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岩SHOWの「デイリー・デッキ」
その制限解除、23年ぶりにつき(ヴィンテージ)
マジックを人生そのものであると例える人は少なくない。もしそうであるならば、そこに別れがあるのも納得だ。マジックは1993年に産声をあげてから今年で26年目。それだけの月日を人が生きれば、そこには大小さまざまな別れがあるに違いない。
マジックも時に、カードがフォーマットを去ることがある。ローテーションによるものだったり、禁止カードに指定されてしまったり。完全な別れではなくとも、デッキの成立が困難になることがある。
ヴィンテージにおいては基本的に禁止カードはないが(マジック以外のことをするものは除く)、デッキに1枚しか採用できない制限カードに指定されてしまうものがある。《Black Lotus》のような強すぎるパワーカードと、《渦まく知識》などのそれら制限カードを引きやすくするドロー呪文が制限の対象になりやすい。ヴィンテージはマジックの歴史が詰まった何でもありのフォーマット。でも何でもありだからこそ、一部の強すぎるデッキが多様性を奪って環境を一色に染めてしまいかねないので、このような措置がなされるのはやむを得ないのだ。
つい先日も《大いなる創造者、カーン》と《神秘の炉》が制限カードに指定された。在りし日の1ターン目からの大暴れを見ることは、ゼロではないが以前よりもグッと減ることになる。さらば、1ターン目カーンの日々よ。
もしマジックが人生であるならば、そこには別れだけではなく再会もあるだろう。禁止や制限から解禁されるカードもあるのだ。
カーンと炉の制限と同時に解禁されたカードは《Fastbond》。
このカードが制限カードに指定されたのは、このフォーマットがヴィンテージと呼ばれるよりも前の話。前身フォーマットである「タイプ」1のころに制限カードに指定され、今日までこれをフルに使うことは禁じられていた。その期間、なんと23年。23年ぶりの再会……そんな不思議なことがあるなんて、これぞ人生ではないか。
というわけで、今回は23年の時を経てついに構築が可能となった《Fastbond》デッキを紹介しよう。
1 《森》 2 《Bayou》 2 《Taiga》 1 《吹きさらしの荒野》 1 《新緑の地下墓地》 1 《樹木茂る山麓》 1 《カラカス》 1 《ボジューカの沼》 2 《裂け岩の扉》 4 《不毛の大地》 3 《幽霊街》 1 《露天鉱床》 4 《演劇の舞台》 4 《暗黒の深部》 2 《Bazaar of Baghdad》 1 《The Tabernacle at Pendrell Vale》 1 《Glacial Chasm》 -土地(32)- 2 《溜め込み屋のアウフ》 2 《クルフィックスの狩猟者》 1 《ラムナプの採掘者》 -クリーチャー(5)- |
1 《Black Lotus》 1 《Mox Jet》 1 《Mox Emerald》 1 《モックス・ダイアモンド》 4 《輪作》 4 《Fastbond》 2 《踏査》 2 《ギャンブル》 4 《壌土からの生命》 1 《悪魔の教示者》 1 《無のロッド》 1 《活性の力》 -呪文(23)- |
2 《不屈の追跡者》 2 《墓掘りの檻》 2 《夏の帳》 1 《真髄の針》 3 《抵抗の宝球》 2 《古えの遺恨》 1 《暗殺者の戦利品》 1 《無のロッド》 1 《活性の力》 -サイドボード(15)- |
《Fastbond》の能力を解説しよう。自分のターンであれば何回でも好きなだけ土地がプレイできる! その代わり2回目以降は1点ダメージが伴う! 以上だ。かなり無茶苦茶なことを言ってくれる、さすが最初期のカードだ。
マジックのルールをぶち破るこのエンチャントはわずか1マナな点が素晴らしい。これを貼って、1ターン目から手札の土地を全部出す。そのためにデッキの半分以上を土地で埋めているのだ。
そうやって土地をばら撒いて、何をするのか? ここが肝心で、《Fastbond》解禁と同時に世界中のヴィンテージプレイヤーたちが頭を悩ませた点である。
このデッキでは、レガシーでもおなじみの《暗黒の深部》と《演劇の舞台》による「デプス・コンボ」を決め手にしている(「デプス・コンボ」についてはコチラ)。
《Fastbond》でこのコンボパーツ2枚と他の土地をダダッと並べたり、《Black Lotus》や各種モックスを用いることで、1ターン目から20/20のマリット・レイジを降臨させ、一発でゲームを決めることを狙うのだ。レガシーよりも《剣を鍬に》を用いるデッキが圧倒的に少ないフォーマットなので、このぶっ放しコンボは決まれば大変に防ぎづらい。
デプス・コンボというスピードに任せた動きもあれば、どっしりねっちりマナ基盤を攻める戦い方もできる。《不毛の大地》《幽霊街》そして土地であれば何でも破壊する《露天鉱床》!
これらを用いると、そのターンには他の土地が出せずこちらも1ターン止まってしまうという欠点があったが、《Fastbond》の前では問題にならない。土地を大量展開しマナを得て他のアクションをしながら、これらの土地でバリバリとマナ基盤を叩き割ることができるのだ。このプランは《溜め込み屋のアウフ》《無のロッド》《活性の力》などでマナ・アーティファクトをシャットアウトすることでより完全なものになる。
《露天鉱床》や《新緑の地下墓地》など墓地に落ちる土地は《壌土からの生命》と《ラムナプの採掘者》で再利用だ。
《Fastbond》のおかげで1ターンに何度でも使うことが可能、遠慮は無用だ。
これらのカードがあるおかげで《ギャンブル》も非常に使いやすい1マナサーチになる。
土地を持ってきて、ランダムに捨ててしまってもこれらで拾い直せばいいのだ。
そして、さらにこれらの墓地の土地を再利用する手段と相性が良いのが《Bazaar of Baghdad》! ヴィンテージを代表する名物土地だ。
《Fastbond》から叩きつけられるこれで2枚引いて3枚捨てる。2枚のドローは《壌土からの生命》の発掘に置き換えれば、より大量に土地が墓地に落ちることになる。ここからコンボパーツを拾ったり《ボジューカの沼》などの特定の相手に効く土地を投げつけたり、好きなように暴れると良い。
それらのアクションは墓地に落ちた《裂け岩の扉》が支えてくれるだろう。マナ能力を持たない土地もこれでしっかり土地としての仕事をするようになる。
それだけ《Fastbond》で好き放題やるとライフがゴリゴリ擦り減って危ないので、《クルフィックスの狩猟者》を使って痛みを帳消しにすると良い。ライブラリーの上に土地がある状態が続けば、とんでもないことになってしまうぞ。
土地を使う枚数が他のフォーマットより極端に少ないヴィンテージ。そこに《Fastbond》が加わることで、フォーマットの定説を覆すデッキが誕生したことは大変に喜ばしいことだ。23年我慢した分、さまざまなデッキを誕生させてその力を見せつけてほしいものだね。
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