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岩SHOWの「デイリー・デッキ」
ゼロックス理論を知っているか(ヴィンテージ)
「ゼロックス理論」というマジック用語を知っているだろうか。正直知らなくても、何も問題はない。ただ知っていると、少し楽しくなる。同じ趣味なら、こういうマニアな知識を身に着けておく方がなんか「やってる感」が出るってなもんだ。というわけで、古い時代に提唱された理論を、マジック26年目の頭に話すとしよう。
マジックにつきものなのが「土地事故」だ。土地を引かない、あるいは引きすぎるとゲームが思うようにできず、辛い負けを喫することがある。ゼロックス理論はこのトラブルからの脱却を図った、アラン・カマー/Alan Comerが提唱したものである。(余談だが、プロツアー殿堂顕彰者である彼は《真面目な訪問者、ソリン》と《イニストラードの君主、ソリン》を間違えてデッキに入れてしまったことで若い世代の間でも有名になった。)
ゼロックス理論は、簡単に言えば「土地を減らしてドローを増やす」というもの。後半に引いて嬉しくない土地の枚数を、構築段階から減らしてしまうというアプローチだ。その代わりに軽量ドロー呪文や、キャントリップと呼ばれるドロー付きの呪文を多数採用。序盤はこれで土地を引き込んで事故を回避し、後半は土地が少ないライブラリーからこれらで有効なカードを引くことが大きく期待できる……という考え方だ。
《渦まく知識》や《思案》が使えるエターナル環境で、このような構築がなされているデッキを見たことがあるだろう。一説にはドローを2枚入れれば土地を1枚減らせるとか、数学的にはそうじゃないとかいろいろ言われている。今の時代であればドローのみでなく、《汚染された三角州》のようなフェッチランドも絡めて、より圧縮されたライブラリーを作ることができるだろう。微々たる差に過ぎないかもしれないが、こうした差を重視するプレイヤーも少なくないのだ。
ゼロックスの弱点は、ただドローするだけでターンを終えてしまう可能性がある点だ。逆にこれを補うことができれば、強力なデッキを生み出すことも可能。かつては《クウィリーオンのドライアド》を用いて、ドロー呪文でこれを育てて殴る「ミラクルグロウ」というデッキが大流行したものである。今の時代なら……もっと強いカードがいるね。
というわけで、今日は現代のゼロックスを体現するデッキを紹介しよう!
1 《島》 1 《山》 4 《Volcanic Island》 2 《Tropical Island》 3 《沸騰する小湖》 3 《霧深い雨林》 1 《樹木茂る山麓》 1 《露天鉱床》 1 《不毛の大地》 -土地(17)- 3 《瞬唱の魔道士》 3 《若き紅蓮術士》 -クリーチャー(6)- |
1 《Black Lotus》 1 《Mox Sapphire》 1 《Mox Ruby》 1 《Mox Emerald》 4 《精神的つまづき》 2 《呪文貫き》 1 《狼狽の嵐》 1 《ギタクシア派の調査》 1 《Ancestral Recall》 1 《渦まく知識》 1 《思案》 4 《定業》 2 《稲妻》 2 《紅蓮破》 2 《古えの遺恨》 1 《Time Walk》 4 《意志の力》 1 《噴出》 1 《時を越えた探索》 1 《宝船の巡航》 4 《ダク・フェイデン》 -呪文(37)- |
1 《森》 4 《自然の要求》 2 《墓掘りの檻》 1 《稲妻》 1 《紅蓮破》 1 《古えの遺恨》 1 《無のロッド》 4 《虚空の力線》 -サイドボード(15)- |
ヴィンテージの「青赤ゼロックス」とでも言おうか、《若き紅蓮術士》デッキだ。
このクリーチャーはインスタントとソーサリーに1/1のエレメンタル・トークンをオマケでつけてくれる。これであればかつての「ミラクルグロウ」のドライアドのように打点がぐんぐんと伸び、かつ自身が成長するのではなくトークン生成なので除去1枚で努力がポンと水の泡、という心配もない。すべての軽量ドロー呪文が、相手のライフを追い詰めるプレッシャーと化すのだ。
このデッキはゼロックス理論よろしく土地は少なく、《若き紅蓮術士》に勝ち手段としての役目を担わせているので余計な重いカードも入っていない。ドローすれば、次につながるドロー呪文か、あるいは打ち消しなどの妨害を引き込むことが期待できる。
ヴィンテージでも、ここまで徹底した妨害型の青いデッキはそう多くない。ヴィンテージならではの《精神的つまづき》などで徹底的に相手にさせたいことをさせず、自陣にはトークンを並べていこう。
制限カードの関係でメインの1マナドローは《定業》になっている。
このカードの使い方は腕が試されるだろう。本当に欲しいもの・実はいらないものを見定める判断力が問われる。他の制限組は……《宝船の巡航》? 《時を越えた探索》? 《Ancestral Recall》? うーん、何も考えずとも強い。これらを通してトークン並べて《Time Walk》の追加ターンで殴り抜く、というのが理想のゲームプランだ。
このデッキのもう1つの特徴は、《ダク・フェイデン》マシマシな点。
このプレインズウォーカーは、ヴィンテージ特有のアーティファクトのみのデッキなどに対して、まさしくキラーカードとして大暴れする。それらのマッチアップで絶対に引きたいから4枚だ。複数枚引いてしまっても、自身の能力でカードを引いて捨ててしまえば問題なし。アーティファクトの塊ではないデッキでも各種Moxは採用しているので、それを奪ってやるだけでも効果的だ。不要な土地を打ち消し呪文などと入れ替えられる時点でこのデッキにとってはマスターピース、Magic Onlineの大型イベントで優勝しているのは、躊躇せず4枚入れたことが正解だったことに他ならない。
今のマジックとは大きく考え方が違う部分もある、過去の様々な理論。それらを学ぶことは決して無駄なことではなく、新しい時代を築く上で必ずや役に立ってくれることだろう。マジック26年目、どんな新しいものが生まれてくるのだろうか。今からワクワクするって!
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