に参加者の3分の1がその安定感に頼ることを選択したのだった。
ダラダラとコントロールだけするのではなく、《王国まといの巨人》《豆の木の巨人》《ハイドロイド混成体》など巨大なクリーチャーでの圧殺も狙いに行ける、受けから攻めへのスイッチングの早さはなかなか他のデッキに真似のできるものではなかった。
使用者は多くとも、決勝ラウンドの8席には1名しか送り出せなかったのは、包囲網を敷かれていたからであろう。
続いては使用率2位の16.2%、「シミック・食物」を振り返ろう。ゴロスの半分ではあるが、これもまた十分な使用者数である。《死者の原野》とともに環境を定義する1枚である《王冠泥棒、オーコ》を中心とした、食物シナジーで戦う青緑デッキの中速デッキだ。
11 《森》 5 《島》 4 《繁殖池》 3 《神秘の神殿》 1 《ギャレンブリグ城》 -土地(24)- 4 《金のガチョウ》 4 《楽園のドルイド》 4 《探索する獣》 4 《意地悪な狼》 4 《ハイドロイド混成体》 -クリーチャー(20)- |
4 《むかしむかし》 4 《軽蔑的な一撃》 4 《王冠泥棒、オーコ》 4 《世界を揺るがす者、ニッサ》 -呪文(16)- |
2 《恋煩いの野獣》 4 《大食のハイドラ》 2 《夏の帳》 3 《霊気の疾風》 3 《神秘の論争》 1 《夢を引き裂く者、アショク》 -サイドボード(15)- |
1ターン目《金のガチョウ》からの2ターン目オーコは、まさしくブン回りと形容するにふさわしい強力なムーブだ。
とりあえず食物トークンを生成し、次のターンにこれを大鹿にして3/3で戦闘を行うもよし。相手の戦場にクリーチャーが単体で出てくれば食物とそれを交換してしまうのも強烈で、ゆえに対戦相手はうかつにクリーチャーを展開できない。
あるいは《意地悪な狼》で噛みついてやるのも良いだろう。
狼に毎ターン食物を供給しサイズアップと破壊不能を付与し続ける、それだけでもクリーチャーデッキにとっては悪夢だ。そうやって盤面を支えながら《世界を揺るがす者、ニッサ》からの《ハイドロイド混成体》という具合にパワーカードのリレーで圧倒する。
このリストでは《軽蔑的な一撃》をメインから4枚採用しているのがポイント。
同型で対戦する際に先手側から《意地悪な狼》《探索する獣》や《世界を揺るがす者、ニッサ》を先に叩きつけられるとひっくり返せずに勝負アリとなってしまうことが多いので、それを防ぐためにこれで弾こうと。また、ゴロスを打ち消せるのも非常に大きく、半分以上のプレイヤーがこのどちらかのデッキを使用している今、トーナメントを見切った素晴らしいチョイスだ。
どちらのデッキにも共通するカードは《むかしむかし》と《ハイドロイド混成体》。
《むかしむかし》は《死者の原野》《不屈の巡礼者、ゴロス》という勝利へのピースを絶対に手に入れたいゴロス・デッキにはうってつけの1枚であり、ゲーム後半でもこのデッキにとって2マナ支払うのは容易いもの。それがゲーム中最初の呪文であればタダだなんて万々歳である。
シミックにとっての《むかしむかし》は先述のガチョウ→オーコというベストムーブをかますためにガチョウの水増し的存在。見つかったらむちゃくちゃ有利にゲームが進むので入れ得ってやつだ。
ハイドロイドはマナが伸びて青と緑の両方を使うデッキなら入れない理由はない、ってなくらいのいつだって最高な1枚。にらみ合いを打破するのはいつだってコイツだ。
これらのデッキは原野とオーコ&狼が数多くのクリーチャーデッキに対して駆逐してしまうレベルの強さを発揮する。そのため、11月から10月21日に変更された禁止制限告知において禁止にされる可能性が大いにあると話題になっていた。
さまざまな意見が飛び交っていたが、蓋を開けたところ禁止となったのは《死者の原野》。土地という対処の難しいパーマネントであり、スタンダードにおける多くの可能性を潰してしまっており、またゲーム時間を大幅に長引かせていたことがこの禁止決定の決め手となった。
というわけで、ゴロス・デッキはこのミシックチャンピオンシップが最後の晴れ舞台となった。一方で《王冠泥棒、オーコ》率いる食物軍団は禁止を免れた。今後も現状のままのデッキで戦っていけるので、多くの使用者を集めることとなるだろう。
ただ《死者の原野》が去った今、「標的はオーコ」一本に定まったとも言える。他のデッキが食物デッキの繁栄を許すまいとあの手この手の対策を備えて、結果的に多様なデッキ・カードが活躍するスタンダードになってくれたら……そう切に願う。
また、個人的には《不屈の巡礼者、ゴロス》というカード自体はかなり好みなデザインなので、この機械の斥候が活躍する新しいデッキの誕生にも期待したいところだ。土地を伸ばして重い呪文を唱える、いわゆるランプ戦略を用いるデッキに居場所はないだろうか? 新しいデッキを考える時はいつだって楽しいものだ。
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