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岩SHOWの「デイリー・デッキ」
スチューピッド・グリーン2019(モダン)
「スチューピッド・グリーン」というデッキが大昔に存在した。20年以上前の話なので大昔と表現しても差し支えないだろう。「バカげた緑」という直球なデッキ名が実に良いこのデッキ、どんなバカなことをするのかというと……《暴走するヌー》というクリーチャーを用いたビートダウンだ。
4マナ5/4トランプルというスペックは、当時のクリーチャーの中では頭ひとつ抜けた立派なものだった。ただ、もちろんタダでヌーを手なずけるなんてことは許してもらえない。暴走してるくらいだからそう簡単にいくものか。というわけでこのヌーは、アップキープの開始時に自分の緑のクリーチャーを手札に戻してしまう。コストに優れたクリーチャーを出したいのに、それが自分の展開を阻害しているなんて本末転倒、バカげた話だ。
ただこの能力、手札に戻ってしまっても良いクリーチャーと組み合わせれば、有益に働くものでもある。《花の壁》《ウークタビー・オランウータン》の能力を再利用し、能力の使用回数に制限のある《根の壁》《スパイクの飼育係》も手札に戻して死亡させずに使いつくす。そうやってアドバンテージを得ながらヌーで殴りきる!これが「スチューピッド・グリーン」だ。
《忍び寄るカビ》《砂漠の竜巻》《不毛の大地》で相手の土地を攻めるのもこのデッキの特徴で、全体的に重めな構成を《ラノワールのエルフ》《エラダムリーのぶどう園》による加速で支えている。
実はStupidというのはこのマナ基盤破壊とヌーの暴れっぷりに負けたプレイヤーが口にした捨て台詞からとられたという伝承があるが、何せ昔のことなので詳細は不明だ。結果として印象的なデッキ名となっているのでオーライだとは思う。ヌーを主軸とした武骨な見た目と、オランウータンが出たり入ったりする様のシュールさが、マジックを始めて少し経ったころの自分にはとても魅力的に映ったものである。
このヌーはもはやエターナル環境でしか使えなくなってしまったが、それと全く同じ能力を与えられたカードがモダン環境には存在する。その名も《暴走する氈鹿》!
カモシカとはマニアックなチョイスだ。神河に生息しているこの暴れる獣を使って、バカげたことをやってやろう!という熱い思いを感じるリストを見つけたので紹介するぞ!
14 《森》 1 《繁殖池》 4 《樹木茂る山麓》 1 《ペンデルヘイヴン》 -土地(20)- 4 《東屋のエルフ》 3 《ラノワールのエルフ》 4 《永遠の証人》 1 《暴走する氈鹿》 2 《酸のスライム》 1 《女王スズメバチ》 3 《ハイドロイド混成体》 2 《歩行バリスタ》 -クリーチャー(20)- |
4 《楽園の拡散》 3 《三なる宝球》 4 《ムウォンヴーリーの酸苔》 4 《原初の命令》 2 《すき込み》 3 《ビビアン・リード》 -呪文(20)- |
2 《漁る軟泥》 3 《強情なベイロス》 2 《歩行バリスタ》 2 《墓掘りの檻》 2 《大祖始の遺産》 2 《漸増爆弾》 2 《掻き集める梢》 -サイドボード(15)- |
カモシカで手札に戻せるのは緑のクリーチャーであり、それは多色でも問題ない。ということで、今「緑絡みのクリーチャーで最も手札に戻してもう一度使いたいランキング」の上位に食い込むであろう、《ハイドロイド混成体》と組み合わせたデッキだ!
序盤に4マナで2枚ドローして、後半にこれを回収してX=6とかで出し直し……鬼!と相手に言わせることができるムーブだろう。
これだけでなく、同ランキングで殿堂入りと言っても良い存在であるアドバンテージの化身・《永遠の証人》も毎ターン使いまわして、地獄を見せてやろう!というのがこのデッキのコンセプトだ。まさしくスチューピッドの正統後継者である。
カモシカでアドバンテージを得るという目的はあるが、これの枚数は1枚に抑えられている。2体以上並べたいカードでもないし、何よりモダンではこれを見つけてくる手段がある。《原初の命令》だ。
好きなクリーチャーをライブラリーから手札に加えるモードを持ち、カモシカへのアクセス手段でありこのデッキのキーカードでもある。クリーチャー以外のパーマネントをそのオーナーのライブラリーの一番上に送るモードを選んで、これで相手の土地を対象に取る。使えるマナを減らしつつ、次のドローを1回飛ばす。《永遠の証人》でもう一度。カモシカからの証人でもう一度……と、一種のハメパターンに持ち込むのが勝ち手段だ。
同じく土地をライブラリーの上に、しかも2枚も送る鬼の呪文《すき込み》と、純粋に土地を破壊しつつこちらの土地を伸ばす《ムウォンヴーリーの酸苔》で土地を攻め、《三なる宝球》で軽量呪文を唱えることに制限をかけてゲームをスローダウンさせる。
この動きにはマナが必要なのでマナ・エルフたちと《楽園の拡散》で加速する。《東屋のエルフ》で拡散をつけた《森》をアンタップして、じゃんじゃかマナを得ていこう。
これがこのデッキのたどる勝利への道である。こういうの、最高に好きだなぁ。
《原初の命令》はアグレッシブなデッキ相手には7点回復を2回ほどするだけでも有利になれるだろう。ハイドロイドへの時間を稼いでくれるはずだ。クリーチャーデッキ相手には大量のマナからの《歩行バリスタ》や《女王スズメバチ》で勝負だ。女王がカモシカで往復し始めたらゲームエンド。これはやってみたい!
強いカードを何度も何度も、毎ターン使いまわす。その夢は、暴走する獣の群れの中にある。オールドファンも、これらのカードを全く知らなかった新規プレイヤーにも、こういうデッキが響いてくれるとマジック大好きおじさんとしては嬉しい限りだ。4月のマジックフェスト・横浜2019にもし参加するなら使いたいデッキの候補だな!
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