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戦略記事

岩SHOWの「デイリー・デッキ」

マナレス・ドレッジ(レガシー)

岩SHOW

 長年、悩まされていることがある。発作のように起こる、土地事故だ。

 マジックをやっていれば誰でも直面する、土地を引けない&土地を引きすぎるというドローの偏りを事故と呼ぶ。事故というくらいだからわかって避けられるものではなく、諦めるのが肝心なのだが……MTGアリーナでランク戦をやっている時など、これが連発するととても苦しい思いになる……僕の場合、それがまとまってやってくる体質なので、すなわちゴリッと連敗してランクが2つも3つも下がってしまうなんてことはザラだ(笑)。

 ここ最近あまりにもこれが多いので、街の名医と呼ばれる方に相談してみた。この発作を抑える方法はないだろうか? マジック・ドクターは「副作用はあるかもしれないが……」そう言いながら、1枚のリストを手渡してきた。そこには、確かに土地事故とは無縁のデッキが記されていた。

vidieowiz4 - 「マナレス・ドレッジ」
Magic Online Legacy Challenge #11800719 9位 / レガシー (2019年2月17日)[MO] [ARENA]

-土地(0)-

4 《ゴルガリの凶漢
4 《ナルコメーバ
4 《冥界の影
3 《渦巻き乗り
4 《秘蔵の縫合体
4 《臭い草のインプ
2 《よろめく殻
4 《イチョリッド
4 《ゴルガリの墓トロール
4 《通りの悪霊
1 《憎悪縛りの剥ぎ取り
4 《変幻影魔
2 《別館の大長
-クリーチャー(44)-
4 《陰謀団式療法
4 《黄泉からの橋
4 《這い寄る恐怖
4 《戦慄の復活
-呪文(16)-
3 《フェアリーの忌み者
1 《別館の大長
3 《精神壊しの罠
4 《意志の力
2 《Contagion
2 《撹乱する群れ
-サイドボード(15)-
 

 レガシーにおいて、発掘能力を用いてライブラリーから大量のカードを墓地に落とし、それらを用いて戦うデッキを「ドレッジ」と呼ぶ。マナをあまり使わずに墓地からクリーチャーを出したり呪文を唱えたりできるのがその最大の魅力だ。

 この点をより特化させ、全くマナを用いない、すなわち土地0枚という異形のリストに仕上げたものがこの「マナレス・ドレッジ」だ。土地を使わないからそもそも土地事故が存在しない、ドクターはとんでもない荒療治を教えてくれたわけだ。

 土地を使わずにどうやってゲームに勝つのか? まず、墓地からマナなしで戦場に出てくるクリーチャーを展開する。

 ドローを発掘に置き換えてライブラリーからカードを落とし、その過程で《ナルコメーバ》が戦場に出る。

 クリーチャーカードが大量に落ちれば、アップキープに《イチョリッド》と《冥界の影》が這い出てくる。

 また、墓地からクリーチャーが出れば《秘蔵の縫合体》も遅れてやってくる。これらを用いてのビートダウン、というのもこのデッキの勝ち手段だ。

 ただもちろん、それだけではパンチが弱いので、もっと大きなクリーチャーの展開も狙う。これらマナなしで戦場に出る連中を生け贄にして《戦慄の復活》をフラッシュバックだ。

 これで釣り上げる候補はいくつかある。《憎悪縛りの剥ぎ取り》は墓地からクリーチャーを毎ターン戦場に出せるこのデッキでは、バシバシとダメージを飛ばしまくってくれる暴れん坊。クリーチャーが大量に落ちている状態で《ゴルガリの墓トロール》を釣り上げて剥ぎ取りからの大ダメージという動きも狙っていきたいところだ。

 《別館の大長》は安定した打点を確保しつつ、相手のあらゆる呪文を1マナ重くしてくれるのでこれもまた頼りになる。

 もっともっと墓地にカードが必要な状況なら《渦巻き乗り》から複数枚ドローを狙おう。もちろんそれらはすべて発掘に置換することになる。墓地を貯めて、これらのビッグアクションを決めるのだ。

 その前に《陰謀団式療法》で《意志の力》などの打ち消しを抜いたり、《剣を鍬に》などの除去を落としておくことも忘れずに。

 また、これらのフラッシュバック呪文はクリーチャーを生け贄に捧げることがコストになっているが、それにより《黄泉からの橋》の能力が誘発し、ゾンビ・トークンが生成される。

 生け贄に捧げた方がクリーチャーが増える、という不思議な現象を見ることができる。複数落として一気に地獄絵図を作り上げよう。

 とりあえずマナがなくてもゲームに勝てる動きができるということは分かった。だが、最も大事な部分を忘れちゃいけない。上記のような動きは、墓地に発掘カードが落ちている状態になってから狙えるもの。そのスタート段階を、呪文を唱えずにどうやって狙うのか? 答えは簡単だ。手札8枚でターン終了を迎え、捨てるのである。たったそれだけ、カードもマナも使わない。先手後手決定時、自分がダイスロールなりなんなりに勝てば、多くのプレイヤーが先手を選ぶだろう。この「マナレス・ドレッジ」はそれを逆手に取ったデッキとも言える。相手が先手を選べば、ありがたく1ターン目に1枚引いてエンド宣言。自分が選ぶ権利を得れば「後手で」と言えば良い。間違っても先手は選ばないように(笑)。

 この後手の時に捨てるのは発掘カードでも良いが、ベストは《変幻影魔》。

 これが墓地にある時にはカードを3枚捨てることができる。1回目の能力がスタックにある間にもう3枚捨てることもできるので、手札を一気に吐き出して墓地を作り上げよう。こいつがこのデッキを成立させている影の主役なのである。

 最近のカードで言えば《這い寄る恐怖》の参入は大きい。

 これでライフを速やかに減らすことができ、大振りのコンボが狙えずともビートダウンで勝つというプランが現実的になっている。マナを払わずに唱えられるドレイン呪文ってわけだ。

 マナを払わない呪文と言えば、サイドには《意志の力》をはじめとした打ち消しと、《Contagion》が採用されているのも特徴だ。

 コンボデッキやクリーチャーデッキ相手にこれらを用いて対処しよう。墓地対策を打ち消せるのも嬉しい。《虚空の力線》? 全員が使ってくるカードじゃないから、そこは置かれたら諦めよう! こういう割り切ったスタイル、良いね。

 こういうマジックの概念を覆すタイプのデッキは、脆い面もあるが奇襲が決まれば圧倒してしまえるパワフルさが魅力。何より回していて楽しいという点で、コアなファン=中毒者を生み出し続けている。普通のデッキには帰れなくなるかもしれない、そんな副作用を恐れずに、マジックの可能性を体験してほしいものである。土地事故に疲れた際の気分転換には最適だろうね!

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