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岩SHOWの「デイリー・デッキ」
ホガークの祭壇(モダン)
マナを払わずに○○する、これぞマジックで最もプレイヤーが望んでいることだろう。
本来、クリーチャーやプレインズウォーカー、その他の呪文はマナを払うことでその恩恵を受けることができる。マナはマジックの基本中の基本だ。
しかし、その基本から逸脱する手段がちょくちょく出現する。『アライアンス』では《意志の力》が登場、カードを計2枚失う代わりにマナなしで打ち消しが唱えられるという革命的なカードで、それから20年以上が経過した今でもエターナル環境におけるコンボなどへの抑止力としての役目を果たしている。このような、代替コストを支払うことでマナが不要になる呪文は「ピッチスペル」と呼ばれる。
ピッチスペルとは条件が異なり、色マナ1点の代わりに2点のライフで支払うことを選べるコスト軽減手段は「ファイレクシア・マナ」。《精神的つまづき》《ギタクシア派の調査》《はらわた撃ち》などのカードは0マナで唱えられる上に、そもそも色が合っていなくてもデッキに入れられるという点でかなり壊れていた。
このファイレクシア・マナと同じように、呪文のコスト軽減のために他の資源を割くことができるのが「探査」能力。墓地のカードを追放して不特定マナの代わりにできるということで、《墓忍び》《時を越えた探索》《宝船の巡航》といったパワフルなカードを輩出した。
現スタンダードには「召集」能力がある。これはクリーチャーをタップすることでコストを支払えて、色マナもカバーできる点が優秀だ。
これらのコスト軽減能力はいずれもデンジャラスなものであり、一歩間違えるととんでもない強さになってしまう。クリーチャーを用いるという縛りのある召集以外はスタンダードのセットには収録しにくいのだが……スタンダードを回避して直接モダンにやってくるセットでなら問題ないのでは?ということで、『モダンホライゾン』にはピッチスペルや探査を持ったカードが収録されている(さすがにファイレクシア・マナはダメだったようだ)。新たなコスト踏み倒しカードの登場に胸が躍ったプレイヤーも少なくないだろう。
中でも注目の1枚は《甦る死滅都市、ホガーク》。
墓地から唱えられる代わりに、マナを使ってそのコストを支払うことはできないというとんでもないデザイン。召集と探査で7マナ分賄って8/8トランプルのビッグボディを手に入れろってわけだ。
モダンであればこれは決して払うのが難しいコストではない。『モダンホライゾン』がオンラインで使用可能になると同時に、ホガークを用いたデッキが大量に這い出してきた! モダンの新たな時代を率いるのがこのデッキだ!
1 《沼》 4 《血の墓所》 1 《神無き祭殿》 4 《血染めのぬかるみ》 4 《湿地の干潟》 1 《汚染された三角州》 4 《黒割れの崖》 -土地(19)- 4 《屍肉喰らい》 4 《墓所這い》 4 《傲慢な新生子》 4 《縫い師への供給者》 4 《恐血鬼》 4 《復讐蔦》 4 《甦る死滅都市、ホガーク》 -クリーチャー(28)- |
4 《信仰無き物あさり》 1 《壊死性の傷》 4 《狂気の祭壇》 4 《黄泉からの橋》 -呪文(13)- |
4 《薄れ馬》 2 《鋳塊かじり》 2 《壊死性の傷》 2 《沈黙の墓石》 1 《悪ふざけ》 4 《虚空の力線》 -サイドボード(15)- |
ベースとなっているのはモダンの既存デッキ「ブリッジヴァイン」。軽量クリーチャーを出しながら同時に墓地にクリーチャー・カードを落として、《復讐蔦》を高速展開したり《黄泉からの橋》でゾンビ・トークンを並べるなどして激しいラッシュを仕掛ける攻めっ気あふれるデッキだ。
このデッキにホガークが参入したことでその性質は大きく変化した……のだが、まずは他にも得た新戦力から紹介するとしよう。
『モダンホライゾン』では新規カード以外にも、これまでモダン環境にはなかったカードが再録されている。その中でも「ブリッジヴァイン」が欲しかった1枚とも言えるのが《屍肉喰らい》。
このカードは1マナにしてクリーチャーをマナ不要で生け贄に捧げることができる。このようなパーマネントを生け贄に捧げる(sacrifice)台座的なイメージから「サクリ台」なんて呼ぶのだが、この《屍肉喰らい》はサクリ台の中でもかなり優秀なもの。自身のサイズを上げて殴るプランを狙えて、かつゾンビなので《墓所這い》を喰らわせては呼び戻すという動きができる。これで《復讐蔦》を蘇らせつつ《黄泉からの橋》からゾンビがわらわら出てくるし、それら墓地に落ちて欲しいキーパーツを得るために《縫い師への供給者》を生け贄に捧げるのも非常に容易になった。
サクリ台といえば、もう1つの再録カードはこの通称に最も当てはまる、元祖と言っても良い1枚《狂気の祭壇》。
このデッキではその名の通り狂った働きを見せるとんでもないアーティファクトだ。《屍肉喰らい》と同じく、0マナでクリーチャーを生け贄に捧げられるだけでも偉く、そのコストとなったクリーチャーのパワー分だけライブラリーのカードを墓地に置くという能力がこのデッキには噛み合いまくっている。対象を自分にして起動すれば、モリモリと墓地を肥やすことが可能だ。
サクリ台に《縫い師への供給者》、《信仰無き物あさり》に《傲慢な新生子》などを用いて墓地にキーカードを全力で落とし込めるようになり、従来の構成よりも序盤の安定感が大いに増して大幅に強化されたのだ。
ここにホガークが入ってくるわけだが、その役目は墓地の不要カードを探査し、ゾンビたちをタップすることでマナいらずで戦場に出てくるハードパンチャー、というだけではない。《狂気の祭壇》で生け贄に捧げれば、自身のライブラリーから8枚ものカードを墓地に落とすことに。このデッキではカードを墓地に置く行為はドローしているようなものなので、どれだけ莫大なアドバンテージを得られるかわかってもらえるだろう。
こうやって墓地に《黄泉からの橋》を含むカードを大量に落として準備ができたら、今度は対象を対戦相手に切り替えて相手のライブラリーを攻めることもできる。《罠の橋》などでホッとしているところをライブラリー切れにしてアッと言わせよう! アドバンテージ源にして新しい勝ち方を提供するとは、ホガーク恐るべし。
サイドボードにも新カード《悪ふざけ》の姿が。
発掘付きのアーティファクト破壊なんて、まさしくこのデッキで使えと言っているようなもんだ。アーティファクトに頼るデッキに毎ターン撃ち込んで苦しめてあげよう。
サイドボードと言えばこのデッキにとって突き刺さる対策カードが《虚空の力線》。これに対抗するために、赤黒の2色で構成されているデッキに白を足して《薄れ馬》を妥協せず4枚採用しているのがこのリストの用意周到な点。
想起コストで1マナで唱えられ、また想起で戦場に出て能力が誘発している間に《屍肉喰らい》で食べることができたり、想起で唱えてもクリーチャー呪文であるため《復讐蔦》復活のカウントを進めることも可能と、なかなか細かいテクニックが隠されたナイスチョイスだ。
予想していた通りだが、『モダンホライゾン』の加入はモダンというフォーマットを大きく揺るがすことになった。7月末にはモダンのミシックチャンピオンシップも開催されるので、それに向けて、これからもデッキをどんどんと紹介していくのでよろしく! しかしこのホガークデッキ、環境最初期にとんでもない完成度のものが出てきたな……。
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