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岩SHOWの「デイリー・デッキ」
バント石鍛冶:ネオスタイル(レガシー)
ちょっと昔話。《石鍛冶の神秘家》というカードを紹介しよう。
スタンダードで圧倒的な力を発揮し、モダンではトーナメント成立時から禁止にされるほどのパワーカード。レガシーでも存在感を誇り、かつてはこれを使ったデッキばかりがトーナメント上位の常連だった時期もあった。
このカードの何が強いのか。それは、本来そのコストでは到底戦場に出ないものを出せる点。2マナで手札から装備品であればなんでも戦場に出せるため、これで本来は5マナの《殴打頭蓋》を戦線投下! 2マナで4/4絆魂&警戒を戦場に出せるのはどう考えてもヤバい。
また、その《殴打頭蓋》やその他の装備品を自身の能力でライブラリーから探してこれるというのも強烈だ。マナ・コストを踏み倒すカードは強い、カードを得られるカードは強い、マジックの大原則2つにのっとった文句のつけようのないパワーカードだ。本人のコストもたったの2マナなので、2ターン目石鍛冶で頭蓋サーチ、3ターン目は2マナ立ててターン終了、という開幕から隙のない攻めが可能。要約するならば「めちゃつよ」ってことだ。
で、昔話。《殴打頭蓋》という石鍛冶最大のパートナーが登場した2011年5月のこと。メインデッキはこの石鍛冶で戦い、それらを運用しやすくするために《貴族の教主》も採用した「バント石鍛冶」なる白青緑の3色デッキがレガシーに登場する。サイド後にはなんと、石鍛冶および装備品が対策されることを見込んで《自然の秩序》と《大祖始》を採用。教主からマナ加速しながらこれを生け贄に捧げて3ターン目に《大祖始》を降臨させるという戦略を仕込んだ、二段構えのリストが流行ることとなった。
石鍛冶も《自然の秩序》もコストを無視して強いクリーチャーを戦場に出すという共通点があり、デッキの完成度も高かった。
それから今日に至るまでの間に「バント石鍛冶」は廃れてしまった。《大祖始》に頼らずとも同様のプロテクションを持った《真の名の宿敵》が登場したこともあって、緑を足すメリットが薄れたのだ。
ただ、世の中にはマニアがいる。この時代にあえて緑を足した石鍛冶デッキを使っている猛者を見つけたので紹介させてもらおう。《自然の秩序》は入っていないが、似たようなカードも……?
1 《平地》 1 《島》 3 《Tundra》 3 《Tropical Island》 4 《溢れかえる岸辺》 4 《霧深い雨林》 3 《不毛の大地》 -土地(19)- 4 《貴族の教主》 3 《石鍛冶の神秘家》 3 《瞬唱の魔道士》 3 《真の名の宿敵》 1 《ラムナプの採掘者》 1 《改革派の結集者》 -クリーチャー(15)- |
4 《渦まく知識》 4 《思案》 4 《剣を鍬に》 2 《呪文貫き》 1 《呪文嵌め》 1 《使い魔の策略》 1 《新生化》 1 《議会の採決》 4 《意志の力》 1 《梅澤の十手》 1 《殴打頭蓋》 2 《精神を刻む者、ジェイス》 -呪文(26)- |
1 《溜め込み屋のアウフ》 1 《封じ込める僧侶》 1 《エーテル宣誓会の法学者》 1 《クァーサルの群れ魔道士》 1 《漁る軟泥》 2 《外科的摘出》 2 《水流破》 1 《狼狽の嵐》 1 《夏の帳》 1 《解呪》 1 《ドビンの拒否権》 1 《議会の採決》 1 《火と氷の剣》 -サイドボード(15)- |
《貴族の教主》のマナ加速により1ターンに複数行動したり、《精神を刻む者、ジェイス》をスムーズに展開できたりという良さのある「バント石鍛冶」。このリストでは《新生化》を用いるということも緑を足す重要な意味合いである。たった1枚のソーサリーが?と思われるかもしれないが、このたった1枚の《新生化》がこのデッキを唯一無二のものにしている。
まず、《新生化》を1枚足すことでデッキに3枚しか入っていないカードが実質4枚入っていることになる。どういうことかというと、このリストには《石鍛冶の神秘家》《瞬唱の魔道士》《真の名の宿敵》が3枚ずつ採用されている。
いずれも強力で、4枚採用したくなるカードだが……これらを4枚ずつ採用した場合、他のカードを削らなければデッキは60枚を上回ってしまう。1ゲームでこれらがすべて4枚ずつ必要となるケースは稀であるので、だったらこれらすべての4枚目を兼ねることのできる他のカードで埋めてしまえば良いだろうと、そういう設計思想での《新生化》1枚挿しってわけだ。《貴族の教主》を生け贄に捧げる光景は在りし日の《自然の秩序》を思い出す。役目を終えた石鍛冶を、+1/+1カウンターが置かれた《真の名の宿敵》に進化させるという動きも無駄がなくて強い!
この《新生化》を採用したことで空いたスペースに野心的なカードを足すことができるのも注目ポイント。2マナクリーチャーどちらかを生け贄に《新生化》→《改革派の結集者》と繋げると、生け贄に捧げたクリーチャーを墓地から戦場に戻せてアドバンテージが爆発!
石鍛冶も《瞬唱の魔道士》も使いまわして嬉しいカードなので、これで強引に戦況を有利に持って行こう。これら2マナの精鋭を出しなおすために《使い魔の策略》とかいう激シブカードが採用されていて、僕は思わずガッツポーズしてしまったよ。
《ラムナプの採掘者》1枚挿しも、《不毛の大地》を回収して投げつけているだけで倒せる相手には劇的に効く。
サイドボードには同じく、特定の相手にブッ刺さるクリーチャーが種類を散らして採用されている。《新生化》のおかげで2枚ずつ採用したりしなくても良いので、サイドボードを広く使える点が嬉しいね。
今回のデッキはマニア向けというか、この使用者の専用機といった感は否めない独特なリストである。でもそのリストからは、創意工夫が多々見られ、学ぶことにあふれていた。
《渦まく知識》や《思案》のおかげで、多少無理な構築でもなんとかなったりするのがレガシーである。すべてが4枚ずつ採用された綺麗なリストもステキだが、1枚挿しが多数並んだこういったリストもまた魅力的なもの。ぱっと見でよくわからないデッキリストと出会った時は、その構築が為されている理由について少し考えてみると良いだろう。思わぬ発見が、君の引き出しを1つ増やしてくれるはずだから。
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