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岩SHOWの「デイリー・デッキ」
我が名はアブザン、いやドラン、The Rock、Junk…(モダン)
先日、Twitterで「カードの俗称」という話題が盛り上がっていた。例えば、「ディッチャ」とか。これはDisenchantの略で《解呪》のこと、転じて《解呪》と同じようにエンチャントとアーティファクトの両方を破壊できるカードのことを指す。今では同様のスペックの《帰化》が基本的なカードとなっているのだが、ベテランプレイヤーは先に出た《解呪》の方が馴染みがあって今でもディッチャと呼称することが多い。
MTGアリーナから始めたプレイヤーにはこのあたりの俗称・略称がわからないよね、ということで盛り上がっていたのである。確かに、若いプレイヤーは《神の怒り》を知らないから、なぜ《ケイヤの怒り》をラスゴというのかわからないだろうな。新規プレイヤーには可能な限りわかるように伝えたいもんですな。
カードだけでなく、デッキ名にもそういうジェネレーション・ギャップを感じるものがある。例えば……白黒緑の3色で優秀なクリーチャーにパーマネントと手札を破壊する呪文を備えたデッキ。このデッキを何と呼ぶ?
「アブザン・ミッドレンジ」あるいは単に「アブザン」と呼ぶ人が今では多いだろう。タルキールにて登場した白黒緑の3色からなる氏族(ラヴニカで言うギルドみたいなもの)がアブザンという名前だったことから、以後この3色のデッキは「アブザン」とまとめられることになった。
ただ、プレイヤーによっては「ドラン」と呼ぶかもしれない。《包囲の搭、ドラン》を採用した3色デッキが一時期流行して、この呼称は一般的なものになっていたか。
さらに古い時代を知るプレイヤーは「The Rock」と呼ぶかもね。なんでそんな呼び方をするのかは別の回でまとめているので、そちらで確認してほしい。
あるいは「PT Junk」「ジャンク」なんて呼ぶ古参プレイヤーもいるだろう。ジャンクとはすなわち寄せ集め。さまざまな色から優秀なカードを集めて、色の概念に縛られずカードパワーで押し切るデッキのことを、90年代の頃はこう呼んだのだ。かつて存在したエクステンデッドというフォーマットでは、現エターナル環境でも活躍する《Bayou》のような多色土地・デュアルランドが使えたため、ローリスクで色を足すことができた。白単に《ジャッカルの仔》や《稲妻》を足したデッキがプロツアー(PT)にて活躍し、「PT Jank」と呼ばれて広く認知されるようになった。この赤白のJankに対して、区別するために緑のクリーチャーを白と黒の呪文でサポートするデッキをJunkと表記するようになったと言われている。
今日はそんなアブザン? ザ・ロック? ジャンク? デッキの最新バージョンを紹介しよう! 無駄な知識がつく導入に付き合ってくれてありがとう。
1 《平地》 3 《沼》 2 《森》 1 《神無き祭殿》 1 《寺院の庭》 2 《草むした墓》 1 《吹きさらしの荒野》 4 《新緑の地下墓地》 4 《乱脈な気孔》 2 《活発な野生林》 4 《廃墟の地》 -土地(25)- 4 《残忍な剥ぎ取り》 4 《タルモゴイフ》 1 《漁る軟泥》 3 《不屈の追跡者》 2 《包囲サイ》 -クリーチャー(14)- |
4 《流刑への道》 4 《思考囲い》 2 《コジレックの審問》 4 《暗殺者の戦利品》 1 《集団的蛮行》 1 《大渦の脈動》 4 《ヴェールのリリアナ》 1 《オルゾフの簒奪者、ケイヤ》 -呪文(21)- |
2 《大爆発の魔道士》 3 《石のような静寂》 4 《虚空の力線》 1 《忍び寄る腐食》 1 《滅び》 1 《花崗岩の凝視》 1 《仕組まれた爆薬》 2 《生命の力、ニッサ》 -サイドボード(15)- |
モダンにおいて黒緑を中心としたデッキは一定の地位を築いている。《思考囲い》で相手の行動を阻害しつつ、《タルモゴイフ》などの軽くてパンチ力のあるクリーチャーでさっさと殴り勝つ、という古典的な戦略は今なお強力であるためだ。
《暗殺者の戦利品》が加わったことでパーマネントへの干渉力がさらに増したのも追い風だ。
このカードのすごいところは、土地にも触れる点。モダン特有の土地を利用したコンボデッキにも対処可能となり、デッキパワーは確実に増したのだ。
赤を足して《稲妻》や《コラガンの命令》が使える「ジャンド」も魅力的だが、この「アブザン」が白を足したことで誇れる点はライフの持ちの良さだ。《流刑への道》という最軽量の確定除去でしっかりと自身を護り、《オルゾフの簒奪者、ケイヤ》による墓地追放&回復能力でライフを危険域から脱出させる。《包囲サイ》というライフ差をグッと縮めてむしろ引き離すフィニッシャーも頼もしい。
そして何より、これら白絡みのカードを使うために白を足したことで《乱脈な気孔》も採用できる点が素晴らしい。
速攻デッキ相手にクリーチャーを捌ききったら、これをクリーチャー化させて攻めに転じよう。絆魂で回復して、文字通り攻防一体だ。《ヴェールのリリアナ》で締め上げながらだとより効果的で、相手のライフを0にする前に心を折って勝負を決めてくれるだろう。
このデッキは3色でありながら《廃墟の地》を4枚採用している点にも注目してほしい。
一見無色の土地を多く採るのは無謀にも見えるが、このリストでは基本土地も多めに採用しており、《廃墟の地》は相手の強い土地を盤面から排除しながらこれら基本土地にアクセスして3色のカードを確実にプレイできるようにする、マナサポートでもあるのだ。せっかく《暗殺者の戦利品》で土地に仕掛けていけるのでその点をより強化したいし、《不屈の追跡者》がいれば手札も打点も増えることになるからね。こうやって着実にアドバンテージを積み重ねて、ド派手な動きはないながらもゲームを優位に進める……シブいデッキが好きな人にはぜひとも使ってほしいところだ。
サイドボードには白を足したおかげで《石のような静寂》という絶対的なアンチ・アーティファクトカードを用意できるのもこの3色の強み。
このリストではさらに《忍び寄る腐食》《仕組まれた爆薬》《花崗岩の凝視》と、アーティファクトを一気に盤面から消し飛ばせるカードが多数並んでいる。ここまでやる理由については……来週からいよいよ本格的に紹介する、モダンのデンジャラスなデッキへ対抗するためだ。どんなデッキか、お楽しみに! それじゃあ、楽しい週末を!
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