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戦略記事

岩SHOWの「デイリー・デッキ」

俺の希望がお前の絶望(レガシー)

岩SHOW

 音楽の話。昔、好きなバンドが絶望を意味するタイトルのアルバムを発売した際、メンバーがインタビューにて「希望があるから人は絶望するのであって、その希望が絶えた状態はある意味でとてもポジティブ」みたいなことを話していた。

 なるほど、希望があるから絶望するってのは確かによくわかる。「今この状況で引けば勝てるカードはあれとこれとそれ、合わせて何枚だから残りライブラリー何枚の今引ける確率は……」なんて希望を抱いた状態でドロー!→土地ィ~という時の絶望感は半端ないからね(笑)。相手に引かれて逆転されるカードはあれだけやしいけるいける→引いてるゥ~!とかね。逆に欲しいカードがたった1枚しかデッキに入っていないのにここって時に引けた時は、絶望が希望に一転する。この一喜一憂がこのゲームの面白いところなんだろうな。

 今日は「希望」をその名に冠しながら、相手に絶望を与えるカードをフィーチャーしたデッキを紹介しよう。レガシーではよく見るコンボデッキが、あるカードを取り上げてその姿を大きく変えているぞ。

Bryant_Cook - 「ANT」
Magic Online Competitive Legacy Constructed League 5勝0敗 / レガシー (2019年1月4日)[MO] [ARENA]
1 《
1 《
1 《Underground Sea
1 《Volcanic Island
2 《Badlands
4 《汚染された三角州
3 《血染めのぬかるみ
-土地(13)-

3 《ギラプールの希望
-クリーチャー(3)-
4 《金属モックス
3 《オパールのモックス
4 《ライオンの瞳のダイアモンド
4 《水蓮の花びら
4 《暗黒の儀式
3 《炎の儀式
4 《渦まく知識
4 《思案
4 《思考囲い
4 《燃え立つ願い
4 《冥府の教示者
1 《巣穴からの総出
1 《むかつき
-呪文(44)-
2 《蒸気の連鎖
1 《強迫
1 《炎の儀式
3 《残響する真実
1 《ぶどう弾
2 《巣穴からの総出
1 《虐殺
1 《炎の中の過去
1 《苦悶の触手
1 《闇の誓願
1 《粉みじん
-サイドボード(15)-
 

 「ANT」や「むかつきストーム」と呼ばれる高速コンボデッキだ。

 《むかつき》により軽いドローとマナ加速、サーチをかき集めて連打し、十分な数の呪文が同一ターンで唱えられた状態からストームという能力を持った呪文で勝負を決める。

 ストームとは、それを持つ呪文を唱えた際に、そのターンに唱えられた呪文の数だけ自身のコピーを生み出すという能力。現スタンダードにある《千年嵐》の元になった能力で、コンボを狙えと言わんばかりの強力なストーム呪文が多数ある。《苦悶の触手》《巣穴からの総出》はゲームを終わらせるパワーを持ったその代表格だ。

 「ANT」はレガシーではかれこれ10年近く存続し続けている強力なコンボデッキである。ドローと手札破壊を駆使することでさまざまな対戦相手・状況下でもルートを導き出して勝つことができる、玄人好みの逸品だ。そのデッキの特性から、あまり本筋に絡まないカードやマナ・コストが重いカードを採用することは難しく、ゆえにデッキリストに細かい調整はあっても大胆な変更が加えられることはほとんどなかった。

 その「ANT」にメスを入れたのが、この《ギラプールの希望》入りリストである。

 対戦相手に戦闘ダメージを与えれば、打ち消しや除去などといった妨害をすべて完封できる能力を持ったこの伝説の飛行機械。登場時には話題にはなったが、しかしこれを軸にしたデッキ構築というのは難しく、時折モダンのデッキで見かけるくらいに落ち着いていた。このタイミングでこれを3枚メインに採用したデッキが来るとは、ちょっと予想外だったので驚かされた。

 ただ、よくよく考えてみればそこまで不思議なことではないかもしれない。「ANT」は環境に姿を現したときから長きに渡って《ザンティッドの大群》をサイドボードに採用し続けていた。これのために緑を足していたのである。ザンティッドはギラプールのご先祖様で、対戦相手を沈黙させる似たような能力を持っている。ザンティッドと違って生け贄に捧げる必要があるが、無理して色を足さずに使える、すなわちメインから採用してもデッキが歪まない、ということか。凝り固まったデッキリストに新しい解釈を加えるプレイヤーはいつだっているもんだ。拍手。

 《ギラプールの希望》を採用したことによる採用カードの変化も見られる。まず、アーティファクトの数が増えるので《オパールのモックス》をマナ加速として採用している。他の0マナアーティファクトとともに並べて、上手くマナを得たいところだ。

 また、《ギラプールの希望》によりクリーチャーでない呪文を封じる効果は次の自分のターンまで続くので、トークンを出して返しで《仕組まれた爆薬》などされる心配がない。そういうこともあってか、メインデッキに採用しているフィニッシャーは《巣穴からの総出》が優先され、一般的にメインの勝ち筋である《苦悶の触手》はサイドボードに置いてある。この触手は《燃え立つ願い》でサーチするのだが、他にもゲームの状況によって輝くソーサリーがいくつか並んでいるので、各々どんな時に使うのか考えながらチェックしてみよう。

 希望によりコンボが決まって相手が絶望する、というフレイバーも素敵だし、既存のデッキに一石投じる姿勢もイイネ。今年は皆も思いついたアイディアを形にする、そんな構築の年にしてみてはどうかな?

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